オーガニックと日本人

   by Akihiko Sato        
オーガニックと日本人
3月10日、今日は肉不使用「ゼロミートの日」
【ゼロ(0)ミー(3)ト(10)】の語呂合わせで大塚食品株式会社が制定した日です。主に大豆ミートで作られた次世代のベースフードで「地球の未来のために何が出来るのか?」を子供たちが考えるきっかけを目的とした試食会なども行っており、食料・環境問題からSDGsも意識した活動を行っているとのこと。
肉を食べるということは、水を沢山消費している。
健康的で良質な食事に切り替えると、個人の水の使用量が最大55%も減少し、肉の摂取量を減らすだけでも10%は減るとのことです。(欧州委員会共同研究センター)
今回は肉がもたらす影響と食料危機、オーガニックの役割というテーマです。
▲A cattle farm in Mato Grosso, Brazil. 60% of all mammals on Earth are livestock. Photograph: Daniel Beltra/Greenpeace
食卓から肉が消えてしまうことを警告する「食料供給危機」
牛や豚など哺乳類の家畜は約60億頭飼育されており、この60億頭の家畜の飼育には、飼料として主にトウモロコシが使われています。トウモロコシの生産量は穀物の生産量(2021年予測は約27億トン)の約35%で、その内の約60%にあたる5.67億トンが飼料用でした。
ちなみに牛肉1キログラムを生産するのに必要なトウモロコシは11キログラムになります。
トウモロコシを栽培する大規模農場「センターピポット」半径1Kmで毎分1万リットルの地下水を汲み上げるため、このままではこの地下水はあと10年程度で無くなると言われています。
1キログラムのトウモロコシを生産するには、灌漑用水として1,800 リットルの水が必要とされています。「牛肉1キログラムに必要な水は19,800リットル」であり、仮に牛一頭が800キログラムとした場合、おおよそ、1,584万リットル、25mプールに換算すると約30杯分の灌漑用水が使われ続けているということになります。 アメリカではすでに地下水が枯渇しはじめており、今のようなお肉を当たり前のように食べられなくなるといわれています。
お肉を調べると、穀物、飼料というキーワードが出てくる。
穀物や飼料などの農業活動というのは思っている以上に地球に負荷をかけているという事につながってきます。 では、どのくらい地球に負荷をかけているのか?
プラネタリー・ヘルス・ダイエットというガイドライン
The Planetary Health Diet(プラネタリー・ヘルス・ダイエット)という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
科学的根拠に基づき、食事と食料システムのあるべき形と解決方法を全人類に向けて提示した世界初のガイドラインです。 肉、魚、卵の消費を抑えるほか、砂糖や精製穀物、でんぷんを大幅に削減した食生活が推奨されており、具体的な食事内容や数値目標を示したことで、個人の健康維持だけでなく、サステナブルな食料システムを推進する世界の実現に向けた指針です。
これによりますと、1日に食べられるお肉の量はなんと14g。
これが、2050年になっても、人と地球が健康を保っていられる持続可能な食事内容ということらしいです。この食生活を選択すれば、世界で年間1100万人以上の人たちが、食生活に関連した病気で命を落とさずに済む。
1日にお肉14gとかって、もっと食べたいですよね…
実際、どうなってしまうのでしょうか。
ハッキリしていることは、あと10年でアメリカの主要な大規模農園の地下水が枯渇するという事実。
この対策はいまから考えていたほうが良さそうです。
プラネタリー・ヘルス・ダイエットでの対策とは
まず、生産システムにおいて、配慮すべき項目は7種類となっています。
  • 温室効果ガス排出
  • 土地の開墾
  • 水の使用
  • 窒素肥料の使用
  • リン施用
  • 生物多様性
  • 食品廃棄・ロスの問題
上記7点に特に配慮した生産方法を取り入れる必要があるといっています。
これは「関わる命すべてが幸せである仕組み」として知られるドイツのオーガニックそのものの考え方に通ずるものがあると気付きました。また、不耕起による無農薬栽培も当てはまるかもしれません。
ドイツは世界でも早くからオーガニックに着目しているオーガニック大国で、自然を尊重し、愛する心が、そのまま自然本来のあり方を大切にする考え方があり、昔から森に親しみ、自然と共存してきた仕組みにはヒントが沢山ありそうです。
