財務リターンと並行して環境・社会的インパクトを求めるインパクト投資。市場規模はここ数年拡大していくことが予測されていますが、その予測どおり、2021年度の国内インパクト投資残高は1兆3204億円と、前年度より4倍に膨らんだとの調査結果が発表されました。
以前公開した記事の中で、
「これからの時代に企業が生き残っていくためにはサステナブルか否か、という視点がかなり重要視される」(元記事)
「今後、企業価値を決める最大の要因はどれだけ儲かっているかという財務情報ではなく、気候変動対策などの”非財務情報”」(元記事)
ということをお話しました。
要は、経営戦略にサステナブルやSDGsを取り入れていないと、取引先やユーザーからも選ばれなくなってしまい、売上や企業価値が下がってきてしまう。逆にいうと、SDGsを経営戦略に取り入れると売上向上のチャンスが広がるということです。
では、実際に経営にSDGsを取り入れると本当に売上は増えるのか?
今回はSDGs経営に取り組んだことで業績アップを実現した日本の企業を3つご紹介します。
1年で上場企業や官庁、大使館など約50件の新規顧客を獲得「大川印刷」
まず1つ目は、神奈川県に本社を持つ株式会社大川印刷です。大川印刷は、横浜名物・崎陽軒のシウマイやシウマイ弁当の掛紙を手掛ける老舗印刷会社です。
現代表取締役社長の大川哲郎氏は、2005年の社長就任時に、印刷を通じて社会的課題を解決する「ソーシャルプリンティングカンパニー」というビジョンを打ち出しました。
主な取り組みポイントは「 環境負荷低減」です。
印刷工程全体やその関連事業によって排出される年間の二酸化炭素排出量を算定し、以下のような取り組みを行っています。
- 石油系有機溶剤0%の「ノンVOCインキ」を積極的に使用
- 印刷に用いる紙についてエコ用紙の使用をクライアントに提案
- 納品時に廃棄物が出ないように、段ボールケースではなく、繰り返し使えるプラスチックコンテナを用い、配送は電気自動車やディーゼル車を使用
- クライアントが了承した納品物は、梱包も簡易なものにする
- 太陽光発電事業への投資など、その排出量を打ち消す活動を行う「ゼロカーボンプリント」
大川印刷はこのような取り組みが評価され、2018年には「第2回ジャパンSDGsアワード」の「SDGsパートナーシップ賞(特別賞)」を受賞しています。
そして、この取り組みによる業績への影響ですが、2018年には上場企業や外資系企業、官庁、大使館など約50件もの新規顧客を獲得するなど、SDGsに力を入れることで経営面にも好影響が生まれ、2019年度は2000年以降の最高益を記録しています。
世界的超高級ホテルに採用「茶園清水屋」
次の事例は、京都府宇治市で抹茶の原料となる碾茶の栽培製造と、ハイブリッドな茶農業に挑戦する茶農家・茶園清水屋の事例です。
茶園清水屋は、宇治市に住まう清水家の方々が経営する茶農家です。その歴史は長く、茶農家として300年以上の歴史を持っています。
300年間のノウハウを蓄積し、質の高いお茶を作る清水屋ですが、近年の気候変動の影響でお茶作りに問題が起こっていました。ある年、大変な大雨が降り、さらにその翌年にはお茶の木が枯れるほどの日照りが続きました。その結果、日照りと高温度による葉焼け対策にかかる水道料金は月60万円に・・・。金銭的にも水資源枯渇問題に対する環境負荷的にも大変な負担となりました。
そんな状況で模索を続けた清水家は、砂漠の緑化などに使われる「点滴チューブ」の導入に至りました。点滴チューブによる注水はコンピューターで管理できるため、無駄な水の消費を抑えるだけでなく、天気予報に合わせて注水量を細かくコントロールできるようになりました。
その結果、 水道代を抑制するだけではなく、品質の安定にもつながり、伝統農法と最新技術を融合させる「ハイブリッド茶農家」として、高い碾茶の品質で評価を受けています。
このような取り組みが評価され、茶園清水屋は2016年に、宇治市の碾茶農家として初となる、「有機JASマーク(農薬や化学肥料などの化学物質に頼らず、自然界の力で生産された食品であることを示すもの)」の認証を受けています。
それに加えて、最低でも1人1泊15万円、スイートクラスなら50万円以上が当たり前の超高級ホテルに採用されています。このクラスのホテルは、味などの品質はもちろんのこと、地球環境への配慮も含めたうえで仕入れるものを厳選します。
もともと高品質で美味しい点に加え、環境にも負荷をかけない最高級のお茶ということから採用されています。
『高い』と言われたトマトジュースが2倍の価格で売れる大人気商品に「小林ふぁ〜む」
3つ目にご紹介するのは、京都府福知山市でトマトや米などの生産を手がける小林ふぁ~むの取り組みです。
ご夫婦で農業を営む小林ふぁ~む。そんな小林ふぁ~むの看板は、無農薬・無化学肥料で育てた完熟の実を収穫する「かなこ農法」でつくられたトマトです。
そして、そのトマトを使った「とまとのじゅ~す」。もともと180mlで400円で販売していましたが、地元で「高い」と言われていました。
しかしこのとまとのじゅ〜すは無農薬・無化学肥料で人にも環境にも優しい。また、生産者である加奈子さん独自の工夫がたくさん込められており、これまでのトマトジュースとは違う美味しさで、トマトの匂いが苦手な人でもゴクゴク飲める味でした。
さらに、小林ふぁ〜むのトマトをジュースにして瓶詰めしているのは、京都府与謝野町の「リフレかやの里」という施設です。このリフレかやの里は、障害のある方々が、働きながら一般就労に向けた訓練をしている施設です。
こういった取り組みの結果、京都市内のデパートのバイヤーから提案を受け、180ml/400円で高いと言われていたトマトジュースは、現在864円で販売され大人気商品となっています。
「SDGsを謳えば売れる」では無い。商品が優れていることが大前提
今回、経営にSDGsを取り入れたことで業績が良くなった3つの事例をご紹介させていただきましたが、1つ注意しないといけないことがあります。
それは、SDGsへの取り組みをアピールすれば業績が好転するということではなく、SDGsはあくまで1つの要素。重要なのは、商品・サービス自体が高品質であることが必須条件ということですね。
「SDGs達成の鍵は幸福度向上にあり!コペンハーゲンから学ぶ持続可能な気候変動対策」の記事でも話したように、SDGsに貢献できるから、環境に、社会にいい効果があるからといくら言っても、事業として展開するのであれば、ユーザーに明確なメリットがないと売上には繋がりません。
大前提として、そもそも商品・サービスが良いもので、ユーザーやお客様に喜んでもらえる品質であること。そこにSDGsが上乗せされることで取引先や見込み客から選ばれる可能性が高くなり、業績向上へ繋がる。
これが大事なポイントだと思います。
私たちKabbaraは、まだまだこれから事業を展開していくところですが、この方程式を忘れず、社会に良い影響を与えながら売上も増やしていく。それを実践していけるよう努力していきます。
一緒に活動したい!もっと情報を知りたい!という仲間も随時募集中です!
まだまだ、これから研究開発が必要な部分も多いですが、DeFi、メタバース、NFT、web3、地球環境再生、土壌改良、温室効果ガス吸収、不耕起栽培、小規模農家改革、カーボンクレジット創出活動などに少しでも興味を持たれましたら、これら実現のためみなさまの活動へのご参加、お待ちしています。
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