各国が約束した温室効果ガス削減目標は達成できない。たとえ達成しても約2.5度上昇する

   by Akihiko Sato        
各国が約束した温室効果ガス削減目標は達成できない。たとえ達成しても約2.5度上昇する
こんにちは、佐藤です。
国連による気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)が(2022年11月6日〜11月18日)、エジプトのシャルムエルシェイクで、始まっています。
COP26から、もう一年経過するということですね。時間の経過がとても早く感じました。同じように感じる方も多いのではないでしょうか。
COP27が終了したらまとめが発表されますので、終了したら詳細はまとめるとして、どんなことが議題の中心となっていたか?
あとで確認するためにも、記していきたいと思います。
    目次
  • COP27開催前の状況と課題点
  • COP27での注目点
  • まとめ

1.COP27開催前の状況と課題点

開催前の段階ではイギリスのリシ・スナク(Rishi Sunak)首相は先に「差し迫った国内の課題」に対処するため、会議に参加しない意向を示していましたが、11月2日に参加する表明をしました。
スナク首相はツイッター(Twitter)に「気候変動に対する行動なくして長期的な繁栄はない。再生可能エネルギーへの投資なくしてエネルギーはない」と投稿もしています。
環境活動家は不参加の表明に対して憤りを示したり、前回のCOP26を主催した元首相のボリス・ジョンソン氏は招待を受け参加するという表明がなされた。
多くの政治評論家達などから、スナク首相に注目が集まってしまうことを回避するため、出席せざるを得ないというのが実情かもしれません。
 このように、色々な意味で注目を浴びているCOP27ですが、UNEP(国連環境計画)はCOP27(気候変動枠組み条約第27回締約国会議)開催前に「このままでは今世紀末に2.8度上昇」の危機感をあらわにしていました。
「世界の今の気候変動対策では今世紀末までに産業革命前比で2.8度、各国が約束した温室効果ガス削減目標を達成しても約2.5度、それぞれ上昇してしまう」。国連環境計画(UNEP)がこのように警告する最新報告書をまとめ、10月27日発表した。パリ協定は1.5度上昇に抑えることを目指しているが、現状は目標にはほど遠いことを示す予測だ。11月6日からエジプトで開かれる気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)を前に進まない対策に危機感をあらわにしている。

この報告書は「終焉(えん)の窓―気候危機は社会の急速な変革を要求する」 と題し、概要編、本編合わせて約130ページ。各国の専門家が分野別に分担し、気候変動対策やその効果などに関する膨大な最新データを分析した。その結果、各国が現在行っている温室効果ガス排出量削減対策では今世紀末には産業革命前より2.8度上昇してしまう、と結論付けた。

英国・グラスゴーで昨年10月から11月にかけて開かれたCOP26以降、各国は2030年までの排出量削減目標を国連に提出した。報告書は各国がこの国際約束を達成しても2.4〜2.6度上昇するとした。

参照:サイエンスポータル「「このままでは今世紀末に2.8度上昇」とUNEP COP27前に危機感あらわに」
「楽観論は現実味がない」
 UNEP報告書は、各国が現在実施している対策のまま2030年を迎えた温室効果ガス排出量を算出。
気温上昇を2度に抑えるためにその排出量の30%。
1.5度を達成するためには同45%も削減しなければならない、と試算しています。
1990年以降増加が続く世界の温室効果ガス排出量(二酸化炭素換算、縦軸の目盛りはギガトン)。黒は燃料、産業分野などの二酸化炭素、灰色はメタン、青は一酸化二窒素、オレンジ色は代替フロン類、緑は土地利用分野の二酸化炭素(UNEP提供)
黒で示された燃料、産業分野の占めている量が大きく、押し上げているのが分かります。
(左)は2020年の主な国別温室効果ガス排出量(右)は1990年から2020年までの同排出量の推移(UNEP提供)
国別では中国、アメリカ、インドが占める率が高く、特に中国は別格であり、減少どころかさらに上昇しているのが分かります。

中国やインドは発展する際の高付加によるものが大きい。インドはまだこれから中国のように大きな影響力をもった国になろうとしています。中国の削減は必須だとして、インドは発展しつつそのように効率良く進んでいけるか?が鍵となりますね。

途上国の技術協力は必須です。

日本は2030年度の排出量を13年度比で46%削減し、50年に排出量実質ゼロにする目標を掲げている。

世界の排出量の約75%を占める日本など20カ国・地域(G20)の取り組みを念頭に報告書は「COP26で各国は約束したが進展は全く不十分」とした上で「対策は始まったばかりだ。対策を格段に強化しない限り、30年に予測される世界の排出量の1%未満しか減らせない」と明示した。

