はじめに
近年、地球温暖化対策として、企業のカーボンニュートラルへの取り組みが注目されています。その中でも、SBT(Science Based Targets)認定は、科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標を設定している企業として、国際的に認められるものです。SBT認定を取得することで、企業は自社の環境への取り組みを積極的にアピールし、企業価値を高めることができます。
しかし、SBT認定を取得しただけでは、その効果を最大限に活かすことはできません。認定取得後、適切な情報開示を行うことで、更なる企業価値向上、ブランドイメージ向上、そして社会全体のカーボンニュートラルへの機運を高めることに繋がります。
本記事では、SBT認定取得後の効果的な情報開示について、最新のデータや事例を交えながら詳しく解説していきます。
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- SBT認定取得は、企業価値向上、ブランドイメージ向上、従業員モチベーション向上、新規顧客獲得、競争優位性確保に繋がる。
- SBT認定取得情報は、Webサイト、SNS、プレスリリースで開示し、認定ロゴの掲載、削減目標の明確化、取り組み内容と進捗状況の報告を行う。
- 具体的な中小企業の事例を紹介。
- 情報開示においては、グリーンウォッシュを避けるために、根拠に基づいた情報、透明性、第三者認証の検討が重要である。
- SBT認定取得後の積極的な情報開示は、企業価値向上とカーボンニュートラル社会への貢献につながるため、推奨される。
SBT(Science Based Targets)とは?
SBTとは、Science Based Targetsの略で、科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標のことです。パリ協定で合意された「世界の平均気温上昇を産業革命前比で2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」という目標を達成するために、企業が設定する排出削減目標を指します。Science Based Targets initiative(SBTi)が認定する、科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標のことです。SBTiは、CDP、国連グローバル・コンパクト、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)の4団体によって設立された国際的なイニシアチブです。
SBT認定を取得することで、企業は以下のような効果を期待できます。
- 企業価値の向上
環境への意識の高まりから、投資家や顧客は企業のESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みを重視するようになっています。SBT認定は、企業の持続可能性を評価する上で重要な指標となり、企業価値向上に貢献します。 - ブランドイメージの向上
SBT認定を取得することで、環境に配慮した企業として、社会からの信頼を得ることができ、ブランドイメージ向上に繋がります。 - 従業員のモチベーション向上
従業員は、自社が社会貢献に積極的に取り組む企業であることに誇りを持ち、モチベーション向上に繋がります。 - 新規顧客の獲得
環境意識の高い顧客は、SBT認定を取得している企業の商品やサービスを選択する傾向があります。 - 競争優位性の確保
SBT認定は、競合他社との差別化を図り、競争優位性を確保する上で有効な手段となります。
これらの効果を最大化するためには、SBT認定取得情報を積極的に開示し、社会に発信していくことが重要です。
SBT認定取得情報の開示方法:効果的にアピールするには?
