「MIT テクノロジーレビュー 脱炭素イノベーション」から世界で何が起きようとしているか?を探ってみる。

   by Akihiko Sato        
「MIT テクノロジーレビュー 脱炭素イノベーション」から世界で何が起きようとしているか?を探ってみる。
こんにちは、佐藤です。
今回は、「MIT テクノロジーレビュー 脱炭素イノベーション」から注目のテクノロジーの気になる項目を、まとめてみたいと思います。
    目次
  • 気候変動で高まるイノベーションの必要性
  • 気候移動の時代
  • アメリカの動向
  • 気候変動最前線
  • 重大危機を乗り越える真のイノベーションの起こし方
  • 脱炭素イノベーションに挑む気候テック・スタートアップ10+
  • 脱炭素化は日本の力を底上げする最後のチャンス
1.気候変動で高まるイノベーションの必要性
人間活動による地球温暖化は「疑う余地がない」。2021年8月、国連の専門家組織は、初めてそう断言した。
この報告書の、産業分野の取り組みについての随筆を担当した、科学者の田中加奈子氏は「この10年のイノベーションが鍵」と話しています。
気候変動の緩和におけるイノベーションの必要性や産業界が持つべき視点とは?
カーボンニュートラル社会に向けて「目指すこと」だけを見るのではなく「起きること」も併せて考えることが非常に大事です。
ここで、「目指すこと」といっているのは2025年までにピークアウトさせて2030年までには43%削減する必要があるが、現実は化石燃料を利用するインフラだけで、超過してしまうという厳しい見方もある。化石燃料を使わずに、再生可能エネルギーの拡大や機器や生産性、物質などの効率の向上を一層していく必要がある。
「目指すこと」とは温暖化の視点からの影響だけを見るのではなく、コロナ禍によって変化した事象など今後「起きること」を合わせて考える必要がある。といっています。「ありうる変化」としてライフスタイルや価値観の変化もあげています。
イノベーションの必要性とは、「テクノロジーが研究室から社会への実装までには30年以上かかる」ということから、2050年をターゲットとした場合、現在着手しているテクノロジーが社会へ実装されるということになります。 どのテクノロジーを伸ばすのか?技術開発への出資も鍵となる。
ただしく進むためには視野を広げ、柔軟に対応できる底力をつけることが重要といっています。
2020年10月、当時の菅義偉内閣総理大臣は所信表明において、日本が2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。その実現に向け「グリーン成長戦略」を具現化し、「第6次エネルギー基本計画」「地球温暖化対策計画」「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」を策定してきました。とくに水素などのテクノロジーは国際連携が可能なイノベーションの創出には日本の期待値も高い。
パリ協定で提出された日本のINDC(約束草案)での国際貢献とする二国間クレジットは、2030年度までに5000万〜1億トンの二酸化炭素排出権を削減できる見込みとありますが、産業界による優れた取り組みのポテンシャルは100億トン以上とも試算されているといいます。
色々な技術のミックスという発想もとても大事ということですね。
2.気候移動の時代
ジンバブエでの現地ルポから
10年以上まえから雨がすくなくなり、川が干上がっている。もともと30度を超えるような暑い地域だったが、37度という最高気温も更新した。梅雨の時期も変化があり、11月上旬ではなく12月下旬に始まり、梅雨明けの時期も早まってきている。 農地には砂埃が舞い上がっている。作物は全滅。
ここ6年間、ほとんど何も収穫していない。
7頭いた牛もすべて死んでしまった。
今は、NPOやジンバブエ政府から提供されている食糧援助で生き延びているが、十分ではない。
世界銀行の予測では、気候変動の影響によって2050年までに移住を余儀なくされるとしています。
サハラ以南のアフリカに住む8,600万人、
東アジアでは4,900万人、
南アジアでは4,000万人、
北アフリカでは1,900万人、
中南米では、1,700万人、