 また、各国が約束した30年の排出量削減目標を確実に達成した上で50年の排出量実質ゼロを実現できれば気温上昇は1.8度に収まるとしつつも、現在の各国の取り組みの実態からこうした楽観論は「現実味がない」と断じている。
2100年までの気温上昇をそれぞれ1.5度 、1.8度、2.0度に抑えるために必要な2030年までの温室効果ガス排出量(二酸化炭素換算)と現在進められているいくつかの対策シナリオで2030年に予測される排出量を分析したグラフと図(UNEP提供)
UNEPによると、各国政府はカーボン・フットプリント削減に向けて「自国が決定する貢献(NDC)」を約束しましたが、2021年に英グラスゴーで開催された直近の気候サミット以降に行われた誓約では、2030年の温室効果ガス予測排出量の1%未満しか削減されないことになります。
もはや、約束を守るだけでは目標に達しないという見解です。
現実は化石燃料を利用するインフラだけで、超過してしまうという厳しい見方もある。化石燃料を使わずに、再生可能エネルギーの拡大や機器や生産性、物質などの効率の向上が必要である。
まさに、Total GHG Emissionの図にて 黒で示された「燃料、産業分野」の占めている量が鍵となるのではないでしょうか。 しかし、それを実現可能にするには、技術の向上とそれをとりいれることを可能とする大胆な社会変革が必要です。
「残された唯一の選択肢は急速な社会変革」
今回の報告書発表に合わせたプレスリリースの見出しは「世界の気候変動対策が不十分だったために残された選択肢は急速な社会変革しかない」。報告書は今後求められる社会の変革内容も詳細に記載している。
また、報告書は、生産から消費までを含む食料関連の排出量は全体の3分の1を占める、との指摘もあります。
食料生産方法の改善食品サプライチェーンの脱炭素化、肉食をなるべく減らすといった消費者の行動変容など、大胆な対策を実施できれば2050年の食料関連排出量を現在のレベルの3分の1に減らせると試算されています。
私たち人間が生きていく上で重要な食事。
その食事は大きな負荷がかかっているということをもっと知っていかないといけないと思いますが、今はまだ飽食の時代とその上に成り立つ常識という高い壁があります。
ヨーロッパなどでは、20年くらい前から教育に盛り込むことで、国民が意識できる環境を整えてきたように、日本も大胆な変革、特に教育も変わっていかないといけませんよね。
このほか、化石燃料への投資の中止や、産業、電力供給、運輸、建築の各分野での徹底した脱炭素化を求めた。また脱炭素社会の経済への変革には少なくとも年間4〜6兆米ドルの投資を必要とし、金融システムを脱炭素化に向けて変革する必要性も指摘した。
 UNEPの今回の報告書はIPCCの6次までの膨大な報告書に盛り込まれた科学的知見なども生かされている。
多くの数値予測はスーパーコンピューターによる解析に基づいている。
それだけに信頼性は高く説得力があるが、列挙された対策はいずれも容易ではない。実現は並大抵の努力では不可能とみられる。報告書は事実上、今後も気候危機は避けられないことを示唆し、人間社会がいかにしてこの危機を乗り越えるか、という「適応」の段階に来ていることを物語っている。
 報告書内容の厳しさを反映するように表紙のデザインも異色だ。
黒に茶色のもやがかかったような暗い壁のほぼ中央に白枠の閉じかけた窓があり、窓の向こうに小さく青空や緑、色づいた花が見える。窓の下の階段の踏み板も折れたり、なかったりして窓を大きく開くのは容易ではないことを表現している。表紙からも強い危機感が伝わる。
「気候危機」を前に成果見通せないCOP27
UNEPのアンダーセン事務局長(UNEP提供)
極めて厳しい内容になった報告書について、UNEPのアンダーセン事務局長は次のようにコメントしている。
「段階的に経済や社会を変革すればよい局面は終わった。根本的な社会変革をしなければ、加速する気候災害から私たちを救うことはできない」「2030年までの8年では(社会変革は)実現できないと考える人はいるだろうが、挑戦する前に失敗したと投げ出すことはできない。
今すぐ社会変革を始める必要がある」「私たちは『気候変動対策の終焉』の窓をしっかり開いて、世界をより良い方向に変え始めることができる」。
 国連のグテーレス事務総長が報告書発表に合わせて出した警告はより直截(ちょくさい)だ。「各国が気候危機に対抗するための取り組みを劇的に拡大しない限り世界は大惨事に直面する」。

2. COP27での注目点

  • 2030年の温室効果ガス削減目標(NDC)の大幅な上積みは可能か。
  • 気候変動に対する「適応策」はいかにあるべきか。
  • 先進国の発展途上国向け「適応策資金」で合意できるか。
今回のアジェンダには難題が多い。
「気候危機」を前にしながらも、すでに事前のいくつかの協議で各国間の現実の利害が対立し、具体的な成果を残せるかどうかは見通せていない。
というのが、COP27開催前の状況です。
再注目は中国。
現在の技術は国の長期的ニーズに対応できるほど成熟していないと指摘。
中国政府は2日、複雑な環境問題を解決するためにハイテクソリューションを模索し、汚染・生息地の喪失・気候変動に取り組むためにビッグデータ、バイオテクノロジー、人工知能(AI)のイノベーションを活用すると表明しています。
大気・土壌・地下水の汚染に対処し、廃棄物の削減
生態系を保護するために2021年から25年にかけて「グリーン技術イノベーションシステム」を構築するとしています。
このシステムは、税制優遇措置と新しい「グリーン技術銀行」によって支援され、中国は企業や金融機関にも革新的なグリーン技術への支援強化を奨励する。
この計画はエジプトで6日から開催される国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)を前に発表された。
中国の本気度が示されるのでしょうか?
    3.まとめ
  • 急遽参加したイギリス、スナク首相の動向
  • 中国、アメリカ、インドの動向
  • 2030年の温室効果ガス削減目標(NDC)の大幅な上積みはあるか?
  • 気候変動に対する「適応策」、とくに大胆な社会変革の提案はどうなるか?
  • 先進国の発展途上国向け「適応策資金」の規模は?
  • 特に中国の動向は規模的にも影響力があるので、世界に向けてどう発信するか?
上記のキーワードを踏まえながら、COP27を見据えていきたいと思います。
とくに、日本は、今回は頑張ってもらいたいところ。
日本の技術力は高いはず。本気度を上手く説明出来ていないと思いますし、ビジョンやゴールの見せ方が上手くないのか評価されていないように思います。
日本は大胆な水素戦略などを打ち出すなど、その分野でリーダーとなれる要素は高いだけに、動向を注目しています。
時代が要請するカーボンニュートラル社会の実現へ、プロジェクト「Hundred million」PROJECT2030」にて未来へ良いバトンを渡すべく、仲間を随時募集しております!
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