SBTとRE100:中小企業が取り組むべき再生可能エネルギー活用

   by kabbara        
SBTとRE100:中小企業が取り組むべき再生可能エネルギー活用
SBTとRE100:中小企業が取り組むべき再生可能エネルギー活用

はじめに

地球温暖化が深刻化する中、企業には脱炭素への貢献が求められています。特に、SBT(Science Based Targets)やRE100といった国際的なイニシアチブへの参加は、企業の持続可能性を示す重要な指標となっています。

しかし、これらの取り組みは、大企業だけのものと思っていませんか?

実は、中小企業こそ、SBTやRE100に取り組むことで、大きなメリットを得られる可能性を秘めているのです。

この記事では、中小企業がSBTとRE100に取り組む意義、メリット、そして具体的な方法について、わかりやすく解説していきます。

サマリー

  • SBTとは、科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標のこと。
  • RE100とは、事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目標とする国際的なイニシアチブ。
  • 中小企業がSBT・RE100に取り組むことで、企業イメージの向上、競争力の強化、コスト削減など、様々なメリットが期待できる。
  • 中小企業向けの支援制度やツールも充実しており、導入のハードルは下がってきている。
  • SBTやRE100への取り組みは、地球温暖化防止に貢献するだけでなく、企業の持続的な成長にも繋がる。

SBT(Science Based Targets)とは?

SBTとは、Science Based Targetsの略で、科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標のことです。パリ協定で合意された「世界の平均気温上昇を産業革命前比で2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」という目標を達成するために、企業が設定する排出削減目標を指します。Science Based Targets initiative(SBTi)が認定する、科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標のことです。SBTiは、CDP、国連グローバル・コンパクト、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)の4団体によって設立された国際的なイニシアチブです。

CDP、国連グローバル・コンパクト、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)の4団体

RE100とは?

RE100とは、「Renewable Energy 100%」の略で、事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目標とする国際的なイニシアチブです。2014年に設立され、The Climate Groupという国際NGOが運営しています。

RE100に加盟する企業は、以下のようなコミットメントを表明します。

  • 2050年までに事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーにする
  • 目標達成に向けた具体的な計画を策定し、毎年進捗状況を報告する
  • 再生可能エネルギーの利用を促進するための活動に取り組む

RE100は、世界中の影響力のある企業が参加しており、Apple、Google、IKEA、Microsoftなど、日本企業では、ソニー、リコー、イオンなど、名だたる企業が名を連ねています。これらの企業がRE100に加盟することで、再生可能エネルギーの需要を高め、市場の拡大を促進する効果も期待されています。

なぜRE100が重要なのか?

気候変動は、私たちの社会や経済に深刻な影響を与える喫緊の課題です。その主な原因の一つが、化石燃料の燃焼によるCO2排出です。RE100は、企業が再生可能エネルギーに転換することで、CO2排出量を削減し、気候変動対策に貢献することを目的としています。

また、RE100に加盟することで、企業は以下のようなメリットを享受できます。

RE100に加盟することで、企業は以下のようなメリット
  • 企業イメージの向上: 環境問題に積極的に取り組む企業として、社会からの評価が高まります。
  • 競争力の強化: 環境意識の高い顧客や投資家から選ばれるようになり、ビジネスチャンスが拡大します。
  • コスト削減: 再生可能エネルギーの価格は低下傾向にあり、長期的に見るとコスト削減につながる可能性があります。
  • 従業員のモチベーション向上: 環境問題に貢献できる企業で働くことに誇りを感じ、従業員のモチベーション向上に繋がります。

中小企業にも関係あるの?

SBTやRE100は、以前は大企業が中心となって取り組むものでした。しかし、近年では、サプライチェーン全体での排出量削減の重要性が高まり、中小企業にもその波及効果が及んでいます。

大企業がSBTを達成するためには、取引先である中小企業にも排出量削減を求めるケースが増えてきています。また、消費者や投資家の間でも、環境問題への意識が高まり、企業の持続可能性を重視する傾向が強まっています。

そのため、中小企業もSBTやRE100に取り組むことは、もはや「選択」ではなく「必要」になりつつあると言えるでしょう。 

SBTやRE100の導入には、目標設定や排出量算定、再生可能エネルギーの調達など、専門的な知識や対応が必要となり中小企業が導入するにはハードルが高いと思われがちです。しかし、近年では、中小企業向けの支援制度やツールも充実してきており、導入のハードルは下がってきています。

中小企業がSBT・RE100に取り組むメリット

企業イメージの向上

SBTやRE100に取り組むことで、企業イメージの向上、競争力の強化、コスト削減、従業員のモチベーション向上など、様々なメリットが期待できます。企業の環境への意識の高さを示す指標となります。積極的に情報発信することで、消費者や投資家からの信頼を獲得し、企業イメージの向上に繋がります。

