「IPCC第6次評価報告書から考える私たちと気候変動」に参加した感想とまとめ パート1

   by Akihiko Sato        
「IPCC第6次評価報告書から考える私たちと気候変動」に参加した感想とまとめ パート1
こんにちは、佐藤です。
11月30日、IPCCシンポジウムに参加しましたのでどのようなことが語られていたのか?を数回に分けて報告させて頂きます。
イベント趣旨
主催は気象庁、文部科学省、農林水産省、環境省
後援として地球ウォッチャーズ-気象友の会-

IPCC第6次評価報告書から考える私たちと気候変動
2021年から2022年にかけて、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書の第1作業部会、第2作業部会、第3作業部会報告書が順次公表されました。
講演では報告書の知見を紹介いただき、パネルディスカッションではこれまでの報告書と来年公表予定の統合報告書への展望について議論されました。
という内容ですが、まずIPCCという名称はあまり聞きなじみがないのではないか?と思いますので、簡単に解説したいと思います。
そもそもIPCCとは一体なんなのか?
今回のシンポジウムで解説されていましたので、紹介していきたいと思います。
ちなみに、統合された報告のまとめは来年の春頃に発表されるとのことです。
目次
  • *基調講演1 IPCCの概要
田辺清人(IPCCインベントリータスクフォース共同議長)
  • IPCCの概要のおさらい
  • 基調講演2 IPCC AR6 WG2報告書~影響・適応・脆弱性
ハンス=オットー・ポートナー (IPCC第2作業部会共同議長)
  • 基調講演3 IPCC AR6 WG1報告書~自然科学的根拠
ヴァレリー・マッソン=デルモット(IPCC第1作業部会共同議長)
  • パネルディスカッション モデレーター 田辺清人(IPCCインベントリータスクフォース共同議長)
  • まとめ

1.基調講演1IPCCの概要 田辺清人(IPCCインベントリータスクフォース共同議長)
 地球環境戦略研究機関(IGES):コンサルタント
IPCC
とは
日本語では「気候変動に関する政府間パネル」と呼ばれます。
「Intergovernmental Panel on Climate Change」の略であり、1988年、世界気象機関(WMO)及び国連環境計画(UNEP)が設立し、国連総会がそれを承認した組織になります。

  • 1980年、世界気候変動が国際政治上の課題として浮上。
  • 政策決定者に対して、独立した科学的、技術的助言を行う仕組みの必要性を、国際社会が認識。

  • IPCCは現在、195ヶ国の政府が加盟しており、国際的な科学者の自発的な貢献によるネットワークによって支えられています。

    IPCCは多くの専属職員を抱えるというわけではなく、活動は科学者の自発的な貢献によって支えられています。
IPCCの特徴
▷政策検討のために科学者が協力して助言を行う仕組みを、おそらく史上初めて世界規模で実現した。

▷人間の引き起こす気候変動のリスク、その影響および適応策と緩和策の選択に関する科学的、技術的、社会経済学的な情報を評価して政策決定者に伝えるという役割を担っています。

・自ら研究を行うわけではない
世界中で発表されている研究結果を集め、評価し、最新の温暖化に関する情報を提供する。

▷報告書は政策に関わるものであるが、政策を規定するものではない。
IPCCは政策決定者に対して決して、こうしなければならないなどということをいうのではなく、こういう政策をとったらどうなる?気温が1.5度上昇したら?2度上昇したら?4度上昇したらこのくらいの影響になるのか?…といったような、科学的な情報を政策決定者に提供することによって、政策決定者の政策判断を助ける役割になります。

▷気候変動問題のある側面をカバーできるよう、作業部会(Working Group)やタスクフォースを設けて各分野に必要な専門家のネットワークを形成。
こちらが、現在のIPCCの構造になります。
4つのグループがあります。
温暖化問題を大まかに表した図
IPCC ワーキンググループの役割の範囲
ワーキンググループ1
ワーキンググループ2
ワーキンググループ3
IPCC議長団
IPCC事務局と技術支援ユニット(TSU)
IPCC全体の事務局 スイス ジュネーブ
ワーキンググループ1 技術支援ユニット(TSU) フランス・中国 
ワーキンググループ2 技術支援ユニット(TSU) ドイツ・南アフリカ
ワーキンググループ3 技術支援ユニット(TSU) イギリス・インド
インベントリータスクフォース 技術支援ユニット(TSU)日本(1999〜)地球環境戦略研究機関(IGES)に設置されている。
主要な報告書として、「評価報告書(Assessment Report)がある

過去30年にわたり温暖化に関する国際交渉を大きく進展させる原動力に。
いままでに全部で8つの報告書があります。
第6次評価報告書:統合報告書 2023年3月(予定)
次の第7次評価期間は新たに議長団がセットされ新体制で始まります。2023年7月〜
任期は5〜7年
    すでに決定されている報告書
  • 気候変動と都市に関する特別報告書
  • 短寿命気候強性因子(SLCF)排出量計算の方法論報告書
2.【IPCC概要のおさらい】
IPCCは気候変動についての科学的知見を取りまとめた報告書をつくり、各国に地球温暖化対策の基礎データを与え、地球温暖化防止のために行動することを促す国際的な機関だといえます。

出典:環境省「環境省_IPCC関連情報<IPCC概要>」

つまり、IPCCのレポートは気候変動に関する情報源として引用される、世界で最も権威ある報告書ということが分かりました。
レポートをまとめる経緯も、数万人からなる科学者の研究・報告をワーキンググループがまとめるのですが、最終的にワーキンググループの約10人のチームの全員の同意によってまとめられていきます。
参加されている科学者はIPCCという組織に入るということではなく、あくまでもフラットな状態でデータと向き合っています。そこに政治的な圧力をかけるのは難しいでしょう。
ゆえに、信頼されている報告書となっているのだと思います。
このIPCCから報告書が出される都度、人為起源の温室効果ガスが地球温暖化に大きな影響を与えていると警告し続けました。
そして、今回の第6次報告書では人間が地球温暖化に影響を与えたことは「疑う余地はない」としました。
第6次報告書は、大気中のメタンガスやCO2、一酸化窒素は過去80万年間で前例のない水準まで増加し、CO2だけに限れば、過去200万年間のどの時点よりも高いと指摘しています。
まずは、このデータから未来の予測をイメージして自分達の行動を考えるきっかけにしていくことが大事ということがわかりました。
次回は、各報告の内容をまとめていきたいと思います。
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