東欧・中央アジアでは500万人、
と予測されています。
水を求めて住まいを移動し移住できたとしても新たな異常気象に直面し、努力は報われないという事に気付きます。
近い将来、人々は残り少ない水を巡って争うようになるでしょう。
「ここに未来はありません」
すでに気候変動によって多くの人々に影響がでています。
多くの人にとってはすでに「手遅れだ」と締めています。
土壌の改良と再生がいかに重要で緊急性が高いか!ということがひしひしと感じる内容となっています。
3.アメリカの動向
アメリカエネルギー省幹部に聞くバイデン政権が推進する二酸化炭素貯留の狙い。
バイデン政権が気候変動への取り組む柱の一つのなっているのが、
「二酸化炭素の回収・貯留(CCS)」
排出量削減が困難な業界にとって必要なテクノロジーとなっているようだ。
特に、工場や発電所からの二酸化炭素の放出の防止や、大気中からの二酸化炭素を除去し新たな製品へと加工することで永久に貯留するテクノロジーや手法の開発に力を注いでいる。化石エネルギー・炭素管理局の管理者には 「カーボン180」という炭素除去と炭素リサイクルを推進するNGOの政策責任者を抜擢するなど本気が伺えます。
1兆ドル規模のインフラ法案には空気から二酸化炭素を吸収し、パイプラインを通じて輸送し、地下深くに埋蔵するいわゆるDAC(直接空気回収)のプラント開発にも数十億ドルを拠出することになっているといいます。
化石燃料の廃絶を訴える活動家はDACなどの技術は目標からの逸脱だとする主張もあるが、すでに危険なレベルにある現状を食い止めるには二の足を踏んではいられず、他の選択肢もないという状況といっています。
すでに、鉄鋼や水素、肥料の工場などでの成功例も出てきており、削減に貢献している例もある。 CSS(二酸化炭素の回収・貯留)は必要不可欠であり、極めて汎用性の高い手段となっている。
まだ実用化がされていない天然ガスのクリーンエネルギー100パーセントという道筋のためにも、実用化に投資していく必要があるとしています。
「排出削減という取り組みは前政権には存在すらしていなかった。体制作りの初期段階にある。」
アメリカが本腰をいれて取り組むという動きは市場へも大きな影響となると思います。
専門家や資金をすぐにプロジェクトへ取り込み進めていける行動力と実行力は流石といった感じです。
4.気候変動最前線
「気候変動は一部の国の専門家だけで話すべき問題ではない。気候変動の被害者となった人々の物語とテクノロジーを結びつけることにより、私たちは技術的な解決策についてより独創的に考え始めることができるはずだ。
1001人の物語から見えてきた気候変動の最前線でいま起きていること
ここでは、気候変動の問題定義として「環境正義※1」をあげている。
※1 環境正義(Environmental Justice)とは、肌の色や出身国、所得の多さにかかわらず、誰もが公正に扱われ、安全な環境で暮らせるようにと提言すること。1980年代のアメリカにおいて、貧困層や黒人系などの少数派(マイノリティ)が住む地域の多くが、環境公害による健康被害を受けやすい状況にあるという「環境レイシズム」に対抗する社会運動のなかで生まれた言葉
気候変動により被害を受ける人々の多くは最も過失が少ない人達であるということから、こう表現しています。
しかし、気候問題は専門家にまかせておけばいいというような考えになりがちであり、直接の被害者を無視した解決策によって混乱を生み、不平等が永続するリスクがある。
COP26のような国際会議だけでなく、日常的な会話も必要で、直接会話出来る人達がいるべきとしている。 ストーリーテーリングという方法で気候変動に沈黙する人々に介入し、言葉と語りを介してつながりを生む。
目に見える気候変動
色々な人のストーリーを聞き、アーカイブしていく。
気候変動の影響を受ける人々の多くが水を通した経験となっている。
十分な水が無いところは作物が育たず、火災が猛威を振るい、人々は喉の渇きを潤すことができない。一方、水が多すぎると破壊的な力となって家等が押し流され、人々の命が奪われる。
気候変動と水は深く絡み合っている。
気候変動の議論では海面が何メートル上昇したとか、大気中の二酸化炭素濃度がどうなったとかいう話は、人々の日常生活に何を意味するのか?
