SBT取得で企業価値向上:投資家・金融機関からの評価を高める

   by kabbara        
SBT取得で企業価値向上:投資家・金融機関からの評価を高める
SBT取得で企業価値向上:投資家・金融機関からの評価を高める

近年、地球温暖化による気候変動が深刻化し、世界中で脱炭素社会への移行が加速しています。企業においても、環境への取り組みは持続的な成長のための重要な要素となり、積極的に脱炭素化に取り組む企業が注目されています。

その中で、科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標である「SBT(Science Based Targets)」が、企業の脱炭素化への取り組みを評価する上で重要な指標として注目されています。SBTを取得することで、企業は投資家や金融機関からの評価を高め、企業価値向上に繋げることが期待できます。

この記事では、SBT取得が企業価値向上に繋がる理由や、SBT取得に向けた取り組み方、企業事例などを紹介します。

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サマリー

  • SBTは、科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標です。
  • SBTを取得すると、投資家や金融機関から高く評価され、企業価値向上に繋がります。
  • SBT取得企業は、融資の優遇、グリーンボンド発行の成功、ESG投資の対象となるなど、資金調達面で有利になります。
  • ソニーグループ、リコー、イオンなど、多くの企業がSBTを取得し、脱炭素化に取り組んでいます。
  • SBT取得は、気候変動リスクに対応し、持続的な成長を目指す企業にとって重要な取り組みです。
SBT取得で企業価値向上:投資家・金融機関からの評価を高める

SBT(Science Based Targets)とは?

SBTとは、Science Based Targetsの略で、科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標のことです。パリ協定で合意された「世界の平均気温上昇を産業革命前比で2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」という目標を達成するために、企業が設定する排出削減目標を指します。Science Based Targets initiative(SBTi)が認定する、科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標のことです。SBTiは、CDP、国連グローバル・コンパクト、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)の4団体によって設立された国際的なイニシアチブです。

CDP、国連グローバル・コンパクト、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)の4団体

SBTが重要視されている理由は、企業の脱炭素化への取り組みを客観的に評価できる指標となるからです。SBTを取得することで、企業は以下のようなメリットを得られます。

  • ブランドイメージの向上
    環境意識の高まりとともに、消費者は企業の環境への取り組みを重視するようになっています。SBT導入は、企業の持続可能性に対するコミットメントを示すことで、消費者の共感を呼び、ブランドイメージ向上に繋がります。
  • 投資家からの評価向上
    ESG投資が主流となる中、SBTは企業の長期的な成長性を評価する上で重要な指標となっています。SBT導入は、投資家からの信頼獲得、資金調達、企業価値向上に貢献します。
  • 競争力強化
    SBT達成に向けた取り組みは、省エネルギー化、資源効率の向上、イノベーション促進など、企業の競争力強化に繋がる効果も期待できます。
  • リスク管理
    気候変動による事業リスクは、今後ますます高まることが予想されます。SBT導入は、気候変動リスクを早期に特定し、対策を講じることで、事業の安定化に貢献します。
  • 従業員のエンゲージメント向上
    環境問題への意識が高い従業員にとって、SBT導入は企業への愛着や誇りを高め、モチベーション向上に繋がります。

SBTは、企業規模や業種を問わず、あらゆる企業にとって有益な取り組みです。

まず、SBTを取得することで、企業価値が向上する理由として以下の点が挙げられます。

  • 投資家からの評価向上: 投資家は、ESG(環境・社会・ガバナンス)要素を重視する傾向が強まっており、SBTを取得している企業は、持続的な成長が見込める企業として評価されます。
  • 金融機関からの評価向上: 金融機関は、気候変動リスクを考慮した投融資を行うようになっており、SBTを取得している企業は、融資を受けやすくなるなどのメリットがあります。
  • 企業の競争力強化: SBTを取得することで、脱炭素化に向けた技術開発や事業転換を促進し、企業の競争力強化に繋がります。
  • 従業員のエンゲージメント向上: 環境問題に関心の高い従業員は、SBTを取得している企業に魅力を感じ、優秀な人材の確保に繋がります。

近年、多くの投資家がESG投資を重視するようになり、企業の非財務情報を開示する動きが加速しています。SBTを取得することは、企業の透明性を高め、投資家との信頼関係を構築する上でも重要な役割を果たします。

ESG投資とは:持続可能な未来への投資

ESG投資は、従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の要素を考慮した投資手法です。企業の長期的な持続可能性や成長性を評価し、その観点から投資を行うことで、持続可能な社会の実現と投資リターンの両立を目指します。

 

ESG投資の具体例

  • 環境関連企業への投資: 再生可能エネルギー、省エネルギー技術、環境保護などの分野で活動する企業に投資します。
  • 社会貢献度の高い企業への投資: 従業員の労働環境改善、地域社会への貢献、人権尊重などに積極的に取り組む企業に投資します。

優れた企業統治を持つ企業への投資: 透明性が高く、公正な経営を行う企業に投資します。

なぜSBTが資金調達に有利に働くのか?

