
はじめに
地球温暖化は、私たちの社会や経済に深刻な影響を与える喫緊の課題です。世界各国で脱炭素化に向けた取り組みが加速する中、日本も「2050年カーボンニュートラル」の実現を目標に掲げています。
その実現に向けた重要な施策の一つが、JCM(Joint Crediting Mechanism:二国間クレジット制度)です。そして2025年1月31日、JCMクレジットの記録等に関する省令が公布され、制度の運用がより明確化されました。
本記事では、JCMクレジットの仕組みから省令の内容、そしてそれが日本の脱炭素化にどう貢献するのかまで、わかりやすく解説していきます。
サマリー
- JCMクレジットは、日本が発展途上国と協力して温室効果ガス削減を行う制度。
- 省令公布により、JCMクレジットの記録・管理方法が明確化。
- 口座簿の開設、移転手続きの明確化、情報公開の強化などが主な内容。
- 省令公布は、JCMクレジットの信頼性を高め、活用を促進する上で重要な一歩。
- JCMクレジットの活用拡大は、日本と世界の脱炭素化に貢献する。
おすすめ関連記事
→最新版|カーボンプライシング(炭素税の世界ランキングと日本の実態)
JCMクレジットとは、簡単に言うと、日本が発展途上国と協力して温室効果ガス削減プロジェクトを実施し、その削減効果をクレジットとして認証・取引する仕組みです。
例えば、日本がベトナムで省エネ効果の高いエアコンを導入するプロジェクトを支援したとします。その結果、従来のエアコンと比べてCO2排出量が削減されました。この削減量を数値化し、JCMクレジットとして日本側に発行するのです。
JCMクレジットは、日本の排出削減目標の達成に貢献するだけでなく、発展途上国の持続可能な開発にも役立ちます。まさに地球全体の脱炭素化を推進するための画期的な制度と言えるでしょう。

JCMパートナー国
これまで29か国(モンゴル、バングラデシュ、エチオピア、ケニア、モルディブ、ベトナム、ラオス、インドネシア、コスタリカ、パラオ、カンボジア、メキシコ、サウジアラビア、チリ、ミャンマー、タイ、フィリピン、セネガル、チュニジア、アゼルバイジャン、モルドバ、ジョージア、スリランカ、ウズベキスタン、パプアニューギニア、UAE、キルギス、カザフスタン、ウクライナ)とJCMを構築しています。(2024年2月時点)

2. なぜ今、省令が公布されたの?背景と目的を理解しよう
JCMは2011年から運用が開始され、これまで多くのプロジェクトが実施されてきました。しかし、JCMクレジットの記録や管理に関するルールが曖昧な部分があり、透明性や信頼性の向上、そして制度の更なる活用促進が課題となっていました。
そこで、2025年1月に改正地球温暖化対策推進法が施行され、JCMクレジットの記録等に関する省令が公布される運びとなったのです。
この省令は、JCMクレジットの発行、記録、移転、取消し等の手続きを明確化し、制度の透明性と信頼性を高めることを目的としています。
3. 省令で何が変わる?具体的な内容とポイントをチェック!
JCMクレジットの管理方法が大きく変わります。具体的には、以下のようなポイントが挙げられます。

- 口座簿の開設: JCMクレジットの記録・管理を行うための電子口座簿を開設することが義務付けられました。これにより、クレジットの発行、移転、取消しなどの履歴が明確に記録され、透明性が確保されます。
- 移転手続きの明確化: クレジットの移転手続きが明確化され、不正な取引や二重計上を防止するための仕組みが導入されました。
- 情報公開の強化: 口座簿の情報は、一定期間公開されることになりました。これにより、国民への情報提供が強化され、制度への理解と信頼が高まることが期待されます。
4. JCMクレジットは日本の脱炭素化にどう役立つ?未来への展望
今回の省令公布は、JCMクレジットの信頼性を高め、その活用を促進する上で非常に重要な一歩となります。制度の透明性が高まることで、企業はより安心してJCMクレジットを活用できるようになり、海外での排出削減プロジェクトへの投資を促進する効果が期待されます。また、発展途上国にとっても、JCMは、先進国からの資金や技術の導入による排出削減と持続可能な開発を両立させることができる魅力的な制度です。
JCMクレジットの活用拡大は、日本のみならず、世界全体の脱炭素化を加速させ、持続可能な社会の実現に大きく貢献するでしょう。