ストーリーテーリングはこの隔たりの架け橋になると思った。
確かに、一つの地域だけの事象を解決しようとすると、別の地域へ影響が出るということも考えられますよね。
気候変動の影響化にある人々の声と学術的な議論をキチンと結びつけるという内容は、本来あるべき事を実践していく。ということだと思いますし、全体を把握するということにも繋がるいいアクションですね。
このようなストーリーテーリングという考え方で、気候変動の最前線としていることは素晴らしいと思いました。
5.重大危機を乗り越える真のイノベーションの起こし方
「本当に大きな問題に取り組むためには、政府が学術界と産業界を動かすエンジンの役割を果たす必要がある」
重大な危機とは何だろうか?
コロナでも露呈したような、サプライチェーン、労働市場、社会的セーフティーネット、化学物質の不足、不十分なサイバーセキュリティー、非国家主体の悪意ある行為者、地政学的緊張等の危機はまだ発生する可能性、これらのリスクは世界の安全保証を脅かします。
危機が発生した場合、リソースの集約、研究から製造、流通にいたるまでのイノベーション…エコシステムを迅速に動員して被害を食い止める能力が必要と説いています。
イノベーションの起こし方とは?
パンデミックから学ぶグローバル・サプライチェーンの強化
効率性とコスト削減を目標にしたグローバル・サプライチェーンの多くは、危機の際に十分なレジリエンス(回復力)がないことが判明している。
改善方法として港湾の改善や国内備蓄の拡大、同盟国との協力、新たな供給源の確立、国内製造能力の強化支援などと、いっています。今、日本の対応は果たして十分なのでしょうか?
実際、中国は世界中から食糧の備蓄を相当量買い込んでいるというニュースもありましたよね。日本の食糧はほぼシーレーンに頼っていますから、それが分断されると、途端に食糧不足になります。
政府と企業が、もっと一緒になり対策を強化するべきポイントはもっとありそうですよね。方向性として認知して起きたいポイントではないでしょうか。
記事の後半では、人材の活用について言及しています。
イノベーターなくしてイノベーションはない。
人的資源に投資することが重要といっています。
最近日本の特許出願数や博士課程、論文引用数などが減少しているのは逆行しているように思います。
相互関連性の高い世界に備えた国家イノベーション政策は、最も緊急と考えられる危機に対処すること以上に多くの利益をもたらすでしょう。と締めています。
研究されたものが30年後社会に実装されていくということを考えると、本当に今がとても重要であるということなんですね。
6.脱炭素イノベーションに挑む気候テック・スタートアップ10+
ユニークなアプローチで脱炭素に挑む取り組みの紹介
  • ローカルカーボンキャピタル(米) 二酸化炭素の除去を手掛けるスタートアップ企業に特化したファンド、3億5000万ドル(約500億円)の立ち上げ。
  • ボストン・メタル(米) 二酸化炭素を排出しない鉄鋼メーカー。鉄鋼産業を変える第一歩となるかもしれないと期待されている。
  • ポリジュール(米) プラスチック電池、送電網向け蓄電の主役を狙う
  • サウレ・テクノロジー(ポーランド) オックスフォードPV(イギリス) マイクロクオンタ・セミコンダクター(中国) 安価で高効率なペロブスカイト太陽光電池の実用化を競う3社
  • チャーム・インダストリアル(米) バイオ油からの合成ガス 製鉄業界の排出を新手法で削減
  • エアルーム・カーボン・テクノロジーズ(米) 大気中の二酸化炭素を「鉱物」で取り除く異質ベンチャー
  • フェルボ(米) 地熱を利用したカーボンフリー電源は知れられていた再エネだが追い風が吹いている
  • ソリッド・パワー(米) 電気自動車の「もっと遠くへ」を実現可能にする全固体電池ベンチャー