SBT認定取得法人は、自社運営のWebサイトなどの媒体にSBT認定取得情報を掲載すること、また、年に一度、目標に対する進捗情報を掲載することで報告義務が課せられています。ここでは情報開示の効果的な方法や、重要なポイントなどをお伝えします。
情報開示の手段
- コーポレートサイトなど自社で運営しているWebサイト
- サステナブルレポート
- SNSによる配信
- プレスリリース
情報開示における重要なポイント
- SBT認定ロゴの掲載
SBTi(Science Based Targets initiative)より提供されるSBT認定ロゴを使用しましょう。その際は、SBTiより発行されているコミュニケーションガイドに記載されているガイドラインを厳守して使用して下さい。 - 削減目標の明確化
SBT認定で承認された削減目標のベースとなる基準年、目標設定年、削減目標数値などを正しく掲載しましょう。 - 取り組み内容の紹介
SBT達成に向けた具体的な取り組み内容を、写真や動画などを活用してわかりやすく紹介しましょう。 - 進捗状況の報告
削減目標に対する進捗状況を年に一度、定期的に公開することが必要です。 - ストーリー性を持たせる
SBT取得に至った背景や、企業のビジョン、今後の展望などをストーリー性を持たせて伝えることで、より多くの人の共感を呼ぶことができます。
これらの情報をわかりやすく整理し、見やすいレイアウトでWebサイトに掲載することで、SBT認定取得の効果を最大限にアピールすることができます。また、情報を効果的に組み合わせ、それぞれの媒体の特徴を活かした情報発信を行うことで、SBT認定取得の効果を最大限にアピールすることができます。
SBT認定取得情報開示の具体例:他社の事例から学ぶ効果的なPR方法
ここでは、SBT認定取得情報を効果的に開示している企業の事例をいくつかご紹介します。
TOYO TIRE株式会社
- 事業内容:タイヤの製造・販売
- SBT認定取得のPR方法
プレスリリースタイトル
「TOYO TIREの温室効果ガス排出削減目標がSBT認定を取得」
内容:2024年12月9日にSBTイニシアチブからSBT認定を取得したことを発表。Scope1、Scope2に加え、Scope3のカテゴリ1~15のすべてを含むバリューチェーン全体での排出量削減目標が、産業革命前からの気温上昇を1.5℃に抑えるという目標と整合していることが認められた。コーポレートサイト
サステナビリティページの「環境への取り組み」セクションに、SBT認定取得について記載。
SBT取得の背景、目標達成に向けた具体的な取り組み(再生可能エネルギーの利用拡大、省エネルギー化、サプライチェーン全体での排出量削減など)を紹介。
日本メディカルライン株式会社
- 事業内容:医療機器の製造・販売
- SBT認定取得のPR方法
コーポレートサイト
コーポレートサイトに「SBT認定を取得」という dedicated page を作成し、詳細情報を掲載。
内容:SBT認定取得の意義、Scope1、Scope2、Scope3の排出量削減目標、目標達成に向けた具体的な取り組み(省エネルギー化、再生可能エネルギー導入、従業員の意識改革など)を詳細に説明。具体的な数値目標や達成に向けたロードマップを掲載し、透明性を確保。
ミネベアミツミ株式会社
- 事業内容:ベアリング、モーター、センサーなどの製造・販売
- SBT認定取得のPR方法
ニュースリリース
2024年12月9日に「ミネベアミツミグループの温室効果ガス排出削減目標がSBT認定を取得」というタイトルでニュースリリースを発表。
内容:SBTイニシアチブからSBT認定を取得したことを発表。2030年度までにScope1とScope2の排出量を2019年度比で46%削減、2050年度までにバリューチェーン全体でネットゼロを達成するという目標が、パリ協定の目標と整合していることが認められた。コーポレートサイト
コーポレートサイトのサステナビリティページにSBT認定取得について掲載。SBT取得の背景、目標達成に向けた具体的な取り組み(省エネルギー活動の推進、再生可能エネルギーの利用拡大、サプライヤーとの連携強化など)を紹介。
株式会社LIXIL
- 事業内容:住宅設備機器・建材の製造・販売
- SBT認定取得のPR方法
サステナビリティレポート
2023年発行のサステナビリティレポートにてSBT認定取得について詳細に説明。SBT取得に至るまでの経緯、Scope1、Scope2、Scope3の排出量削減目標、目標達成に向けた具体的な取り組み(水資源の効率的な利用、環境負荷の少ない製品開発、サプライチェーン全体での排出量削減など)を紹介。データや図表を効果的に活用し、わかりやすく説明。コーポレートサイト
