4パーミル・イニシアティブは、気候変動への対策の鍵とされている国際的な取り組みです。日本国内においても広く周知していきたい国際イニシアチブですので、ご紹介させていただきます。
4パーミル・イニシアチブとは
このイニシアティブの名前は「フォーパーミル」と読みます。これは、世界中の土壌に含まれる炭素量を毎年0.4%増加させる目標を示しています。この目標を達成することで、大気中二炭素酸化( CO2)を相殺し、結果的にCO2の増加をゼロにできる可能性があるという考え方に基づいています。
このイニシアティブは、2015年に開催された「気候変動諮問条約第21回締約国会議(COP21)」が発端です。フランス政府が強力なリーダーシップを発揮し、国際社会に提言しました。 623の国や国際機関がこの取り組みに参加しています。
4パーミル・イニシアチブの仕組み
4パーミル・イニシアティブを理解する際に、「なぜ土壌中の炭素量が大気中のCO2と関連しているのか?」という疑問が浮かぶかもしれません。その答えは、炭素の循環にあります。は「大気」「植生」「土壌」というサイクルで循環しているのです。
人間の経済活動によって放出された炭素の一部は、光合成育ち植物に取り込まれます。これらの植物が寿命を迎えると、土壌内の生物やバクテリアの働きにより、炭素を含む有機物に変換されます。この有機物によって土壌はより肥沃になります。 炭素は植物の成長や食料の生産に欠かせない要素です。
実際、土壌は元々大気中の炭素量の2〜3倍を維持しています。 そして、この土壌中の炭素を増やすことで、大気中の炭素量を減少させることができ、これが温暖化対策に4パーミルという数字は、現在の人類の経済活動による大気中への炭素排出量から計算されています。
4パーミル・イニシアティブに関する研究や取り組みは、参加国や組織によって進められています。 山梨県では、土壌中の炭素を増やす方法や、炭の有効活用、草生栽培の促進など、さまざまな取り組みが実施されていますあります。
2021年5月には、4パーミル・イニシアティブの取り組みによって生産された果物などを認証するための「やまなし4パーミル・イニシアティブ農産物認証制度」が制定されました。
山梨県における取り組み
山梨県内の果樹園で発生する剪定枝の多くは、焼却または粉砕し耕転して土壌に還元しています。焼却は二酸化炭素の発生源となるほか、粉砕した場合も数年間で微生物に分解され二酸化炭素として大気に放出されます。そこで、果樹園で発生する剪定枝を炭にして土に貯留することと不耕起草生栽培と有機物投入によって炭素を土の中に貯留する取り組みを検証しています。
1)試験研究
・効率的な炭化方法、炭素貯留量の推定、バイオ炭投入による土壌改良効果、果樹の生育への影響などを検討。
2)現地実証および研修会などを開催
・現地で剪定枝量などのデータを収集するために現地実証試験を実施。
・4パーミル・イニシアチブの重要性や実践方法への理解を深め、農家に普及するため、JA営農指導員や生産者に対する研修会や実演会を開催。
3)4パーミル・イニシアチブ推進全国協議会
・「4パーミル・イニシアチブ」を農業分野で全国に展開・波及させるとともに、優れた取組を国内外に発信するため、全国協議会を発足。
4)やまなし4パーミル・イニシアチブ認証制度
・地球温暖化対策に貢献した果実を新たなブランドとして有利販売するために2つの認証基準を策定。
5)農業高校での特別授業の開催
・将来を担う若い世代に地球温暖化の現状や4パーミル・イニシアチブなどの取組が重要であることを示すために、高等学校などで特別授業を実施。
4パーミルイニシアチブの実践は「農業サイドから脱炭素化に貢献できる」新たな取り組みです。今後、消費者への浸透も図りながら、「環境に優しいくだもの」として新たな価値を創造できるブランドを目指していきます。
「4パーミル・イニシアチブ」は、日本の農業においてますます注目されている重要な概念です。しかしながら、その認知度はまだまだであり、バイオ炭を用いた炭素貯留クレジット(Jクレジットの方法論)においても設定されたばかりです。今後一層の推進が求められます。その成果には食料供給の安定、地球温暖化の軽減、災害への対策強化など、多くのメリットが期待されます。 「4パーミル・イニシアチブ」に、ぜひご注目いただき、弊社といたしましても、微力ながら貢献していきたいと思います。
参考:
農林水産省 フォーパーミル普及推進協議会
4パーミル・イニシアチブHP
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