日本はオーガニックと聞いた時に「関わる命すべてが幸せである仕組み」という意味の価値観の共有はあまりされていないように思います。
どこか「意識高い人のもの」というようなイメージも一因になっているからかもしれません。
本来は国民全員が「関わる命すべてが幸せである仕組み」の共感・共有と実践が必要です。
しかし、これには政府も巻き込まないと難しいことだと思います。
まずは民間から共感・共有の拡大をしていくことで、政府も無視できないものにしていく行動が重要と感じます。
最近ではオーガニック(有機)を謳う商品や、有機野菜を扱うレストランを目にする事も多くなってきたように思いますが、ドイツと比較すると価値観の共有という意味では非常に遅れをとっているように感じます。
欧米ではスーパーなどでもオーガニックを必ず扱っており、内容もグルテン有り無しや、ラクトースフリー(乳糖不耐性)、ビーガン、ファットフリー、シュガーフリーを分かりやすく表示されているお店が多いですが、日本ではそのような売り場表示をされているお店はまだまだ少ないのではないでしょうか。
ドイツでのオーガニックの基準は世界でも最も厳しいといわれています。 Bioの審査基準は農薬や化学肥料などいっさい使用せず、化学調味料、香料、着色料などの不使用、動物はBIOの肥料や餌で育てられた遺伝子組み換え原料の使用は5%以下という内容です。
各認証団体の項目をみてみましょう。
動物にストレスを与えない環境だったり添加物、遺伝子食品の制限数は厳しいものになっていますね。
地球環境や人に対してしっかりと考えているからこそ基準の厳しさが成り立っていて、基準をクリアしたマークが付いているということは、安心と信頼となっているのかもしれません。
日本でオーガニック認証にあたるのは有機JASですが、有機JASを取得している農地は全体の0.2%。JASの認証は取得していないけれど農薬も化学肥料も使っていない、という農地を合わせると0.5%になります。 ちなみに、オーストリアでは25.3%だそうです。もう少し日本もここは伸ばして行きたいところ。
フランスでは公共調達食は20%以上を有機にしています。学校給食や病院給食、刑務所の食事を含めたものであり2018年に法律で義務化されています。政府が促進しているんですね。 その結果、慣行農法からの移行や新規に就農を目指す方も、学校給食に納められるなら、安定した有機農家として地域も応援してくれる。新しくオーガニックのパン屋や、食品店が出来るなど連鎖して広がっていっているそうです。
もちろん、慣行農法でしか作ることが出来ないものもありますので、すべてを有機にしていくということではなく、選択が出来る状態にするためバランスをしっかりとって政策を実行しているということですね。
オーガニックな日常への変革は「知ること」、「学ぶこと」、「伝えること」
「知る」
オーガニックのものはやはり値段が高いから、購入するのをためらうという側面もあると思います。
オーガニックではない商品は、なぜ安いのか?安さには厳密なコスト計算がされており改良を重ねて進化してきました。
オーガニックは慣行農法から比べると非効率なことも出てきますから価格差は必ず出てしまいます。
この差を「知る」ことで、自分にあったオーガニックの仕組みの一員となるよう頑張っていけるかもしれません。
    本来、価格には
  • 健康コスト
  • 環境コスト
  • 社会コスト
  • 次世代コスト
が加算されています。
安いということはどこかのコストを努力して削っているということになります。
先ほどの基準をみると見えてきますね。
「学ぶ」
慣行農法では有害化学物質の混入・残留を避けることは難しい。
有害化学物質の混入・残留は研究結果がある程度出ているものがあります。
次のようなものがあります。
  • 生殖器異常、不妊、成長異常、死産、先天奇形
  • がん
  • アレルギー、アトピー、化学物質過敏症、免疫疾患
  • 糖尿病、肥満
  • 甲状腺異常、代謝・内分泌異常
  • 脳障害、発達障害、精神神経障害
もちろん、人によって症状は違うと思います。しかし、オーガニックを選択する人達は事前にこのような症状を予防しているという認識をもっています。
長い年月での自己投資として考えられることで、コスト計算の幅が大きくなったり小さくなったりします。
オーガニック食品でガンのリスクが減少か
フランスの研究では、オーガニック食品を最も頻繁に食べる人たちは、リンパ腫の罹患が76%少なく、非ホジキンリンパ腫の罹患は86%少なく、閉経後乳がんの罹患も34%少なかった。