  • カルビオ(フランス) 使い捨てプラスチックを「酸素」でリサイクル排出量を3割削減 不可能だった衣類や混合プラスチックも処理が可能に
  • ローシー・ソーラー(フランス) やさしくない太陽光パネルのゴミ問題「儲かるリサイクル」で解決へ 欧米ではリサイクル義務化という動きもあり、銀とシリコンを中心とし、収益の上がる回収を行う。
7.脱炭素化は日本の力を底上げする最後のチャンス
昨今の電力逼迫は脱炭素のせいだ!と主張する人がいますが、それは「電力自由化制度の問題」なのです。
問題なのは再生可能エネルギーを大量に導入しても安定供給出来る制度設計になっていなかったから。 むしろ、電力の安定供給と脱炭素は両立が可能。
2024年からは「容量市場」が導入される予定。容量市場とは4年後に発電出来る能力(供給量)を取引するという、将来必要な供給力をあらかじめ確保することにより安定供給を実現し、電力取引価格の安定化を目指す。
稼げない脱炭素化はやってはいけない。
電力の逼迫、ロシア問題があったからこそ、脱炭素を進めるべきだが、そもそもコストでしかない脱炭素はやるべきではない。キャッシュを生んで利益につながるような脱炭素や、優秀な人材を集めて企業の魅力を増すことが出来なければやってはいけない。稼げない脱炭素は社会コストを増すだけです。
では、稼げる脱炭素とは?
省エネを実践していない事業者であれば、省エネを進めればいい。重要なポイントは熱需要の転換だと指摘。
石炭やガスなどの熱源をヒートポンプに、化石燃料の消費量の削減や、熱源の分散化、アライメントも劇的に良くなる…。このような検討はほとんどされていない。プラントの見直しで相当な領域で化石燃料を転換することが可能。さらに断熱も大きな要素でほとんど手つかずの状態。
ボイラーの転換と断熱
輸送燃料の転換
この3つの脱炭素化、つまり電化フロンティアだと考えています。
「脱炭素は二酸化炭素の削減を促すもの」という概念を日本の改革を促す脱炭素化へ、意識を変えてエネルギー問題を捉えていく必要がありそうだ。
ここでいう最後のチャンスとはこの意識の変革であるということでしょうか。
あと個人的には遺伝子編集でイネの炭素回復能力を強化するプロジェクトがスタート
という内容も興味深かったです。
気候変動に関して「植物や微生物、農業は、問題の原因というより、実は解決策の1つになり得ます」と期待している。
まさに、土壌再生、改良というキーワードは重要となってくるのだと思います。
最近では獅子に水やりのタイミングによって遺伝子のONやOFFのコントロールが出来るようのなってきているそうなので、遺伝子操作というより、自然に遺伝子のスイッチをコントロールするという人にも安全な方法で色々可能となる未来もそんなに遠くないと感じます。
今回は、MITテクノロジーレビュー(日本語版)Vol.8の中から部分的に気になる項目と、個人的な感想を書きました。
時代が要請するカーボンニュートラル社会の実現へ、プロジェクト「Hundred million」PROJECT2030」にて未来へ良いバトンを渡すべく、仲間を随時募集しております!
時代が要請するカーボンニュートラル社会の実現へ
プロジェクト「Hundred million」PROJECT2030
一緒に活動したい!もっと情報を知りたい!という仲間も随時募集中です!
アンケート及び、hmp2030メンバーの参加もお待ちしております。
まだまだ、これから研究開発が必要な部分も多いですが、DeFi、メタバース、NFT、web3、地球環境再生、土壌改良、温室効果ガス吸収、不耕起栽培、小規模農家改革、カーボンクレジット創出活動などに少しでも興味を持たれましたら、これら実現のためみなさまの活動への参加お待ちしています。
また、ご質問やご意見随時承っております。
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