▼環境問題に関心を持つ消費者のイメージ

出典:1000人アンケート by データ活用なう

競争力の強化

SBTやRE100は、国際的なイニシアチブであり、グローバルな基準で評価されます。これらの認証を取得することで、海外企業との取引や海外進出の際に有利に働く可能性があります。また、環境意識の高い企業として、取引先や顧客から選ばれる存在になることも期待できます。

 

コスト削減

再生可能エネルギーの導入や省エネルギー化などの取り組みは、初期費用がかかる場合もありますが、長期的にはエネルギーコストの削減に繋がります。また、廃棄物削減や資源の有効活用など、環境負荷の低減は、コスト削減にも貢献します。

 

従業員のモチベーション向上

環境問題への貢献は、従業員のエンゲージメントやモチベーション向上に繋がります。また、働きがいのある職場環境づくりにも貢献し、優秀な人材の確保にも役立ちます。

 

リスク管理の強化

気候変動による異常気象や自然災害は、企業活動に大きな影響を与える可能性があります。SBTやRE100への取り組みは、これらのリスクを低減し、事業の安定化に繋がります。

RE100導入手順解説:中小企業が100%再生可能エネルギーへ移行するためのステップ

地球温暖化対策として、企業の再生可能エネルギー利用への関心が高まっています。RE100は、その中でも最も注目されている国際イニシアチブの一つです。

RE100とは、事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目標とする国際的なイニシアチブです。

本記事では、中小企業がRE100を導入するための手順を、詳細に解説していきます。

ステップ1:RE100へのコミットメント

RE100に加盟するには、まずThe Climate Groupに加盟申請を行い、承認を得る必要があります。 申請にあたり、以下の要件を満たす必要があります。

  • 目標設定: 2050年までに事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーにするという目標を掲げ、具体的な達成期限を設定する。

 

  • 進捗報告: 目標達成に向けた具体的な計画を策定し、毎年進捗状況をThe Climate Groupに報告する。

 

  • 情報公開: RE100への加盟と目標達成に向けた取り組みについて、積極的に情報公開を行う。

 

ステップ2:現状把握と目標設定

RE100加盟が承認されたら、現状把握と目標設定を行います。

  • 電力使用量の把握: 過去の電力使用量データなどを分析し、現状における電力消費量を正確に把握します。
  • 再生可能エネルギー利用状況の確認: 既に再生可能エネルギーを利用している場合は、その割合や調達方法を確認します。
  • 目標達成期限の設定: 2050年までに100%達成という最終目標に加え、短期・中期的な目標を設定することで、段階的な導入を進めます。

 

ステップ3:再生可能エネルギー調達方法の検討

RE100では、再生可能エネルギーの調達方法として、以下の選択肢が認められています。

  • グリーン電力証書: 再生可能エネルギーで発電された電気に付与される証書を購入する方法。

    • 比較的導入しやすい方法ですが、証書の価格変動リスクがあります。

 

証書購入例)

グリーン電力証書
出典:日本自然エネルギー株式会社

 

  • 自家発電: 自社の敷地内に太陽光パネルなどの発電設備を設置し、発電した電力を直接利用する方法。

    • 初期費用はかかりますが、長期的に見るとコスト削減効果が見込めます。

 

  • 電力会社との契約: 再生可能エネルギー比率の高い電力プランを提供する電力会社と契約する方法。

    • 電力会社によってプラン内容や料金が異なるため、比較検討が必要です。

 

  • オフサイトPPA: 自社以外の場所に設置された再生可能エネルギー発電所と電力購入契約(PPA)を締結し、発電された電力を調達する方法。

    • 長期固定価格で電力を調達できるため、価格変動リスクを抑えられます。

 

それぞれの方法にはメリット・デメリットがあるため、自社の事業規模や経営状況、立地条件などを考慮し、最適な調達方法を検討する必要があります。

 

ステップ4:導入計画の実行

調達方法が決まったら、具体的な導入計画を策定し、実行に移します。

  • 設備導入: 自家発電やオフサイトPPAの場合は、発電設備の設置工事を行います。
  • 電力会社との契約: 再生可能エネルギー比率の高い電力プランを選択し、契約手続きを行います。
  • グリーン電力証書の購入: 必要な量のグリーン電力証書を購入します。
  • 省エネルギー化: 照明のLED化や空調設備の効率化など、省エネルギー化を推進することで、再生可能エネルギーの導入効果を高めます。
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ステップ5:進捗状況の管理と報告

