ブロックチェーンはどのようにして小規模農家を気候リスクから守るか

   by Akihiko Sato        
ブロックチェーンはどのようにして小規模農家を気候リスクから守るか
こんにちは、佐藤です。
今回は通称、ダボス会議(World Economic Forum)、GREEN BIZ Food weekly、2022年5月5日、Theresa Lieb氏によって掲載された、小規模農家がテクノロジーやサービスを利用しやすくなることで、大きな利益を得ることができるという記事を中心にしています。
Blockchain wants to bring transparency to regenerative agriculture payouts. Image courtesy of Chainlink.
ブロックチェーンはどのようにして小規模農家を気候リスクから守るか
デジタル保険会社Lemonadeの創設者らが運営する慈善団体Lemonade Foundationは、「ブロックチェーンを使って、アフリカの農業従事者を気候変動から保護」 する計画を発表しました。アプリ、あるいはブロックチェーンで世界を救うというテック企業の高い目標には懐疑的でした。しかし、私はこのアイデアにも興味がありました。なぜなら、小規模農家は技術やサービスへのアクセスを改善することで大きな利益を得ることができるからです。

まだ謎めいていたブロックチェーン保険の世界を掘り下げてみたところ、より楽観的になっていた。ブロックチェーンを利用した保険は、小規模農家にとって実際に役立つようだ。
Lieb氏は、懐疑的であったブロックチェーンを調査したところ、すでに保険で利用されているブロックチェーン技術を理解することで、小規模農家への有用性があると認識されたようです。
ブロックチェーン技術は、農家の気候変動リスクを軽減するだけでなく、インパクトのある用途がある。再生可能な農法や森林保全の取り組みなど、リモートセンシングツールで確認できる環境への取り組みに対する支払いを効率化できるかもしれない。と、まとめています。
まとめられた内容と課題
小規模農家の課題
・脆弱で十分なサービスを受けられていない
低所得国、アフリカ、ラテンアメリカ、アジアなどの農村地域は気候変動への負荷をほとんどかけていないにも関わらず、気候変動の被害を被っています。気候変動に関する政府間パネルは、熱波や干ばつなどの異常気象がより頻繁に起こるようになり、アフリカでは農業生産性が最大で50%低下するという予測もあります。リスクを軽減し、農家が天候の変化に適応できるようにするための緊急な支援が必要です。
天候パターンの予測がますます困難になる中で、農家が経営を維持し、食料安全保障を守るために必要となるのは農業保険ですが、実際に利用出来ている小規模農家は少ないといいます。
サハラ以南のアフリカでは、農業保険に加入している農家は全体の3%未満。アジアでは22%、ラテンアメリカでは33%が保険に加入していますが、保険料は高く問題も多い。
問題点
・保険代金があまりにも高価でかつ、不透明で信頼性に欠けた管理
古くからの習慣が悪循環に陥っているといいます。問題があった場合や、確認、検証はその都度、代理店を通じて行っているため、時間がかかりすぎるということと、伝達が煩雑になるため内容も不透明な運用が続いている。
ブロックチェーンがもたらす改革
ブロックチェーンがコスト削減と透明性の実現を約束
A blockchain-based insurance claim verification process. Image courtesy of Chainlink.
ブロックチェーンを利用した農業保険サービスの評価では、こうしたモデルによってコストを最大41%削減でき、保険会社は農家への保険料を最大30%削減できると試算されました。
これは大きな違いです。
節約はどこで行われるのでしょうか?