国際がん研究機関は、農業で一般的に使われる2つの殺虫剤、マラチオンとダイアジノン、および除草剤のグリホサートを、発がん物質の可能性があるものとして分類し、この3つの薬剤を非ホジキンリンパ腫とも結びつけている。

オーガニック食品が乳がんのリスクを減らす理由の1つとして考えられるのは、多数の殺虫剤がエストロゲンの作用を模倣する内分泌かく乱物質で、ホルモンは乳がんの罹患と因果関係があるからだ。

オーガニック食品でがんのリスクは減るかフランスで行われた大規模調査

上記の調査はフランスで6万8946人のボランティアが参加した大規模な調査。
商品を手にした時、コストを考えていちいちその場で計算したりは流石にしないのではないか?と思いますが、日頃から知って、学びが出来ていたら、その時自分が購入するべき商品として、自然と必要なものに手が伸びるのではないでしょうか。
日本でオーガニックや不耕起栽培を広めて当たり前にしていくことは難しいことなのでしょうか?
先日、情報収集していると、こんな記事にたどりつきました。
「苦闘を超えて活躍するパラグアイの日系人」
戦前、1936年から始まる移民化計画でパラグアイの地を踏み出した日本人は今は1万人が居住しています。ほとんどは農業を営んでおり、野菜を持ち込んだのは日本人で原野を開拓し、今ではパラグアイが輸出する野菜の20%以上が日系人が生産しているそうです。しかし昔は欧米からの教えこまれた大規模機械化農業とともに土壌流出、地力の減衰、集中豪雨による土壌の大量流亡など深刻な状態であったが、不耕起栽培を行い日系作農家に欠かせない農業技術はパラグアイ全土へ広がり米国からも視察がくるなど世界的に注目されたそうだ。現在のパラグアイでも不耕起栽培は80%以上で野菜の価格低迷での苦境から逃れることができた。日系人はパラグアイの人口の0.12%に過ぎないが、大きな貢献をしている。輸出品目別では世界で4位にランクされている。不耕起栽培は「農業革命」といえるほどパラグアイの振興に大きな役割を果たしています。
パラグアイへ移住した日本人が優秀であったということもあると思いますが、日本人が出来ていたことは今でも出来ることなのではないでしょうか。
とても勇気を頂きました。先人達の教えに感謝です。
「伝える」
口コミで一番信頼できる情報は友人です。その次がインフルエンサーと言われています。自分が知って学んだことを友人とシェアすることを続けることで、確実に広めていくことに繋がります。
自分が体験した真実が伝わっていく。時代もそれが可能な状態になってきているのではないでしょうか。
Kabbaraでは不耕起栽培の可能性と補助可能な技術の組み合わせの可能性も考察しています。
不耕起栽培では課題も多いのですが課題が解決できたらもっと不耕起栽培×オーガニックというかけ算は広がりその恩恵を求める人に届けて行きたい。また、さらなる革新技術で世界をポジティブに驚かしていきたいと思っています。
一緒に活動したい!という仲間も随時募集中です!
まだまだ、これから研究開発が必要な部分も多いですが、DeFi、メタバース、NFT、web3、地球環境再生、土壌改良、温室効果ガス吸収、不耕起栽培、小規模農家改革、カーボンクレジット創出活動などに少しでも興味を持たれましたら、これら実現のためみなさまの活動へのご参加、お待ちしています。
また、ご質問やご意見随時承っております。
下記の【お問い合わせ】よりお願い致します。

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