世界トップのIT企業「GAFA」の気候変動対策

   by Takumi Hisamatsu        
世界トップのIT企業「GAFA」の気候変動対策
経営に脱炭素やサステナブルを取り入れることが必須になりつつある現在。今後、企業が生き残れるかどうかはサステナブル経営かどうかが大きな鍵の1つとなっており、企業価値にもそのあたりが大きく影響してきています。
以前の記事([新常識]企業価値を決める最大の要因は財務情報ではなく◯◯)でもお伝えしたとおり、企業価値を決める最大の要因はどれだけ儲けているか?といった財務情報ではなく、気候変動に対するリスクやそのための対策など、非財務情報の公開が重要な要素となっています。
大企業になればなるほど投資家やユーザーなどのチェックも厳しくなるため、世界的な大企業ほど気候変動に対する取り組みとその成果に対する開示が強く求められています。
今回は、そんな世界的大企業の代表でもある「GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)」の気候変動への取り組みについて見ていこうと思います。
※ちなみに
「GAFA」という呼び方は日本では定着していますが、海外(特にアメリカ)ではあまり使われていないようです。海外だと4社にNetflix(ネットフリックス)を加えた「FAANG(ファング)」という表現が使われています。

「Google」カーボンフリーエネルギーで24時間365日運営を目指す

世界最大の検索エンジン、オンライン広告、クラウドコンピューティング、ソフトウェア、ハードウェア関連の事業を展開するGoogle(グーグル)。
GoogleはSDGsなどで気候変動対策が注目されるようになるもっと前から脱炭素に向けた取り組みを行っており、自社が排出するCO2に相当するカーボンオフセット(CO2排出権)を購入することで、カーボンニュートラルを2007年の時点で達成しています。
その後、Googleデータセンターのエネルギー効率を世界最高レベルまで高める取り組みを行い、2017 年には、再生可能エネルギーで年間消費電力の100%を賄い、今では世界最大の再生可能エネルギー年間購入企業となっています。
そんなGoogleの次の目標は、24時間365日カーボンフリーエネルギーを2030年までに達成することです。
24時間365日カーボンフリーエネルギーとは、排出量を単にオフセットするのではなく、事業に必要なエネルギー供給から二酸化炭素を「完全に」排除することを意味します。
Googleはこの目標を達成すべく、
  • 24 時間クリーンエネルギーを購入するための新しい取引アプローチの開発
  • 次世代のクリーンエネルギー技術の商業化をサポートし、電力需要を管理するためのスマートソリューションを開発
  • 世界中の電力網の脱炭素化を加速させるためのパートナーシップを構築し、ポリシーの提唱
に取り組んでいます。
24時間365日カーボンフリーエネルギーを実現するには、単にクリーンエネルギーを購入するだけでなく、電力システムの変革に取り組まなければなりません。この変革を実現するためには、1 世紀以上にわたって電力業界を形成してきた政策や規制を改革するために協力し合う以外道はないため、3つ目の「世界中の電力網の脱炭素化を加速させるためのパートナーシップを構築し、ポリシーを提唱」が最も重要だと考えているようです。

「Amazon」2025年までに自社の事業を100%再生可能エネルギーで運営

世界最大の総合インターネット通販会社であるAmazon(アマゾン)。
Amazonは、2030年までに自社の事業を100%再生可能エネルギーで運営するという目標を掲げていましたが、当初の2030年よりも期限を5年早く、2025年までに変更しています。
Googleと同じくAmazonも世界最大の再生可能エネルギーの購入企業の1つで、再生可能エネルギープロジェクトの件数は、134の風力発電と太陽光発電、176の屋上太陽光発電の合計310件あります。
この310件すべてのプロジェクトが稼働すると、合計で年間4万2,000ギガワット時(GWh)の発電量が見込まれます。これは米国の390万世帯に毎年、電力を供給するのに十分な量となります。これらのプロジェクトにより生み出されるカーボンフリーのエネルギーは、米国内で毎年370万台以上の自動車から排出される炭素量に相当する年間1,730万トンの炭素排出を削減します。
出典:Amazonニュース記事「Amazon setzt auf erneuerbare Energien」より
また、もう1つの目標として「シップメント・ゼロ」があり、これは2030年までにAmazonの全配送のうち50%でネットゼロカーボンを達成するというものです。
この目標の達成に向け、Amazonも出資する電気自動車(EV)スタートアップのRivian(リビアン)に、クライメート・プレッジ・ファンドを通じて990億円を投資しており、Rivian製の電気自動車を10万台発注しています。
Amazonが出資し10万台のEV配送バンを発注済みの電気自動車スタートアップのRivian
出典:「Rivian HP」より