投資家がSBT取得企業に注目する理由は、以下の3点に集約されると考えられているため、ESG投資につながる機会が多いとされています。

なぜSBTが資金調達に有利に働くのか?

投資家がSBT取得企業に注目する理由

将来のリスクを低減できる: 気候変動による物理的リスク(洪水、干ばつなど)や移行リスク(炭素税導入、規制強化など)は、企業の事業継続性に大きな影響を与えます。SBTを取得することで、これらのリスクに適切に対処し、長期的な安定成長が見込める企業として評価されます。

成長ポテンシャルが高い: 脱炭素化は、新たな技術革新やビジネスモデル創出を促します。SBT取得企業は、積極的に環境問題に取り組むことで、イノベーションを促進し、持続的な成長を実現する可能性が高いと判断されます。

ESG 投資の潮流: ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の要素を考慮した投資のこと。SBTは、ESG投資における重要な評価指標の一つであり、取得企業はESG投資家からの資金獲得を期待できます。

SBT取得で高まる金融機関からの評価:具体的な事例

SBTを取得することで、企業は投資家だけでなく、金融機関からの評価も向上させることができます。なぜなら、金融機関は、気候変動リスクを考慮した投融資を行うようになっており、SBTを取得している企業は、そのリスク管理能力が高いなどの判断がされるからです。

金融機関がSBT取得企業を評価する理由

SBT取得は、企業の財務状況だけでなく、非財務情報も重視する金融機関からの信頼を得る上で、重要な要素となっています。具体的には、SBT取得企業に対して金融機関は以下の点で評価を高くしています。

  • 気候変動リスクへの対応力: SBTを取得している企業は、気候変動によって発生しうるリスクを認識し、その影響を最小限に抑えるための具体的な対策を講じていると評価されます。このことは、企業の将来のリスクを予測し、先回りして対策を講じることができる能力を示す指標として認識されます。
  • 長期的な安定成長: SBTを取得している企業は、環境問題に積極的に取り組む姿勢を示していることから、持続可能なビジネスモデルを構築し、長期的な安定成長が見込まれる企業として評価されます。
  • 透明性の高い情報開示: SBTを取得するには、温室効果ガス排出量や削減目標などの情報を明確かつ透明性高く開示する必要があります。この情報開示姿勢は、企業のガバナンスの健全性を示すだけでなく、ステークホルダーとの信頼関係構築にも大きく貢献すると評価されます。

加えて、SBT取得企業は、環境意識の高まりに伴い、社会からの共感を得やすく、結果として事業の安定性や成長性を高める可能性も秘めています。このような理由から、SBT取得は、企業が金融機関から高い評価を獲得し、良好な関係を築く上で極めて重要な要素となっているのです。

具体的事例

具体的には、以下のような事例が挙げられます。

  • 融資の優遇:

     

    • みずほフィナンシャルグループは、SBT認定を取得した企業に対し、融資条件の優遇や金利の引き下げなどの特典を提供しています。
    • 三菱UFJフィナンシャル・グループも、サステナビリティに積極的に取り組む企業を支援するため、SBT取得企業への融資枠を拡大しています。
    • これらの金融機関は、SBT取得企業を、気候変動リスクに対応する能力が高く、長期的な安定成長が見込める企業と評価しているため、積極的に融資を行っています。
  • グリーンボンドの発行:

     

    • グリーンボンドとは、環境改善効果のある事業に要する資金を調達するために発行される債券です。SBTを取得することで、企業はグリーンボンド発行の際に、投資家から高い評価を得やすくなります。
    • 例えば、花王株式会社は、2020年にグリーンボンドを発行し、その資金を再生可能エネルギーの導入や省エネルギー化などの環境対策に充当しました。SBTを取得していたことが、投資家からの信頼獲得に繋がり、グリーンボンドの発行を成功させることができました。
  • 格付けの向上:

     

    • 企業の信用力を評価する格付け機関も、ESG要素を重視するようになっており、SBT取得は格付け向上に繋がる可能性があります。
    • ムーディーズやS&Pグローバルなどの格付け機関は、ESG評価を格付けに反映しており、SBT取得企業は、高いESG評価を得ることで、格付けが向上する可能性があります。

このように、SBTを取得することで、金融機関からの評価が高まり、資金調達面で有利になるだけでなく、企業の信用力向上にも繋がります。

SBT取得の企業事例

SBTを取得している企業は、世界中で増加しており、日本でも多くの企業がSBTを取得しています。ここでは、SBTを取得している企業の事例をいくつか紹介します。

ソニーグループ株式会社

ソニーグループ株式会社

ソニーグループは、2050年までにバリューチェーン全体で温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを目指し、「Road to Zero」という環境計画を推進しています。 この計画に基づき、2030年度までの短期目標として、自社拠点における排出量を2018年度比で30%削減、サプライチェーンにおける排出量を2018年度比で14%削減する目標を設定しています。

