国際イニシアチブであるSBT認定取得に関するお問い合わせを多数いただいています。その中でも「うちの会社は中小企業版のSBT取得条件(要件)に適合しているのだろうか?」という質問が増えております。そこで、本日は取得条件を少し噛み砕いて解説いたします。ただし、本日ここでご紹介させていただく内容は、2024/02/12時点のものです。
本日のトピック
・中小企業版SBTとは?
・中小企業版SBT取得要件、その一
・中小企業版SBT取得要件、その二
|中小企業版SBTとは?
中小企業版SBTは、中小企業が科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標を設定し、国際的に認証を得られる制度です。
概要
- パリ協定の目標に整合した、科学的根拠に基づいた削減目標を設定
- 削減目標は、絶対削減目標であることが求められる
- SBTi(Science Based Targets initiative)に申請し、承認を得ることで認証取得
- 認定取得後は、定期的に進捗状況を自社ホームページなどで公表が必要
中小企業版SBTの特徴
- 中小企業向けに簡略化された手続き(スコープ1、スコープ2のみ)
- 専門知識や経験がなくても取り組みやすい
- 低コストで認証取得可能(1,250ドル)
- 行政、金融など各種優遇サービスが利用できる
|中小企業版SBT取得要件、その一 ※弊社独自の整理
必須条件:下記の全てを満たす必要があります。(7項目)
- スコープ 1 およびロケーションベースのスコープ 2 の排出量全体で 10,000 tCO2e 未満です
- 海上輸送船を所有または管理していません
- 発電資産を所有または管理していません(再生可能エネルギーの発電設備は除く)
- 金融機関 (FI) 部門または石油・ガス (O&G) 部門に分類されていません
- 通常SBT取得済みの親会社の子会社ではありません
- 非営利団体/法人ではありません
- 国営企業、公益団体ではありません
▼以下、解説
1.スコープ 1 およびロケーションベースのスコープ 2 の排出量全体で 10,000 tCO2e 未満です
実際のGHG排出量を算定してみなければ満たしているかわかりません。スコープ1とスコープ2(地域ベース)を合算した排出量からの判断が必要です。注意点としては、下記⑤に記すグループ会社全体排出量が対象となります。
2.海上輸送船を所有または管理していません
3.発電資産を所有または管理していません(再生可能エネルギーの発電設備は除く)
太陽光、風力、地熱など再生可能エネルギー発電設備は該当しません。
4.金融機関 (FI) 部門または石油・ガス (O&G) 部門に分類されていません
|SBT認定取得できない企業
石油、天然ガス、石炭、またはその他の化石燃料の探査、採掘、採掘および、生産に何らかのレベルで直接関与する企業。これらの活動によって得られる収益の割合に関係なく、石油、天然ガス、石炭の統合およびこれらに限定されない。 ガス会社、総合ガス会社、探査および生産の純粋なプレーヤー、精製およびマーケティングの純粋なプレーヤー、石油製品の販売業者、ガスの販売代理店および小売業者、および伝統的な石油およびガスのサービス会社。
|SBT認定取得できる企業
化石燃料の販売、輸送、流通、または、化石燃料会社への設備やサービスの提供からの収益が50% 未満の企業。商業目的の採掘活動のための化石燃料資産(例:炭鉱、褐炭鉱山など)からの収益が 5% 未満の企業。自社で発電のために石炭を採掘する電力会社。化石燃料会社の子会社は、子会社自体が化石燃料会社とみなされない場合。
5.通常SBT取得済みの親会社の子会社ではありません
子会社単独でのSBT取得はできません。親会社(グループ会社)全体での運用ルールです。
|企業規範についてのルール
企業規範として「支配力基準」と「出資率基準」があります。企業規範における「支配力基準」と「出資率基準」は、子会社の排出量を親会社の排出量に計上するかどうかを判断するための基準です。
「支配力基準」
支配力基準は、議決権の所有割合以外の要素も考慮し、実質的に企業を支配しているかどうかを判断する基準です。支配力基準に基づいて子会社を支配下にあると判断した場合、子会社の排出量を親会社の排出量に100%計上する必要があります。連結子会社などはこれに該当します。
「出資率基準」
この基準では、企業が他の企業や組織に出資している場合、その出資比率に応じて、出資先の事業や施設のGHG排出量の一部が企業のGHG排出量として計上されます。出資率基準では、企業が他の企業や組織に出資している場合に対して、直接的な支配力は持っていなくても、出資比率に応じて影響を受けることを考慮します。
これらの基準は、企業がグループ企業や関連会社といった複数の組織を所有または出資している場合に、GHG排出量の算定範囲を適切に決定するための指針となります。企業は、適切な基準を適用し、一貫性のあるGHG排出量の算定と報告を行うことが重要です。
6.非営利団体/法人ではありません
7.国営企業、公益団体ではありません
|中小企業版SBT取得要件、その二
条件:下記の2つ以上を満たす必要があります。(4項目)
①従業員数 250 名未満
②売上高 5,000万ユーロ未満(SBT申請時レートにて)
③総資産 2,500万ユーロ未満(同上)
④森林、土地、農業 (FLAG) 部門に属していない
注意点としましては、①②③全てにおいて、上記「中小企業版SBT取得要件、その一、⑤」で解説しました、グループ全体の従業員数、年間売上、総資産額が該当しますのでお気をつけください。証明資料として、SBT申請時には直近の決算書(貸借対照表、損益計算書のPDF)の提出が必要です。
いかがでしたでしょうか?
弊社は中小企業だからこそ、脱炭素への取り組みには独自の削減目標ではなく、環境への取り組みとしても高い説得力を持つ、SBT認定取得からのチャレンジが必要だと考えます。ご不明な点などございましたら、お気軽に下記よりお問い合わせください。
参考情報:
GHGプロトコル: https://ghgprotocol.org/
環境省::https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/:
SBTイニシアチブ:https://sciencebasedtargets.org/