「Meta(旧Facebook)」2030年までにバリューチェーン全体で温室効果ガス排出量をゼロ

オンライン・ソーシャルメディアおよびソーシャル・ネットワーキング・サービスのFacebook(フェイスブック)を運営するMeta(メタ)。
Metaが掲げる目標は、「2030年までにバリュー チェーン全体で正味の温室効果ガス排出量をゼロ」です。
Meta社(旧Facebook社)は2018年より着々と風力発電や太陽光発電などによるエネルギーに置き換え、2021年4月15日、「2020年時点における事業活動に必要な全エネルギーに相当する再生可能エネルギーを確保した」と発表しています。
また、Stripe(ストライプ)、Alphabet(アルファベット)、Shopify(ショッピファイ)、McKinsey Sustainability(マッキンゼー・サステナビリティ)といった名だたる大企業と提携し、技術的な炭素除去の開発を加速するために、9億2,500万ドルを共同で投資しています。
長期的な二酸化炭素除去の可能性が最も高い技術を共同で見つけ、その拡張を支援することで、地球規模の気候目標を達成するために必要な解決策を加速させることを目指しています。
出典:Meta社ニュース記事「脱炭素技術の開発を加速」より
また、温室効果ガスだけでなく、「2030年までにウォーターポジティブになる」という目標も掲げています。ウォーターポジティブとは事業活動における淡水の消費量に対して、供給量を多くした状態を指しており、簡単にいうと水を使いすぎないというものです
Meta社のデータセンターは水を大量に消費し、なおかつアリゾナ州、ユタ州、ニューメキシコ州などの水不足の地域に多く配置されています。そのため、水不足をこれ以上加速させないために、乾季に河川水系に淡水の供給や、危険にさらされている水源から抽出される水の量を減らすための農業用灌漑インフラの近代化といった水再生の取り組みをおこなています。
またデータセンターの水とエネルギー効率を高める新しい方法に投資し、施設での水の効率を高める技術を組み合わせ、2020年に約5億9,500万ガロンの水を回復しています。

「Apple」2030年までにサプライチェーンの100%カーボンニュートラル達成を約束

iPhoneやiPad、Macで有名なApple(アップル)。
Appleが掲げる目標は、「2030年までにサプライチェーンの100%カーボンニュートラル達成」です。
Appleも他の企業同様に自社でエネルギープロジェクトに取り組んでおり、Appleが調達する再生可能エネルギーの80%以上は、自らが手掛けた電力プロジェクトから生み出されています。
Appleが調達する再生可能エネルギーの80%以上は、自らが手掛けた電力プロジェクトから生み出されている。
出典:AppleニュースルームApple、2030年までに サプライチェーンの 100% カーボンニュートラル達成を約束より
具体的な取り組み内容は以下です。
低炭素の製品デザイン:
製品に低炭素の再生材料を使用し、画期的な方法で製品のリサイクルに取り組み、可能なかぎりエネルギー効率が高くなるような製品デザインを心がけていく。
エネルギー効率の拡大:
施設でのエネルギー使用を削減する新たな手法を確認し、サプライチェーンでも同じ手法を採用するように働きかけていく。
再生可能エネルギー:
100%再生可能エネルギーで企業運営を継続する。新規の電力プロジェクトを興し、当社のサプライチェーン全体をクリーンエネルギーに移行させることに注力していく。
工程と材料における革新:
製品に必要な工程と材料に対する技術的な向上を通じて温室効果ガスの削減に取り組む。
二酸化炭素の除去:
大気中の二酸化炭素を除去するために、世界中で森林やその他の自然に基づくソリューションに投資する。

以上、世界トップのIT企業であるGAFAの気候変動への取り組みをご紹介しました。
世界を引っ張る大企業だけあって、具体的な目標とそのためのロードマップと施策を示し、気候変動の分野に関しても周りの企業を引っ張っていく存在となっています。
また、4社に共通しているのは、オフセットや再生可能エネルギーの購入によるカーボンニュートラルで止まることなく、真の意味でカーボンニュートラルを達成するために歩みを進めていることです。
製品の素材や生産工程に加え、事業を運営するために使うエネルギーの生産からユーザーへ届き破棄されるまでのサプライチェーン全体から見てカーボンニュートラルを目指す。ステークホルダー向けの見せかけの気候変動対策ではなく、「本気で気候変動を考えてるんだな」というのが伝わる取り組み内容です。
もちろん、GAFAのような取り組みを中小企業がそのまま真似することはできませんが、行動する内容や発信する内容から、気候変動を食い止めたいと本気で考えているのかどうかを伝えることは可能だと思います。
逆に言うとそれが伝わらない企業だったり、上辺だけの気候変動対策を謳っている企業はこれからの時代は応援されなくなってしまう可能性が高いので、より気候変動に対して関心が高くなる今のタイミングから、企業としての正しい気候変動対策が必要だと感じますね。
気候変動対策の目標として一つの指針となるのが「SBT認定」という評価があります。科学的根拠に基づいた明確な目標設定をするため、やみくもに環境問題に取り組むよりも効果的と言われています。
SBT認定に関してはこちらの記事にてメリットや解説がありますので、ご興味があるかたは是非確認して見て下さい。
※「SBT認定を取得するとどんなメリットがあるの?」
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