人の血液からプラスチック検出 – 日本の最新技術がごみ問題の救世主に

   by Takumi Hisamatsu        
人の血液からプラスチック検出 – 日本の最新技術がごみ問題の救世主に
出典:WWF

「人は、1週間でクレジットカード1枚分(5g)のプラスチックを食べている」

これは、地球環境保全団体「WWF」が2019年に発表したレポートに書かれた内容です。
このレポートによると、人は平均して毎週2,000ものマイクロプラスチックを摂取しており、重さにすると1週間で5g、1ヶ月で21g、1年で250gになるとのことです。プラスチックを食べてるなんてそんな馬鹿な?と思うかもしれません。
しかし、先月3月24日に衝撃的な研究結果が発表されました。

健康な成人の80%の血液中からプラスチック粒子を検出

2022年3月24日にEnvironment International誌に発表されたオランダの研究で、健康な成人22人のうち、17人の血液中からマイクロプラスチックが検出されたという結果が発表されました。
マイクロプラスチックとは、爪よりも小さく、完全に分解することのないプラスチックの破片で、マリアナ海溝やエベレストの頂上、ほこりや食べ物や飲み水などから発見されているため、どこにでもあると言われています。
マイクロプラスチックは、空気中や生き物の体など食物連鎖の中にも入り込み、それが食事や飲み物を通じて人の体内へ取り込まれます。
その中で特に、水道水やペットボトルなど飲料水からの摂取量が多く、食品からも検出されており、人間の胎盤や哺乳瓶、幼児や大人の大便からの発見も確認されていました。これらの結果から、血液を介してプラスチックが移動していることが示唆されていましたが、今回の研究でそれが決定的な証拠となっています。
今回の研究対象者が22人と少数であるとはいえ、そのうち17人と8割の人の血液にプラスチックが検出されていることから、私たちの血液中にもプラスチックが混入している可能性は決して低くはないといえるのではないでしょうか。

拡大する海洋プラスチック問題

人の体内にプラスチックが摂取される主な原因の一つに、海洋プラスチック問題があります。私たちの生活から出たプラスチックが、河川などから海へ流れ込み、大量のプラスチックごみが世界中の海に浮遊、堆積する問題です。
これらは海の生態系に悪影響を及ぼし、魚類、海鳥、アザラシなどの海洋哺乳動物、ウミガメを含む少なくとも約700種もの生物が傷つけられたり死んだりしています。このうち実に92%がプラスチックの影響だそうです。
そして、そういったプラスチックごみは、海岸での波や紫外線等の影響を受けるなどして、やがて小さな粒子となります。5mm以下になったプラスチックはマイクロプラスチックと呼ばれ、これらは細かくなっても自然分解することはなく、数百年間以上もの間、自然界に残り続けると考えられています。
そうして小さくなったプラスチックが食物連鎖を通じて多くの生物に取り込まれ、プラスチックを排出する私たち人間に戻ってきているという悪循環が起こっているわけです。

リサイクルで回収されたプラスチックの行方は?

つい最近、アメリカの大手総合情報サービス会社「Bloomberg(ブルームバーグ)」が『リサイクルの厄介な真実』というニュースを発表しました。
出典:Bloomberg(ブルームバーグ)丨『リサイクルの厄介な真実
このニュースを要約すると以下になります。
英国最大の食料品小売りチェーンのテスコがリサイクルとして回収しているプラスチックを追跡調査。すると、規制がゆるく処理コストの安い3,000キロ先のポーランドに運び出されており、廃棄物を減らすというより、責任を転嫁するようなシステムになっていた。
今回のケースのような場合、「プラスチックごみ問題にきちんと対処していない」と見なされ、自社が販売した商品の容器を回収すればよいというだけでなく、その廃棄物の行方を管理したうえで、どこでどのような処理をするのかまで説明する姿勢が必要だということが言われています。
そしてこれは、日本も他人事ではありません

日本の廃プラスチックはアジア諸国へ輸出されていた

日本はプラスチックの生産量、消費量ともに多く、どちらも世界3位です。
しかし、陸上から海洋に流出したプラスチックごみ発生量は30位と、生産量・消費量の順位に比べるとかなりギャップがあります。
「日本はプラスチックごみをきちんとリサイクルしているから、あまり海に流出してない!」と思いたいところですが、そうではありません。実際は、アジア諸国に輸出するという形でプラスチックごみの発生量を抑えています。
陸上から海洋に流出したプラスチックごみ発生量
2010年推移ランキング
1位中国353万
2位インドネシア129万
3位フィリピン75万
4位ベトナム73万
5位スリランカ64万
20位アメリカ11万
30位日本6万
2010年時点での、陸上から海洋に流出したプラスチックごみ発生量ランキングの上位は、中国、インドネシア、フィリピンとなっており、日本はこれらの国々へ多くのプラスチックごみを輸出しており、特に中国へは大量に輸出していた過去があります。
つまり、輸出先のアジア諸国を通して、日本からもプラスチックを海に流出させていたことになります。
2017年の中国の輸入規制措置を筆頭に、アジア各国で廃プラスチックの輸入規制が広がったことで、現在は日本からの輸出は減少傾向にありますが、これ以上海への流出を防ぐために、プラスチックごみを処理する仕組みが求められています。