「スマートコントラクト 」が魔法をおこす。
これは、ブロックチェーンを通じてつながった、誰でも入手可能で検証済みの信頼できるさまざまなデータに基づいて、保険金の支払いを自動化するモデルとなっています。
データは、Google CloudにホストされているAccuWeatherやNOAAの気象・気候データなどの情報源から得られます。これらの情報源には詳細な地理情報が含まれているため、保険会社は農家が干ばつ、熱波、嵐を経験したかどうかをリモートで検証することができます。
Chainlink Labsは、ブロックチェーンで管理された「干ばつ保険」をいくつかの農業保険会社に提供しています。その保険の内容は、「作物を育てるには少なくとも20インチの雨が必要で、20インチ未満の雨が降った場合に払い戻しが行われる保険に加入する」というものだ。契約期間の終わりに、保険は天候データに基づいて農場が受け取った雨の量を自動的にチェックし、20インチ未満の場合は直ちに支払いを実行するというものです。
「スマートコントラクトは分散型のインフラ上で実行されるため、この事前に取り決めた契約を改ざんしたり操作したりすることはできない」。「むしろ、契約には農家の場所、リスクパラメーター、保険金額など、すべてのパラメーターがすでに定義されている。いったん設定されると、保険金の支払いは、事前に設定されたパラメータと天候の結果に基づいて確実に実行されます。
信頼とスピードを武器に成長する市場
ブロックチェーンによるこうした信頼と透明性の向上は、従来の保険会社が契約上の義務を果たすかどうか?を疑っている市場では極めて重要である。ブロックチェーン保険会社のArbolは、この点がカンボジアでの作物保険の導入を阻む主な障害の1つであると認識している。大手保険会社がカバーしていない、小規模農家にスマートコントラクトを提供している国の1つとなっている。
保険はあまりにも高価で、官僚的であり、信頼性に欠ける傾向があります。ブロックチェーンは違いを生み出そうとしています。
このモデルは軌道に乗りつつあります。Arbolの創業者兼CEOであるSiddhartha Jha氏は、2020年に約200万ドル(約2億6千万円)のリスクをカバーしていたのが、2021年には3億ドル(約390億円)になったと教えてくれました。今年、このスタートアップはそのカバー額を2倍にする見込みとのことです。
農家の気候リスクを減らす以外にも、ブロックチェーン技術にはインパクトのある応用分野があります。それは、再生農法、森林保全活動、およびリモートセンシングツールが検証できるその他の環境への取り組みに対する対価などの支払いを効率化することができると考えられています。
例えば、Chainlinkと非営利団体Green World Campaignのプロジェクトは、衛星データを使用して、 「土壌の健全性を改善し、より多くの炭素隔離に貢献し、植生/樹木の被覆を増やし、水文学を強化し、その他のリハビリテーション技術を向上させることによって、指定された土地の再生に成功した人々への支払いを自動的に実行されるようになっています」 。支払いまでの期間が短いため、特に手元資金の少ない小規模農家にはメリットとなるでしょう。
世界の他の地域の生産者が、より少ない事務処理でより多くの資金を得られることに興奮しない理由はありません。自然を基盤とした気候変動ソリューションが加速するにつれ、今後数年の内にこれらの技術がより広く応用されるようになるのではないでしょうか。

と綴っています。
ブロックチェーンベースの農業保険が東アフリカの小規模農家を救う
こちらでも解説がありますように、
Chainlinkのブロックチェーンベースの分散型オラクルネットワークは、様々な外部の気象データソースの外部APIをスマートコントラクトを用いて呼び出すことができ、エンドツーエンドで信頼性の高い接続を実現しています。
また、異常気象が発生した場合は、農業保険契約のデータがスマートコントラクトにより自動処理されるため公平で透明性が高い状態で支払いもリアルタイムに自動で行われます。
具体的には、ハリケーンが農業保険登録者の登録場所から半径30マイル以内の気象観測所によって登録された風速によって保険の支払いが自動で行われる等が想定されています。
他にも政府機関によって発表された干ばつや洪水等の被害範囲に該当した場合も支払い対象となります。
Chainlinkとの提携により今後3年間における気候変動による影響から東アフリカの25万人の農家を守るためのソリューションとなることが期待されています。