具体的な取り組みとしては、

  • 再生可能エネルギーの利用拡大: 自社拠点で使用する電力を100%再生可能エネルギーに転換することを目指し、太陽光発電設備の導入やグリーン電力証書の購入を進めています。
  • 製品における省エネルギー化: テレビやゲーム機などの製品の消費電力を削減するため、省エネ技術の開発や製品設計の見直しに取り組んでいます。
  • サプライチェーンとの連携強化: サプライヤーに対しても、SBT取得を推奨し、排出量削減に向けた協働体制を構築しています。

株式会社リコー

株式会社リコー

株式会社リコーは、「2050年までにバリューチェーン全体で温室効果ガス排出量を実質ゼロにする」という目標を掲げ、SBTを2017年に取得しました。2030年度までの短期目標として、自社拠点における排出量を2015年度比で63%削減、サプライチェーンにおける排出量を2015年度比で30%削減する目標を設定しています。

取り組みの特徴は、

  • 循環型経済への移行: 製品のライフサイクル全体で環境負荷を低減するため、リユース・リサイクルを推進し、資源の有効活用に取り組んでいます。
  • 省エネルギー活動の推進: オフィスや工場における省エネルギー化を徹底し、照明のLED化や空調設備の効率化などを進めています。
  • 再生可能エネルギー導入の加速: 太陽光発電設備の導入やグリーン電力証書の購入などにより、再生可能エネルギーの利用拡大を図っています。

イオン株式会社

イオン株式会社は、小売業として、店舗の電力使用量や物流におけるCO2排出量の削減に取り組んでいます。2050年までに自社排出の温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを目指し、2030年度までの短期目標として、店舗の電力使用量を2010年度比で50%削減、物流におけるCO2排出量を2010年度比で50%削減する目標を設定しています。

主な取り組みとして、

  • 店舗における省エネ化: LED照明の導入や空調設備の効率化、冷凍・冷蔵ショーケースの省エネ化など、店舗における省エネルギー化を推進しています。
  • 物流の効率化: 共同配送やモーダルシフトなど、物流の効率化によるCO2排出量削減に取り組んでいます。
  • 再生可能エネルギーの導入: 店舗の屋根への太陽光発電設備の設置や、グリーン電力証書の購入を進めています。

株式会社資生堂

株式会社資生堂

株式会社資生堂は、2050年までにバリューチェーン全体でカーボンニュートラルを目指し、SBTを取得しています。 事業活動における環境負荷低減として、工場や研究所における再生可能エネルギーの利用、製品の容器におけるプラスチック使用量削減、物流におけるCO2排出量削減などに取り組んでいます。

さらに、

  • サステナビリティを意識した商品開発: 環境に配慮した原料の調達や、詰め替え用製品の開発など、サステナビリティを意識した商品開発を推進しています。
  • 森林保全活動への参加: 植林活動や森林保全活動への参加を通じて、CO2の吸収源となる森林の保全に貢献しています。

トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車株式会社は、2050年までにグローバルでカーボンニュートラルを達成するという目標を掲げ、SBTを取得しています。自動車の電動化を推進し、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)の開発・普及に力を入れています。

その他にも、

  • 工場における省エネルギー化: 生産工程におけるエネルギー効率向上や、再生可能エネルギーの導入など、工場におけるCO2排出量削減に取り組んでいます。
  • サプライチェーンにおける排出量削減: 部品調達から完成車生産、販売に至るまでのサプライチェーン全体で、CO2排出量削減に向けた取り組みを推進しています。

これらの企業は、SBT取得を通じて、企業価値向上、ブランドイメージ向上、リスク管理強化などの効果を上げています。

SBTを取得する企業は年々増加しており、それぞれの企業が独自の取り組みを展開しています。 それぞれの企業のウェブサイトやCSRレポートなどで、より詳細な情報を確認することができます。

まとめ

地球温暖化対策は、企業にとって喫緊の課題となっています。SBT取得は、その取り組みを評価する重要な指標として、企業価値向上に深く関わっています。

SBT認定

これまで解説してきた通り、SBTを取得することで、企業は投資家や金融機関からの評価を高めることができます。特に、ESG投資を重視する投資家にとって、SBTは企業の長期的な持続可能性と成長性を評価する上で重要な要素となり、ESG投資の拡大に伴い、SBT取得企業はより投資家や金融機関からこれまでより多くの投資資金を呼び込むことが期待できます。

さらに、SBT取得は、企業の長期的な財務パフォーマンス向上にも貢献すると考えられ、SBT達成に向けた取り組みは、エネルギー効率の向上や資源の有効活用など、コスト削減にもつながります。また、環境問題への取り組みは、企業のブランドイメージ向上にもつながり、長期的な収益拡大にも貢献する可能性があります。SBT取得は、企業の財務的側面、投資家からの評価という点で、企業価値向上に大きく貢献し得るものです。

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