コーポレートサイトのニュースリリースにSBT認定取得について掲載。記事内で、SBT取得の意義、目標達成に向けた意気込みなどを発信。
花王株式会社
- 事業内容:化粧品、スキンケア用品、ヘアケア用品、トイレタリー製品等の製造・販売
- SBT認定取得のPR方法
コーポレートサイト
サステナビリティページの「ESG経営」セクションにて、SBT認定取得を含むESGへの取り組みについて紹介。「花王のESG戦略」の中で、SBT認定取得を重要な要素として位置づけ、気候変動への対応に対する姿勢を表明。SBT取得の背景、目標達成に向けた具体的な取り組み(再生可能エネルギーの利用拡大、省エネルギー化、製品のライフサイクル全体での環境負荷低減など)を紹介。統合レポート
統合レポート内で、SBT認定取得と、それに基づくCO2排出量削減目標、達成に向けた取り組みを報告。定量的なデータに基づいた進捗状況を報告し、透明性を確保。今後の課題や取り組みの方向性についても言及。
これらの事例は、中小企業であってもSBT認定取得と効果的な情報開示によって、企業価値向上、ブランドイメージ向上、地域社会への貢献など、様々なメリットを享受できることを示しています。自社の規模や業種に合わせた情報開示戦略を立案し、SBT認定取得の効果を最大限に活かしましょう。
SBT認定取得後の情報開示:グリーンウォッシュにならないための注意点
SBT認定取得は、企業の環境への取り組みを社会に示す重要なステップです。以下に、情報開示の際に留意すべきポイントを詳しく解説します。
- 根拠のない情報発信は厳禁
SBT達成に向けた具体的な取り組みやその成果については、必ず客観的なデータや証拠に基づいた情報発信を心掛けましょう。曖昧な表現や誇張、裏付けのない主張は避け、具体的な数値や実績を示すことが重要です。第三者機関による検証や認証を取得することで、情報発信の信頼性を高めることも効果的です。 - 誇張や誤解を招く表現は避ける
SBT認定取得の効果や自社の環境への取り組みについて、過度な誇張や誤解を招く表現は避けましょう。事実を正確に伝えることを重視し、達成可能な目標や具体的な行動計画を明確に示すことが重要です。また、専門用語を使用する場合は、その意味をわかりやすく説明し、誤解が生じないように配慮しましょう。 - 透明性を確保し、進捗状況を定期的に公開
削減目標に対する進捗状況や、直面している課題などを包み隠さず開示することで、透明性を確保しましょう。成功事例だけでなく、失敗や困難な状況についても正直に公表することで、ステークホルダーからの信頼を得ることができます。また、定期的に進捗状況を更新し、目標達成に向けた継続的な取り組みをアピールすることが重要です。 - 第三者認証の取得を検討
SBT認定取得情報の発信内容について、第三者機関による認証を取得することで、情報発信の信頼性を高めることができます。第三者機関による客観的な評価は、企業の環境への取り組みが本物であることを裏付けるものであり、ステークホルダーからの信頼獲得に繋がります。 - 環境への取り組み全体との整合性を保つ
SBT認定取得は、企業の環境への取り組み全体の一部であることを認識し、その他の環境活動との整合性を保つことが重要です。環境に関する情報発信がSBTに偏りすぎると、他の重要な取り組みが見過ごされてしまう可能性があります。総合的な環境戦略に基づいた情報発信を心掛け、企業全体の環境への取り組みを包括的にアピールしましょう。
まとめ:積極的な情報開示は「カーボンニュートラルへの啓蒙活動」
SBT認定取得後の情報開示は、企業価値向上、ブランドイメージ向上、従業員のモチベーション向上、新規顧客の獲得、競争優位性の確保など、多くのメリットをもたらします。Webサイトやサステナビリティレポートなどを活用し、SBT認定ロゴの掲載、削減目標の明確化、取り組み内容の紹介、進捗状況の報告などを行い、効果的に情報を発信しましょう。また、情報開示の際には、グリーンウォッシュと捉えられないよう、根拠のない情報発信を避け、透明性を確保することが重要です。
SBT認定取得を、単なる目標達成で終わらせるのではなく、社会全体のカーボンニュートラル実現に向けた第一歩として捉え、積極的に情報開示を行い、企業価値向上に繋げていきましょう。また、SBT認定企業による積極的なPR活動は、他の企業のSBTへの関心を高め、新規認定企業数の増加を促進し、社会全体のカーボンニュートラル達成を加速させる事にも繋がります。企業価値向上とカーボンニュートラル啓蒙活動の一環として、SBT認定取得後の積極的な情報開示をおすすめいたします。
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