
はじめに
近年、地球温暖化対策の重要性が増す中、企業には自社の事業活動に加え、サプライチェーン全体での環境負荷低減への取り組みが強く求められています。その一環として、製品のライフサイクル全体における環境影響を把握する「製品単位の環境データ」の開示が不可欠となり、多くの企業がその対応に苦慮されています。
このような状況を受け、環境省は「CFP(カーボンフットプリント)入門ガイド」を2025年3月に公開しました。本ガイドは、CFPの算定・表示に初めて取り組む企業様が、製品のライフサイクル全体での温室効果ガス排出量を把握し、削減に繋げるための手引きとなるものです。
なぜ今、製品単位の環境データが求められるのか?

その背景には、以下のようないくつかの重要な要因があります。
- 地球規模の課題:気候変動への対応: 温室効果ガス排出量削減は世界共通の目標であり、企業もその責務を果たす必要があります。製品単位での排出量把握は、対策の第一歩となります。
- サプライチェーン排出量の重要性の高まり: 企業の排出量の多くはサプライチェーン由来であり、全体での削減には製品ごとのデータ把握と連携が不可欠です。
- 投資家や消費者の意識変化: ESG投資の拡大や消費者の環境意識の高まりにより、製品の環境情報に対する関心が高まっています。
- 法規制や国際的な基準の動向: 各国で環境情報開示の義務化や製品環境基準の策定が進んでおり、対応が求められています。
「CFP入門ガイド」は、このような背景を踏まえ、製品単位での環境データ対応、特にCFPの導入を検討する企業様にとって、具体的かつ実践的な情報を提供します。
CFPとは?

CFP(Carbon Footprint of Products)とは、製品の原材料調達から製造、流通、使用、廃棄・リサイクルに至るまで、ライフサイクル全体で排出される温室効果ガスの量をCO2排出量に換算して表示する仕組みです。この情報を開示することで、企業は自社の製品が環境に与える影響を透明化し、排出量削減に向けた取り組みを促進できます。また、消費者はCFP情報を参考に、より環境負荷の少ない製品を選ぶことが可能になります。
CFP入門ガイドの概要

本ガイドは、CFPの概要から算定方法、表示方法、関係者との連携まで、CFPに取り組む上で必要な情報を網羅的に解説しています。
- CFPとは何か?: CFPの定義、目的、重要性について解説します。
- CFPの算定方法: 製品のライフサイクル全体での排出量を算定する手順を、具体的な例を交えながら説明します。
- CFPの表示方法: 算定したCFPを製品に表示する際のルールや注意点について解説します。kg-CO2e単位での表示や、背景情報の表示の必要性についても触れています。
- 誰と連携してCFPに取り組むべきか?: サプライチェーン全体でのデータ収集や、関係機関との連携の重要性を説明します。
CFP入門ガイドの活用
本ガイドを活用することで、企業は以下のメリットを得られます。
- サプライチェーンにおけるホットスポットの特定: 排出量の多い工程を特定し、重点的に対策を講じることができます。
- 排出量削減に向けた施策検討: CFP算定結果に基づき、具体的な削減目標を設定し、施策を実行できます。
- 製品のブランディング: 環境に配慮した製品であることをアピールし、企業のイメージ向上に繋げられます。
- 顧客への情報提供: 消費者が脱炭素に貢献する製品を選択するための情報を提供できます。
環境省は、本ガイドの他に、CFP算定方法をまとめた「カーボンフットプリントガイドライン」や、CFP表示に関する指針を示す「カーボンフットプリント表示ガイド」も公開しています。これらのガイドと併せて活用することで、CFPへの取り組みをより効果的に進めることができるでしょう。
詳細については、以下の環境省のウェブサイトをご参照ください。
本ガイドが、製品単位の環境データ対応にお悩みの企業様の一助となれば幸いです。
SBT(Science Based Targets)とは?
SBTとは、Science Based Targetsの略で、科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標のことです。パリ協定で合意された「世界の平均気温上昇を産業革命前比で2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」という目標を達成するために、企業が設定する排出削減目標を指します。Science Based Targets initiative(SBTi)が認定する、科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標のことです。SBTiは、CDP、国連グローバル・コンパクト、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)の4団体によって設立された国際的なイニシアチブです。
SBTが重要視されている理由は、企業の脱炭素化への取り組みを客観的に評価できる指標となるからです。SBTを取得することで、企業は以下のようなメリットを得られます。
- ブランドイメージの向上
環境意識の高まりとともに、消費者は企業の環境への取り組みを重視するようになっています。SBT導入は、企業の持続可能性に対するコミットメントを示すことで、消費者の共感を呼び、ブランドイメージ向上に繋がります。 - 投資家からの評価向上
ESG投資が主流となる中、SBTは企業の長期的な成長性を評価する上で重要な指標となっています。SBT導入は、投資家からの信頼獲得、資金調達、企業価値向上に貢献します。 - 競争力強化
SBT達成に向けた取り組みは、省エネルギー化、資源効率の向上、イノベーション促進など、企業の競争力強化に繋がる効果も期待できます。 - リスク管理
気候変動による事業リスクは、今後ますます高まることが予想されます。SBT導入は、気候変動リスクを早期に特定し、対策を講じることで、事業の安定化に貢献します。 - 従業員のエンゲージメント向上
環境問題への意識が高い従業員にとって、SBT導入は企業への愛着や誇りを高め、モチベーション向上に繋がります。
SBTは、企業規模や業種を問わず、あらゆる企業にとって有益な取り組みです。