JCMクレジットが日本の脱炭素化に役立つ理由
- 排出削減目標の達成に貢献:海外での排出削減量を日本の削減目標に活用できるため、国内での削減努力に加えて、より柔軟な目標達成が可能になります。
- 企業の海外投資を促進:制度の透明性が高まることで、企業はより安心してJCMクレジットを活用できるようになり、海外での排出削減プロジェクトへの投資を促進する効果が期待されます。
- 発展途上国の脱炭素化を支援:JCMは、発展途上国にとって、先進国からの資金や技術の導入による排出削減と持続可能な開発を両立させることができる魅力的な制度です。
- 世界全体の脱炭素化に貢献:JCMクレジットの活用拡大は、日本のみならず、世界全体の脱炭素化を加速させ、持続可能な社会の実現に大きく貢献するでしょう。
未来への展望
今回の省令公布を機に、JCMクレジットの活用がさらに拡大し、日本と世界の脱炭素化に大きく貢献していくことが期待されます。
具体的には、以下の効果が期待されます。
- 日本の排出削減目標の達成に貢献:JCMクレジットの活用拡大により、日本はより効率的に排出削減目標を達成できるようになるでしょう。
- 新たなビジネスチャンスの創出:JCMクレジットの取引市場が活性化し、新たなビジネスチャンスが生まれることが期待されます。
- 国際協力の強化:JCMを通じて、日本は発展途上国との協力関係を強化し、世界全体の脱炭素化に貢献していくことができるでしょう。
JCMクレジットは、日本の脱炭素化を加速させるための重要なツールの一つです。今回の省令公布を機に、JCMクレジットの活用がさらに拡大し、持続可能な社会の実現に大きく貢献していくことが期待されます。
まとめ
JCMクレジットは、地球温暖化対策において重要な役割を担う制度です。今回の省令公布により、制度の透明性と信頼性が向上し、JCMクレジットの活用が促進されることが期待されます。
日本は、JCMクレジットをはじめとする様々な取り組みを通じて、2050年カーボンニュートラルの実現を目指し、持続可能な社会の構築に貢献していくでしょう。
参考文献・情報源
- 経済産業省:改正地球温暖化対策推進法に基づく国際協力排出削減量(JCMクレジット)の記録等に関する省令等を公布しました (https://www.meti.go.jp/press/2024/01/20250131004/20250131004.html)
- 環境省:二国間クレジット制度(JCM) (https://www.env.go.jp/earth/jcm/index.html)
SBT(Science Based Targets)とは?
SBTとは、Science Based Targetsの略で、科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標のことです。パリ協定で合意された「世界の平均気温上昇を産業革命前比で2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」という目標を達成するために、企業が設定する排出削減目標を指します。Science Based Targets initiative(SBTi)が認定する、科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標のことです。SBTiは、CDP、国連グローバル・コンパクト、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)の4団体によって設立された国際的なイニシアチブです。
SBTが重要視されている理由は、企業の脱炭素化への取り組みを客観的に評価できる指標となるからです。SBTを取得することで、企業は以下のようなメリットを得られます。
- ブランドイメージの向上
環境意識の高まりとともに、消費者は企業の環境への取り組みを重視するようになっています。SBT導入は、企業の持続可能性に対するコミットメントを示すことで、消費者の共感を呼び、ブランドイメージ向上に繋がります。 - 投資家からの評価向上
ESG投資が主流となる中、SBTは企業の長期的な成長性を評価する上で重要な指標となっています。SBT導入は、投資家からの信頼獲得、資金調達、企業価値向上に貢献します。 - 競争力強化
SBT達成に向けた取り組みは、省エネルギー化、資源効率の向上、イノベーション促進など、企業の競争力強化に繋がる効果も期待できます。 - リスク管理
気候変動による事業リスクは、今後ますます高まることが予想されます。SBT導入は、気候変動リスクを早期に特定し、対策を講じることで、事業の安定化に貢献します。 - 従業員のエンゲージメント向上
環境問題への意識が高い従業員にとって、SBT導入は企業への愛着や誇りを高め、モチベーション向上に繋がります。
SBTは、企業規模や業種を問わず、あらゆる企業にとって有益な取り組みです。