アグリテックがアツい!年間1兆円を集める農業スタートアップ

   by Takumi Hisamatsu        
アグリテックがアツい!年間1兆円を集める農業スタートアップ
農業のAgriculture(アグリカルチャー)と技術のTechnology(テクノロジー)を組み合わせた造語、AgriTech(アグリテック)
今、このアグリテック業界がアツいことをご存知でしょうか。
ここ数年、アグリテックの市場は成長を続け、2027年には411億7250万米ドル(約4.8兆円)の市場規模になると予測されており、数百億円規模の資金調達に成功する農業スタートアップ企業が増えてきています。
今回はそんなアグリテック業界の農業スタートアップの事例と、なぜアグリテックがここまで注目されているのか?についてお話します。

業界への投資額は年間1兆円超え

IotやAI、ドローンやロボットなどの研究が進むにつれ、それらを活用した農業スタートアップ企業が増えてきています。それに伴い資金調達額も年を追うごとに伸びてきており、全体で年間1兆円規模の投資がされるようになっています。
大きな投資事例をあげると、種子に微生物処理を行うインディゴ・アグリカルチャー(Indigo Agriculture)や、垂直型栽培の植物工場を開発運営するプレンティ(Plenty)は、2017年にそれぞれ約2億米ドル(約220億円)の資金調達に成功しています。
前者のインディゴ・アグリカルチャーは日本の住友商事と協業、プレンティは孫正義氏のソフトバンク・ビジョン・ファンドやアマゾンのジェフ・ベゾス氏も投資したことで話題になった会社です。
最近では2021年にインドのDeHaatが約131億円、2022年に韓国のGreen Labsが約170億円の資金調達を行った事例もあります。
日本でも京都を拠点に新規就農者の農業参入支援、対面や直販での野菜販売などを展開するスタートアップ「坂ノ途中」が2021年に8億3,108万を調達するなどアグリテックの波が広がってきています。
アグリテック企業の資金調達事例

アグリテック企業の事業内容は?

数百億円規模の資金調達に成功し世界的に注目されているアグリテック企業ですが、どのような事業があり、具体的な活動は何なのか?

種に成長を促す微生物をコーティング「インディゴ・アグリカルチャー」

さきほど投資事例でも挙げたインディゴ・アグリカルチャー(以下インディゴ)は、アグリテックによりユニコーン企業の仲間入りを果たしており、世界最大の農業ユニコーンと言われています。
インディゴは、微生物とデジタル技術を活用し、生産者の収益向上、持続可能な地球環境の実現および消費者の健康増進に取り組んでいる企業です。
インディゴの取り組み内容をひとことでいうと、”微生物の力を利用して畑の収穫量を劇的に向上させる”です。
インディゴは、作物の耐性を強くしたり成長を促す微生物をAIなどの技術を使った分析から特定し、それを種子にコーティングすることで成長しやすい状態を実現しています。
微生物コーティングされた種子
出典:Indigo Ag ホームページより
実際にコメ、小麦、トウモロコシなどの収穫量が10%前後上がっています。
6〜14%収穫量が増加
出典:Indigo Ag Youtube動画より

農地の土壌炭素貯留を増やしクレジット化「インディゴ・カーボン」事業

インディゴでは種子の販売の他にも、農地土壌に炭素貯留を増やす農法(自然農法など)への移行支援も行っています。
その取り組みは、農地が削減したCo2に対して、カーボンクレジットをつけて売買するという「インディゴ・カーボン(Indigo Carbon)」という事業です。インディゴの種子を使うと収穫量が増え収入も増える、さらにカーボンクレジットで収穫以外からの収入も入るということで、アメリカを中心に世界中に事業範囲が広がっています。
現在400万エーカー(東京ドーム35万個分)がインディゴの種を使った畑になっているそうです。

注目される背景に食糧危機・環境問題

「現在の農業システムは破綻している」
これはアウトドア用品ブランドで有名なパタゴニアが公開している動画の中で出てくる表現です。
従来の農業が環境に与える負荷は大きく、上記の動画内でも語られているとおり、
  • 総炭素(温室効果ガス)排出量の30%
  • 淡水使用量の70%
  • 生物多様性の損失の60%
これらが農業により生まれている環境への負荷です。
とはいえ、食料を供給するためには仕方ないとして、今までは温暖化対策などへの貢献は強く求められていませんでした。しかし気候変動により干ばつなどの自然災害が頻発することが予想されることで、食料供給自体にも懸念が生じています。
今後さらに人口が増えることが確実視されている中、食料供給が難しくなると環境問題に加え食糧危機問題も加速してしまいます。環境への負荷が大きいうえに食料も作れなくなる⇒システムが破綻している、というわけです。
そのため現在農業は転換期を迫られており、その解決を担うアグリテック企業に大きな期待が集まっています。
さらに付け加えると、世界的にオーガニックに対するニーズが高まっていることも要因の1つにあるといえます。オーガニック食品への意識・関心が高い欧米から自然農法が広がっているのは無関係ではないはずです。
この食糧危機・環境問題の解決への期待、またオーガニックに対するニーズの高まりといった背景が、アグリテック業界が注目される大きな要因となっています。

”三方よし”な事業設計が重要

SDGs達成の鍵は幸福度向上にあり!コペンハーゲンから学ぶ持続可能な気候変動対策」の記事でも話しましたが、売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よしな設計がされていないと、これからの事業は拡大していかないと強く感じます。
「環境問題解決に繋がるから行動する」ではなく、「自分に直接のメリットがあるから行動する」。その結果、環境にも良い影響が生まれる。この設計がされているかどうかが、持続可能かつ成長する事業の必須条件になっています。
インディゴの事業が世界中に広がりユニコーン企業になるまで成長したのには、食料危機や環境問題に貢献できるというだけではなく、取り組む農家の方が得られるベネフィットが大きいからというのが大きな理由だと思います。
Kabbaraも持続可能性のある事業を通し大きく成長できるよう取り組んでまいります。まだまだ、これから研究開発が必要な部分も多いですが、わたしたちの活動に少しでも興味を持たれましたら、これら実現のためみなさまの活動へのご参加お待ちしています。
また、ご質問やご意見随時承っております。
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