本日は、全国47都道府県(以下、自治体)を対象として、自治体における脱炭素化の取り組みに関する実態調査を共有します。(※公益財団法人世界自然保護基金ジャパン WWFジャパンによる調査。国連気候変動枠組条約第28回締約国会議を前に公表)実態を知ることで、「カーボンニュートラル社会を実現するために何が必要なのか?」にお役立てください。
- 削減目標の設定について
- 再エネ努力・省エネ努力について
- 脱炭素を推進するうえでの組織体制および課題
WWFは100カ国以上で活動している環境保全団体で、1961年に設立されました。人と自然が調和して生きられる未来をめざして、失われつつある生物多様性の豊かさの回復や、地球温暖化防止などの活動を行なっています。その一翼を担うWWFジャパンは、1971年、世界で16番目のWWFとして東京で設立されました。https://www.wwf.or.jp/aboutwwf/
約3割の自治体において、温室効果ガス削減目標が国の削減目標より小さい「国未満」であり、削減策の要となる省エネルギーや再生可能エネルギーの取り組みが、必ずしも十分に進んでいない実態が明らかになりました。
削減目標の設定について<長期目標の傾向>
国の長期目標「2050年までに排出ゼロ(温室効果ガスもしくはCO2)」を掲げているか国の長期目標「2050年温室効果ガス排出実質ゼロ」に関連して同様の長期目標の有無を確認したところ、茨城県以外の46自治体が掲げていました[図1]。一方、「2050年」より早い時期を目標に掲げている自治体は見られず、国の目標に合わせた時期に留まっている様子がうかがえます。
長期目標に「2050年ゼロ」を掲げた理由としては、「自治体内で気候災害が顕著になっていることへの危機感から」や「世界の潮流に合わせるため」に、高い目標を自発的に掲げる自治体も一定数(20自治体、42.6%)見られました。一方で、「国の目標に合わせた」という回答が約6割を占めま
した(27自治体、57.4%)。
<中期目標の傾向>
中期の削減目標として、国を超える数字を掲げる自治体は7自治体(青森県、岩手県、秋田県、東京都、富山県、長野県、鳥取県)のみでした。約6割(27自治体、57.4%)が国と同様で、それ以下に留まった自治体は約3割(13自治体、27.7%)でした。国の目標数値に準じている自治体が多く、
国の目標を超えた意欲的な数値を掲げる自治体が少ないことが分かりました。
エリア別では、中期目標の内容は自治体によって差異が見られました。
- 国より高い意欲的な目標を掲げる自治体の多くは東日本で、西日本では鳥取県のみ(7自治体、14.9%)[図4、図6、図7、図8]。
- 特に北海道・東北地方では半数近くの自治体(42.9%※5)が高い目標を掲げている[図4]。
- 近畿・中国地方は国より低い目標を掲げる自治体が多く、中国地方は鳥取県を除き全自治体が国の目標を下回っている[図5、図6]。
再エネ努力・省エネ努力について
▼再エネと省エネの目標設定の比較
再エネ調達の目標数値を「もっている」と回答した自治体は約9割(91.5%、43自治体)でした [図11]。一方省エネについては、具体的なエネルギー消費量の数値を目標とする自治体は約4割(42.6%、20自治体)に留まりました[図12]。再エネと比較して、ポテンシャルの有無に影響を受けにくく、対策が比較的容易であるはずの省エネの取り組みが遅れている可能性が見受けられます。
▼自治体施設における所有と電力調達
自治体で独自に再エネの設備を導入しているかを聞いたところ、青森県を除く46自治体が「導入している」と回答しました [図13] 。一方、再エネを選択しているかを聞いたところ、「選択している」と回答したのは約4割(44.7%、21自治体)で、再エネを選択している自治体は半数以下であることが分かりました[図14]。ただし「現在選択していないが、今後選択を検討している」と回答した自治体は約半数(51.1%、24自治体)で、多くの自治体は再エネの使用に前向きであることが分かりました。また「選択している」と回答した21自治体にその調達方法を聞いたところ「電力会社の再エネメニュー」が約6割(61.9%、13自治体)、次いで「PPA(※7)」が約2割(23.8%、5自治体)でした[図15]。
▼省エネの取り組み
省エネ基準(住宅・建築物、工場など)について、国が設定している基準より厳しい基準を設定し、その支援対策を設けているかを聞いたところ、「導入していない、する予定が無い」が28自治体(59.6%)と約6割を占めました。理由としては、「国の基準に準拠」という回答が多くみられました。「導入している」と回答した13自治体(27.7%)の中には、特に国内で取り組みが遅れている建築物の断熱化について、現在は建築物省エネ法の義務対象から外れている住宅用建築物を対象に独自対策を取っている自治体も見られました。中でも6自治体(北海道、山形県、福島県、新潟県、長野県、鳥取県)は、国が示すZEH基準を上回る独自対策を講じていることが分かりました[図17」。
脱炭素を推進するうえでの組織体制および課題
温暖化・環境対策に関する組織・体制の設置・開催状況各自治体における脱炭素や温室効果ガスの排出削減などの温暖化・環境対策に関する組織・体制の設置・開催状況を聞いたところ、「温暖化対策を専門とする知事の諮問機関」を設置しているのは約6割(63.8%、30自治体)でした。つまり17自治体(36.2%)では、首長である知事をトップとする温暖化対策の協議の場がないことが分かりました[図20]。また環境対策について、自治体が広く市民の意見を気候変動対策に取り入れる手法としての「気候市民会議」を取り入れている自治体は1自治体(神奈川県)のみでした。
▼脱炭素化を進めるうえでの各自治体共通の課題
「脱炭素や温室効果ガスの排出削減を推進するうえでの課題」をたずねたところ、最も多い回答は「自治体独自の財源確保が難しい」が8割近く(76.6%、36自治体)となり、財源が最大のネックと捉えていることが分かりました。また、「人的リソースが不足(30自治体・63.8%)」、「地方交付税が不十分(22自治体・46.8%)」と続き、資金と人材不足が大きな課題であることがうかがえます。また「地元企業の協力が得られない」が9自治体(19.1%)で、企業と行政との協力体制がキーになる自治体も多くある可能性が浮き彫りになりました[図21]。
より詳細な、調査結果はこちらをご参照ください。(【COP28を前に】47都道府県の脱炭素化の取り組みに関する実態調査)
自治体が脱炭素化を推進するうえでの課題として「自治体独自の財源確保」、「人的リソースの不足」、「地元企業の理解不足」などが浮き彫りになりました。弊社もこの3点についての課題解決に向け強化していきたいと思います。
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