不耕起栽培は世界を救うか

   by Akihiko Sato        
不耕起栽培は世界を救うか
Kabbara Timesの以前の記事、COP26でわかったこと では、地球環境再生、不耕起栽培、小規模農家改革の可能性を、Kabbaraが臨んでいるネガティブエミッション技術 では不耕起栽培のネガティブエミッション技術の重要性について触れました。
今回は、もう少しこのあたりを掘り下げてみたいと思います。
まず、地球温暖化の原因や影響は人間活動におる温室効果ガスの増加が極めて高い可能性があります。 温室効果ガスとは二酸化炭素、メタン、一酸化炭素、フロン類等があります。
人為起源の温室効果ガスの総排出量に占めるガスの種類別の割合
(2010年の二酸化炭素換算量での数値: IPCC第5次評価報告書より作図)
上記のグラフでも76%を占め、地球温暖化に及ぼす影響がもっとも大きな温室効果ガスは二酸化炭素です。
化石燃料由来とは、石炭や石油の消費、セメントの生産などで65.2% 森林減少や土地利用変化とは、大気中の二酸化炭素の吸収源である森林が減少で10.8%
人為起源による影響は人がよい影響によって解決していくことが重要ということがわかります。
では、人為起源による地球温暖化に対し、わたしたちはどんなことを意識して生活していけばよいのでしょうか。
それを知るためには二酸化炭素はどう地球で吸収されているのか、どの様なプロセスで循環(炭素循環)しているのか?を大気、海洋、陸域の三つの領域から見てみましょう。
地球上の炭素は、大気中のCO2をはじめとした、様々な場所に、そして、様々な状態で存在しています。例えば、陸上の生物体や土壌中の有機物、海水や河川・湖沼水や底質に溶けているCO2や有機物、石灰質の生物体やその遺骸、岩石、及び化石燃料などが挙げられます。そして炭素が分布する大気、陸上、海洋、地圏をそれぞれの貯蔵庫とみなし、炭素がこれらの貯蔵庫間を交換・移動する循環を「炭素循環」と呼びます