RE100に加盟している企業は、毎年、目標達成に向けた進捗状況をThe Climate Groupに報告する義務があります。

  • データ収集: 電力使用量や再生可能エネルギー利用量などのデータを定期的に収集します。
  • 進捗状況の評価: 目標達成に向けた進捗状況を評価し、必要があれば計画の見直しを行います。
  • 報告書作成: The Climate Groupが定めるフォーマットに従って、進捗状況を報告する報告書を作成します。
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ステップ6:情報公開と継続的な改善

RE100への取り組みは、積極的に情報公開することで、企業イメージの向上やステークホルダーからの信頼獲得に繋がります。

  • ウェブサイトやCSR報告書: RE100への加盟や目標達成に向けた取り組みについて、自社のウェブサイトやCSR報告書などで公開します。
  • プレスリリース: 再生可能エネルギー導入に関する情報をプレスリリースで発信します。
  • 従業員への周知: 社内報や研修などを通じて、従業員にRE100への取り組みを周知します。
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また、RE100は、単なる目標達成ではなく、継続的な改善が求められる取り組みです。定期的に進捗状況を評価し、必要があれば計画を見直し、より効果的な再生可能エネルギー利用を推進していくことが重要です。

RE100導入を後押し!中小企業が活用できる支援制度

RE100導入を後押し!中小企業が活用できる支援制度

RE100達成には、初期費用や専門知識の必要性など、中小企業にとってハードルが高いと感じる部分もあるかもしれません。しかし、国や地方自治体、民間団体が提供する様々な支援制度を活用することで、これらの課題を克服し、スムーズにRE100を導入することができます。

ここでは、中小企業が活用できる具体的なRE100導入支援制度をいくつか紹介します。

 

 国による支援制度:環境省

  • 再生可能エネルギー導入支援事業

    • 太陽光発電設備などの導入費用や、電力会社との契約に伴う費用などを補助。
    • 再生可能エネルギーの導入コストを削減できます。

 

  • 省エネルギー診断・導入支援事業

    • 専門家による省エネルギー診断や、省エネ設備導入に対する助成。
    • 電力消費量を削減することで、RE100達成に必要な再生可能エネルギー調達量を減らすことができます。

 

 国による支援制度:経済産業省

  • 中小企業等経営強化法に基づく支援

    • 再生可能エネルギー導入などの事業計画を策定し、認定を受けることで、税制優遇や金融支援を受けられます。
    • 長期的な視点でRE100導入を計画することができます。

 

  • エネルギー使用合理化等事業者支援事業

    • 省エネルギー設備導入やエネルギー管理システム導入に対する補助金。
    • エネルギー効率を高め、コスト削減とCO2排出量削減を同時に実現できます。

 

地方自治体による支援制度

  • 東京都: 「東京都 再生可能エネルギー導入促進事業」

    • 太陽光発電設備などの導入費用を助成。

 

  • 神奈川県: 「かながわRE100推進事業」

    • RE100導入に関するコンサルティングやセミナーなどを実施。

 

  • 大阪府: 「大阪府 再生可能エネルギー導入促進補助金」

    • 事業所の屋根などに太陽光発電設備を設置する費用を補助。

 

民間団体による支援制度

  • 日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP): RE100加盟企業の支援や情報提供。

    • RE100導入に関するノウハウや最新情報を得ることができます。

 

  • WWFジャパン: 再生可能エネルギー100%を目指す企業への支援。

    • 専門家によるアドバイスや情報提供を受けられます。

 

  • 環境エネルギー政策研究所(ISEP): 再生可能エネルギー導入に関する調査研究や政策提言。

    • 再生可能エネルギーに関する最新情報や専門的な知見を得ることができます。

 

RE100イニシアチブによる支援

  • The Climate Group: RE100加盟企業向けのガイドラインや事例集、ウェビナーなどを提供。
  • CDP: RE100加盟企業の進捗状況を評価し、情報公開を促進。

 

これらの支援制度を効果的に活用することで、中小企業はRE100導入のハードルを下げ、スムーズな移行を実現することができます。

まとめ

この記事では、中小企業がSBTとRE100に取り組む意義、メリット、そして具体的な方法について解説しました。

地球温暖化は、私たち人類にとって喫緊の課題であり、企業には積極的な脱炭素への貢献が求められています。SBTやRE100への取り組みは、環境負荷の低減だけでなく、企業の持続的な成長にも繋がる重要な取り組みです。

中小企業の皆様も、ぜひこの記事を参考に、SBTやRE100への取り組みを検討してみて下さい。


※RE100導入に関する詳細な情報は、The Climate Groupのウェブサイト(https://www.there100.org/)で確認できます。環境省や経済産業省、地方自治体なども、RE100導入を支援する様々な制度を提供しています。これらの制度を活用することで、よりスムーズな導入を進めることができます。

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