牛丼が1杯3000円に!?バーチャルウォーターから見る水資源問題

   by Takumi Hisamatsu        
牛丼が1杯3000円に!?バーチャルウォーターから見る水資源問題
環境問題の1つに水資源問題があります。年々、水不足問題が進行しており、水を巡り紛争が起こるほど深刻化しています。
今後さらに人口が増加することで、2030年には世界の水の需要量が供給量を約40%上回ると予測されており、水不足による世界的な食糧危機が懸念されています。
とは言っても、日本に住む私たちからすると、水不足や食糧危機と聞いてもいまいちピンとこない。あまり実感が湧かない、というのが正直なところではないでしょうか。
しかし、世界の水資源問題に実は日本も深く関わっています。そしてこのまま水資源問題が悪化すると、牛肉の価格が高騰し、輸入による牛肉は高すぎて食べられなくなってしまう。そんな可能性もゼロではないかもしれません。
そこで今回は、「バーチャルウォーター(仮想水)」という視点から水資源問題について触れ、水資源問題に対するKabbaraとしての取り組みをご紹介させていただきます。

生活に使える水は、地球に存在する水のわずか0.75%

「地球の表面の約60%は水面」
そう聞くと、地球には大量の水がありどれだけ使っても問題無さそうと思われるかもしれませんが、”人間が使える水”という視点から見るとそうではありません。
地球にある水を大きく区分けすると海水と淡水に分けられ、わたしたちが生活のために利用する水は淡水になります。
その淡水の量ですが、地球全体にある水の97.5%は海水で、淡水はわずか2.5%。しかも、その淡水の約70%は南極などの氷河で、30%が地下水です。川として地表を循環している淡水は、地球に存在する水の0.0001%にすぎません。
この、人間の生存にとって欠かすことのできない地球上の川の水や地下水の70%が農業用水に使われ、20%が工業に、10%が日常生活に使われています。

水資源問題の現状

人類はこれまで、川の水や地下水といった淡水を利用し食料を生産し発展してきました。しかしここ近年、世界各地で川の断流や地下水位の低下など水不足が深刻化しています。
原因は、増え続ける人類を養うための食料を生産する農業用水の増大によるもので、中国では、流域面積が日本の国土の2倍にもなる黄河で、川の水が海まで到達しない断流が頻繁に起き、また、インドやアメリカなどの一部では、地下からの揚水の増加により、毎年地下水位が低下しているなどの報告があります。
下の画像は「NASA」が公開した地下水の枯渇に関する動画のキャプチャ画像です。地図上のアメリカ西部では、農業の灌漑(かんがい)用水の普及により年々地下水が枯渇していく様子を時系列で表しています。(地下水が枯渇していくにつれマップがレッドに変化していく)
アメリカ西部の地下水の枯渇を表すマップ。年月が進むにつれマップがグリーンからレッドに変化。
(出典:NASA丨Scientific Visualization Studio「灌漑と地下水の枯渇」)

トウモロコシは1800倍、大豆は2500倍、牛肉は20000倍以上の水が必要

農業で作られることの多い、トウモロコシ、小麦、大豆などの穀物、また鶏肉や牛肉などの畜産は、それを生産するまでに膨大な量の水を必要とします。
例えば、1キログラムのトウモロコシを生産するためには、灌漑用水として1,800リットルが必要であり、そのような穀物を大量に消費する牛を育てるためにはさらに水が必要です。1キログラムの牛肉を生産するためには穀物を生産する際の約2,0000倍の水が必要と推定されています。
ちなみに、牛丼1杯を作るのに使用する水は、1889リットル=500gペットボトル3780本分だと言われています。上記のとおり、牛を育てるには大量のトウモロコシが必要で、そのためには大量の水を使いますので、牛丼1杯作るのにこれだけの水が必要になるというわけです。

日本は食料を通して大量の水を輸入

そして、「世界の水資源問題に日本も関わっている」と最初に言いましたが、その理由が輸入にあります。
食料自給率が40%の日本は、食料の60%を海外からの輸入に頼っていますので、輸入する食料を通してかなりの水資源を使っていることになります。
またこの考え方を「バーチャルウォーター(仮想水)」といい、バーチャルウォーターとは輸入した食料を自国で生産すると仮定したときに必要と推定される水を数値化したものです。
さきほどの「牛丼1杯を作るのにかかる水の量は?」がまさにバーチャルウォーターです。

水不足で世界的な食料危機が懸念

70%が農業用に使われるというデータのとおり、多くの水は農業、つまり食糧生産のために使用されています。もしこのまま水不足が悪化すると、世界的な食料危機の可能性も十分に考えられます。
アメリカのシンクタンク「国際食糧政策研究所(IFPRI)」と「国際水管理研究所(IWMI)」は、世界全体で2025年までに、農業用水不足によって、現在の米国の生産規模を上回る年3億5000万㌧の穀物供給が失われる恐れがあるとの報告書を発表しています。特に途上国では、急速な人口増や都市化などから、今後20年の水の使用量が少なくとも50%増加すると予測。水獲得競争の激化で農業用水の利用が著しく制約され、食料生産に深刻な悪影響をもたらすと警告しています。

出典:水土里ネット北海道「地球人会議-環境~世界を襲う水不足」

水不足が深刻化すると牛を育てることが難しくなり、牛肉の生産量が減り価格が高騰し今みたいに気軽に買えなくなってしまう。牛丼が1杯3,000円になる可能性も・・・。

ウォーターフットプリントで水の使用量を見える化

このような背景から、世界的にも水資源を大事にしようという声が広がっており、そこで出てきたのがウォーターフットプリントです。
商品の原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算して、商品に分かりやすく表示する仕組みにカーボンフットプリントがありますが、ウォーターフットプリントはその水バージョンです。
生産にかかる水の使用量が分かるようになってくると、同じような商品でも、片方は水を10リットル使って作られた商品、もう片方は1000リットル使って作られた商品というのが分かるようになります。
「価格、味、見た目はほぼ同じだけど、水をできるだけ使っていないこっちの商品を選ぼう」というふうに、ウォーターフットプリントが商品を選ぶ基準のひとつになっていくかもしれません。

Kabbaraでの取り組み

Kabbaraではラオスで生産しているコーヒー豆をさらに高品質化して世界に広げるために、加工工場を建設予定で、HACCAP、GAP、GMPなどの世界基準はもちろんのこと、環境にできるだけ負荷をかけない工場を目指しています。
そのため、設備はできるだけ水を無駄に使わないようなもの、自然エネルギーで稼働、通常はゴミとして捨てられるコーヒー豆の果皮をカスカラとしてお茶で飲めるように利用といったように、水資源に限らず色んな面から環境負荷を低減するために計画を立てています。
また、ブロックチェーンを活用し、コーヒーを誰が生産して、いつ収穫されて、どこで加工されて、といった生産から消費までの流れをデータ管理するトレーサビリティも実装予定です。
そこで生産・加工で使用された水の使用量もデータに記録できるようになると、ウォーターフットプリントのようなことも可能になります。
先日この辺りについて解説した記事をアップしたので案内させていただきます。
ブロックチェーン技術の活用
ちなみにコーヒーのバーチャルウォーターですが、1杯のコーヒーを作るのに140リットル必要だと言われています。
これをどれだけ少なくできるか?というのもKabbaraのチャレンジの1つになりますので、そのために農家の方々や専門家の方々と連携して、味よし、栄養よしの高品質コーヒーを、環境負荷をできるだけ抑えながら生産できる体制を目指して進めていきます。
今後、工場に導入予定の設備なども発信していきますので、是非お待ちいただければと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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