日本でのブロックチェーンを応用した保険は、日本損害保険協会がNECと共同で発表したコロナ禍での保険会社間での事務作業での書面を無くすというペーパーレス化と契約業務の効率化という領域に止まっています。もう少し踏み込んだ対策が欲しいところですね。
損保協とNEC、ブロックチェーンで契約実験
日本でも今後控える食糧問題などを解決する為にはより効果的な支援やサービスを充実させていく必要があります。
日本の人口を100人にすると農家さんの割合はたったの二人だそうです。たった二人に100人の食が支えられていることになります。
また、農家の約70%が65歳の高齢者です。耕作が放棄された面積は2015年時点で42万haと滋賀県の面積とほぼ同じであり、自然災害、獣害の被害が甚大化しています。
農家も農作物も減少するということは、食糧自給率ももちろん減少してしまいます。2020年ではカロリーベースで37%と過去最低に。2030年までに45%まで引き上げる施策が進められているのですが、なかなか上がっていません。
農林水産省は、
食料自給率向上に向け、(1)戸別所得補償制度を導入し、意欲あるすべての農業者が農業を継続できる環境を整えること、(2)「品質」や「安全・安心」といった消費者ニーズに適った生産体制への転換を進めること、(3)農業・農村の有する「資源」を有効に活用し、地域ビジネスの展開や新産業の創出を図ることを通じて、「6次産業化」を進めることを基本として推進していきます
戸別所得補償制度では、水田農業の経営を安定させ、自給率向上に取り組む環境をつくっていくとあります。
これは平成22年、つまり12年前から実施されていますが、期待された効果は出ていないように感じます。なぜ、自給率をあげなくてはいけないのか?という根本からの課題を国民に納得してもらわないと、いつまでも問題意識が付かないため、改善する行動も起こっていません。
改善に力を入れているドイツでは、農業にチャレンジしやすい環境があります。ドイツはオーガニック先進国であり、オーガニックに対する公的資金を計上し上手く応用しています。
まず、オーガニックを学ぶ機会として研究も含めた教育にその公的資金の70%が支払われているそうです。ただ単に、生産を拡大するだけでは持続可能なオーガニック推進に絶対つながらないということが分かっていたからです。
教育が行き届くことで、市場が成熟し拡大していく。作り手と売り手が安心して活動していくには重要なことです。
ドイツでのオーガニック食品の一人あたり年間平均支払金額は1万6千円。日本は1300円とのこと。物価が違うということを考慮しても、日本での浸透はまだまだ低いと言わざるを得ません。
逆にいえばこれから伸びしろのある領域ともいえます。
実際、市場規模として日本が1700億円に対してドイツは1兆3600億円。公的資金予算が、日本1.5億円、ドイツ44億円以上。※【インタビュー】オーガニック専門家・レムケなつこさんに聞く|世界最先端・ドイツの驚くべきオーガニックの実情、そして、日本のオーガニックの未来とは?より
ドイツでは公的機関ではオーガニックを提供しなくてはなりません。その需要を満たすため、新規にオーガニック農園を開業する際に資金的援助などの支援を行っています。
見習うところは見習いつつ日本らしさを見つけて拡大することを願います。日本でも環境面や健康面をしっかりと考えられる環境が整備されれば、それを理解して行動できると信じています。
自分事と捉えられる未来ビジョンを考え共感出来るようにしていきたい…
「皆で考え決めた約束を必ず実行する」
大事なのは皆で考え決められる環境とそれを実践できること。
ブロックチェーンで実現出来る未来。
みんなの健康と地球の健康を守り維持していくということを実現できるよう、ブロックチェーンの実装とサービスの連携を構築していきたいと思います。
Kabbaraが目指す未来
是非、一緒に考えて行動してみませんか?
みなさまのご意見、ご指摘が未来を構築していく糧となっていきます。
地球に人が暮らす上で基本となるのが大地=土壌から正しい状態へ構築・再生するプロジェクト、「Hundred million」PROJECT2030。
良い土壌は作物も人が暮らす環境にも直接つながる大事な基本です。基本をしっかりすることで大きな変化が可能となる。
そう信じて活動をしていきます。
時代が要請するカーボンニュートラル社会の実現へ
プロジェクト「Hundred million」PROJECT2030
一緒に活動したい!もっと情報を知りたい!という仲間も随時募集中です!
アンケート及び、hmp2030メンバーの参加をお待ちしております。
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