近年、企業が自主的に自社の温室効果ガスの排出削減目標としてネットゼロ目標を設定する企業が増えています。政府の規制の遵守のためではなく、企業の自主的な取組みに利用されるクレジットは、ボランタリーカーボンクレジットあるいはボランタリークレジットなどと呼ばれています。
このような民間企業の自主的な温暖化対策へのクレジットの活用は、政府による温暖化対策の実施が始まる2000年代初めから、行われてきました。日本国内においてもこのような自主的な取組みにおいて、クレジットを利用する企業が増えていることが報告されています。
本日は、世界的に利用されているボランタリークレジットのご紹介です。
INDEX
1)ボランタリークレジットとは
2)主なボランタリークレジット紹介
・Verified Carbon Standard(VCS)
・VCSを活用している企業紹介
・Gold Standard(GS)
・GSを活用している企業紹介
3)まとめ
1)ボランタリークレジットとは
ボランタリークレジットとは、日本では、まだあまり馴染みが少ないですが、世界で広く使用されているクレジットです。
政府が主導しているクレジットとは違い、NGOや企業、団体、個人などの民間が主導となったプロジェクトから発行されるクレジットであり、温室効果ガス(GHG)の削減または吸収量として扱うことができることから近年注目を浴びています。こちらの記事も是非参考になさってください(あなどれない民間のカーボンクレジット)
ボランタリークレジットは、公的なクレジットと比べて迅速に発行できる強みがあります。政策的な制約がなく、使い勝手が良いため、GHG排出量削減の取り組みの上でどうしても削減できない部分(残余排出量)を相殺するために、利用している企業が増加しています。
ボランタリークレジット市場は世界的に成長し続けています。世界銀行のリポート「炭素価格の現状とトレンド2022」には、21年11月に同市場の総額が10億米ドルを超えたこと、さらには21年の同市場のクレジット取引量が20年よりも9割増加したことが報告されています。
2)主なボランタリークレジット紹介
◆Verified Carbon Standard(VCS)
2020年の発行数(MtCOze) 140.37
2021年の発行数(MtCOze) 295.08
※ちなみに2021年Jクレジットの発行数は、0.93
現在、世界で最も取引量が多いのは、Verified Carbon Standard(VSC)です。VCSとは、温室効果ガス排出量を削減するプロジェクトにクレジットを発行するためのカーボンクレジットメカニズムです。VCSは国際的なカーボンオフセット基準管理団体米Verraによって開発・管理されており、世界中の様々なプロジェクトが認証を受けています。
最大の特徴はその創出方法で、現在認められているもので、「エネルギー」「工業プロセス」「建設」「輸送」「廃棄物」「工業」「農業」「森林」「草地」「湿地」「家畜」「家畜と糞尿」の11種類に加え、独自の方法論での環境価値の創出が運営団体に提案ができるという点です。
認証を受けたプロジェクトにはVCS事務局からクレジットが発行され、発行されたクレジットはVCS Program Registryで管理されます。
VCSを活用している企業紹介
Volkswagen:
2050年までのカーボンニュートラル達成を公表しています。
残余排出量について、VCSで創出されたインドネシアの森林由来のクレジットを活用しています。
Occidental Petroleum:
石油の抽出や燃焼を含むライフサイクル全体から予想される温室効果ガス排出量をVCSでオフセットし、
「Carbon-Neutral Oil」として需要家に供給を開始しました。
◆Gold Standard(GS)
2020年の発行数(MtCOze) 34.35
2021年の発行数(MtCOze) 43.79
Gold Standard は、スイスを拠点にしている国際環境 NGO で、世界中の温室効果ガスの削減につながるプロジェクトを認証し、カーボンオフセットに利用できるクレジットを提供しています。持続可能な開発に貢献することを支援しており、買い手に対してはその「質」を保証しています。そのため、プロジェクトのスコープ(事業領域)を限定しているのが特徴です。
GSを活用している企業紹介
東京放送(TBS):
2007年、GS認証を受けたニュージーランドの風力発電プロジェクトから生成されたクレジットを購入。2007年から放送センターでの電力をグリーン電力で賄い始めている他、SDGsの達成も支援しています。
OKIグループ:
ライフサイクルCO2排出量を2030年までに40%削減、2050年までには2050年度80%削減(どちらも2013年度比)を目指しています。2009年、ケニヤにおける高効率調理かまどプロジェクトから生成され、GS認証を受けたクレジットを購入しています。
3)まとめ
現在、企業の自主的な取り組みとしてのカーボンニュートラルへ向けたボランタリークレジットの活用がされるようになってきました。皆さんも御存知の通り、排出量の削減のみでネットゼロを実現することはほぼ不可能と言っても過言では有りません。今回ご紹介させていただいたVCS、GSには世界の多岐にわたったクレジットが用意されています。是非、あなたの会社の価値へと繋がるクレジットを活用してみてはいかがでしょうか?もちろん、まずは可能な限りの温室効果ガスの削減から。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
出典:
Gold Standard(GS)
Verified Carbon Standard(VCS)
出典:世界銀行の「State andTends of Carbon Pricing」