環境を汚さずにプラスチックごみを資源に変える最新技術

すでに世界の海に存在しているといわれるプラスチックごみは、合計で1億5,000万トン。さらに少なくとも年間800万トンが新たに流入していると推定されています。このまま海洋プラスチック問題が拡大すると、2050年にはプラスチックごみの量が海にいる魚を上回るという予測も出ているくらいです。
そんな状況を避けるには、これ以上プラスチックごみを増やさない方法が必要になりますが、実はそれを可能にする技術が日本にあることをご存知でしょうか?

過熱水蒸気熱分解による再生資源抽出装置「URBAN RIG(アーバンリグ)」

詳細な仕組みについては、是非ホームページの方をご覧いただければと思いますが、このURBAN RIG(アーバンリグ)は、一言でいうと「プラスチックごみを原油などの資源に生まれ変わらせることができる装置」です。
出典:株式会社ワンワールドジャパン丨『URBAN RIG(アーバンリグ)
この装置には特に凄い特徴が3つあります。
特徴1丨分別不要
生ゴミなどの有機物は炭へ、プラスチック類は油として抽出、金属類は金属のまま残るため、混合ゴミをまるごと投入することができる。
特徴2丨CO2排出ゼロ
無酸素状態で温度を上げていき処理を行うので、CO2やダイオキシンなどの有害物質は発生しない。
特徴3丨再生可能な資源を生成
廃棄物から抽出された油は、油を動力とする様々な装置にて利用可能。アーバンリグ装置自体が、ここで抽出された油を動力に稼働することが可能(自分で作った油で自分の動力をまかなう)。
環境面への配慮もしつつ、なおかつ資源を生み出せるという、欠点なしの次世代装置。面倒な分別作業なしでゴミを全部投入しておけば、それが炭や油などの資源に変わる!しかも環境負荷ゼロで。
それがアーバンリグです。

海洋プラスチックだけでなく貧困解消へも期待

プラスチックごみを処理できるので、海洋プラスチック問題の解決には当然期待できます。それに付随して、海の生態系を守ることやプラスチック焼却時に排出されるCO2の削減など、環境面における多くの分野で好影響が見込まれます。
また、“プラスチックごみを資源に変えられる”ということは、資源を売買することで利益を出すことも可能ということです。つまりごみからお金を生み出せることになります。
そうなれば、ごみを集めてくれる人へ今よりも多くの報酬を支払うことも可能になります。

モンゴルの大草原にごみの山

大草原や遊牧民など自然のイメージが強いモンゴル。しかし、その一部には、大量のごみが放置された場所があります。首都ウランバートルのごみ処理場は、焼却設備もなければリサイクル施設もなく、ただごみを捨てるだけとなっています。
このごみが原因で死んだと見られる家畜が年間800頭以上もいるそうで、さらにごみを食べた家畜の肉を食べたり、乳を飲んだりすることによる人体への影響も懸念されています。
収集車からごみが吐き出されると、瓶や缶、ペットボトルなど、お金に換えられるごみを集めて生計を立てている人もいるそうです。
ごみを資源に変え、資源を販売することができれば、ごみ収集を正式な事業として構築し、近隣に住む人々を社員として雇用することも可能です。ごみ問題の解決に加え、住民の安定した生活の確保にも繋がります。
以前「SDGs達成の鍵は幸福度向上にあり!コペンハーゲンから学ぶ持続可能な気候変動対策」の記事でも話したように、どれだけ環境に良い取り組みだといっても、取り組む人に明確なメリットがなければ長続きしません。ゴミを集めることで、環境が良くなることに加え、自分に安定した報酬が入ってくる。これが重要です。
私たちKabbaraはこの考えを意識しながら、持続可能な事業、社会を目指して日々取り組んでいます。
一緒に活動したい!もっと情報を知りたい!という仲間も随時募集中です!
まだまだ、これから研究開発が必要な部分も多いですが、DeFi、メタバース、NFT、web3、地球環境再生、土壌改良、温室効果ガス吸収、不耕起栽培、小規模農家改革、カーボンクレジット創出活動などに少しでも興味を持たれましたら、これら実現のためみなさまの活動へのご参加、お待ちしています。
また、ご質問やご意見随時承っております。
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