上図では、大気、陸、海における炭素保存量を赤字で示しています。また、矢印及び黒数字は、年間の炭素移動及びその量を示しています。

大気          7,500億トン
植物体         5,500億トン
土壌・有機堆積物   1兆5,000億トン
ここで一番大きな数字が 1兆5,000億トンの土壌・有機堆積物が実はとても大きなポテンシャルがあるということがわかります。
土壌・有機堆積物というキーワードが見えてきました。
温暖化が進むということを温室効果ガスの発生と吸収のバランスが崩れている状態とするならば、バランスが崩れた状態を修正していくことが鍵となります。その延長上に私達の生活も関連してきていることをイメージできるとバランスが取れている状態を認識し、より効果的に参加することも出来るようになるのではないでしょうか。
では、その影響やバランスを見てみましょう。
上記の図にありますように、大気中に排出された二酸化炭素は海洋や陸上の吸収源に吸収されますが、残りは大気中にとどまり蓄積されていき、温室効果を増大させ、地球温暖化を引き起こします
大気に貯蔵出来る二酸化炭素の容量にも限界があるように、海洋にも限界があります。
海洋は、排出された人為起源の二酸化炭素の約30%を吸収し海洋のCO2が増えることによってpHが低下し、海洋酸性化は進行していきます。
水は温度が低いほど二酸化炭素が溶け込みますが、海洋の温度があがることで、溶け込む量は少なくなります。海洋は温度上昇により過飽和状態になります。
海水はカルシウムイオン(Ca2+)が含まれており、炭酸イオン(CO32−)があると水に溶けにくくなり、個体である炭酸カルシウム(CaCO3)を生成します。海の生物は炭酸カルシウムの結晶体で殻や骨格を作りますが、pHが低くなると、生物が炭酸カルシウムを作れなくなります。現在の海は炭酸カルシウムにとって過飽和状態が近づいて来ているのです。
例えばサンゴ礁の二酸化炭素吸収ですが、サンゴが骨格を造る(石灰化する)ことにより、温水中の重炭酸イオンを使うとその分が大気から海水中に溶け込んでいくことになります。このメカニズムを利用して、大気中の二酸化炭素が吸収されますが、この骨格を造る行為が出来なくなると、二酸化炭素の吸収も出来なくなっしまいます。
つまり温暖化により海洋温度が上がることで二酸化炭素を吸収するであろう海洋生物が増えなくなってしまうことで、海洋の二酸化炭素吸収のポテンシャルも低下してしまいます。
海洋は大気や陸上の対策が先行して結果を出していく必要があるということになるのではないでしょうか。
現在、大気から直接二酸化炭素を吸収する技術も進化しており期待するところでもありますが、ポテンシャルや現状で展開できる方法として土壌・有機堆積物へのアプローチが注目されてきています。
欧米で進む農地の炭素貯留
4/1000(フォーパーミル)イニシアティブが注目されはじめています。
「フォーパーミル」とは、1000分の4(4‰)のことで、「もしも全世界の土壌中に存在する炭素の量を毎年4/1000ずつ増やすことができたら、大気中のCO2の増加量をゼロに抑えることができる」という計算に基づき、土壌炭素を増やす活動を推進する国際的取組みになります。
では炭素の量をどう増やしていけるのか?
そこで注目されてきているのが、土壌の炭素ストックを高める農地の管理方法です。
上記の「農地の管理方法による土壌炭素の長期貯留量の違いから地球温暖化の影響が一番大きいのは一番下の有機質土壌の管理の仕方の改善が、36.37-73.33トン(ha/年)となっています。
やはり、鍵は土壌の管理といえるのではないでしょうか。 土壌にいかに炭素を蓄積することができるのか?また、土壌に炭素を貯留することが出来るのか?
土壌に落下ないし混和された有機物の多くの部分は微生物によって分解されます。分解されにくい有機物は微生物によって難分解し巨大な分子の腐植物質となります。腐植物質は半減期が1000年を超えるといいます。
また,温度が低く水を張ってため続けた土壌では酸素が乏しいために,土壌微生物による有機物分解が抑制されて,ほぼ原形を保ったまま、何千年も何万年も温存されるといいます。このように炭素が有機物として何百年,何千年にもわたって土壌に保存され,その量を増やすことができれば,現在上昇しつつある大気中の二酸化炭素濃度を下げるのに貢献できると期待されています。
このように長期にわたって炭素を有機物として土壌に貯留することを土壌による炭素のシーケストレーション(長期貯留あるいは長寿命固定など)呼ばれます。
ここで キーワードとして出てくるのが腐植物質(フルボ酸、フミン酸)です。
いかに土壌にこの腐植物質を増やすことが出来れば、土壌は温室効果ガスを吸収するキラーアイテムとなるのではないでしょうか。
全世界の土壌中に存在する炭素の量を毎年4%増やすことを目標として不耕起栽培によって腐植物質を増やし続ける活動をしていこうと準備しております。
また、土壌に必要な微生物は現代農法の影響によって著しく低下している現状もあることから、なるべく農薬を使用しないような農法も同時に進めていくことも重要です。
現在、Kabbaraではこの不耕起栽培と無農薬栽培の方法よってどれだけ温室効果ガスを吸収できるか?など研究と実証を始めています。
「不耕起栽培は世界を救うか」のタイトル通り、これが当たり前という基準になることでもしかしたら救うことはできるかもしれません。
まずは、ラオスの土壌や森林管理の現状調査からスタートし、どのくらいポテンシャルがる地域かと事業によってどれほど貢献できるか?を算出し評価しながら、安心、安全でおいしい収穫でありながら、地球環境にもやさしいものを届けられるようチャレンジ中です。
是非、良い環境で作られているラオスのコーヒーも味わってみてください。
Kabbaraはまずはラオスから小規模農家の可能性を世界へ示し、アジアを中心に誇れる未来の可能性と実績を積み重ねてチャレンジしています。
まだまだ、これから研究開発が必要な部分も多いですが、地球環境再生、不耕起栽培、小規模農家改革などに少しでも興味を持たれましたら、実現のためみなさまの活動へのご参加、お待ちしています。
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