日本・各国で開発されている最新のCO2削減技術を比較紹介

   by kabbara        
日本・各国で開発されている最新のCO2削減技術を比較紹介

はじめに

地球温暖化は、私たちの社会や経済に深刻な影響を与える喫緊の課題です。その主な原因であるCO2排出量を削減するため、世界中で様々な技術開発が進められています。

この記事では、日本および各国で開発されている最新のCO2削減技術を、紹介します。それぞれの技術が持つ可能性と課題、そして私たちの未来への影響について考えていきましょう。

サマリー
・脱炭素経営とは、CO2排出量を削減し、カーボンニュートラルを目指す経営のことです。
・脱炭素経営は、コスト削減、収益増加、リスク管理など、多くのメリットをもたらします。
・様々な企業が、再生可能エネルギー導入など、独自の脱炭素経営に取り組んでいます。
・脱炭素経営を始めるには、現状把握、目標設定、対策の実施、効果測定と改善、情報開示といったステップが必要です。
・国や地方自治体では、企業の脱炭素経営を支援するための補助金や支援制度を設けています。

太陽光、風力、水力、地熱など、自然の力を利用した再生可能エネルギーは、CO2を排出しないクリーンなエネルギー源として注目されています。

日本の取り組み:多様な再エネ導入と技術革新

日本は、限られた国土の中で再生可能エネルギーの導入を積極的に推進しています。

  • 太陽光発電: 住宅用太陽光発電システムの普及促進、メガソーラー(大規模太陽光発電所)の建設など。
    • 例:千葉県木更津市にある「メガソーラー木更津発電所」は、出力100MWを誇る国内最大級の太陽光発電所です。
  • 風力発電: 洋上風力発電の導入拡大、風力発電の出力変動に対応する蓄電池システムの開発。
    • 例:秋田県能代市沖に建設中の「秋田能代洋上風力発電所」は、総出力140MWの国内最大級の洋上風力発電所となる予定です。
  • 水力発電: 小水力発電の導入促進、既存の水力発電所の効率化。
    • 例:長野県伊那市では、農業用水路を利用した小水力発電が導入され、地域エネルギーの供給に貢献しています。
  • 地熱発電: 地熱資源の調査・開発、地熱発電所の建設。
    • 例:大分県九重町にある「八丁原発電所」は、国内最大級の地熱発電所であり、約110MWの出力を誇ります。

 

各国の取り組み:グローバルな再エネシフト

世界各国でも、それぞれの地理的・経済的特性に応じた再生可能エネルギー導入が進められています。

  • 中国: 世界最大の太陽光発電導入量を誇り、砂漠地帯などを利用した大規模な太陽光発電プロジェクトを推進しています 。甘粛省敦煌市にある「敦煌太陽光発電所」は、世界最大級の太陽光発電所であり、出力1GWを誇ります 。
  • アメリカ: 再生可能エネルギーへの投資を拡大し、特にカリフォルニア州では太陽光発電の導入が積極的に進められています 。モハーベ砂漠にある「ソーラー・スター」は、世界最大級の太陽熱発電所であり、出力377MWを誇ります 。
  • ヨーロッパ: EU加盟国は、2030年までに再生可能エネルギーによる電力供給を32%にする目標を設定し、風力発電や太陽光発電の導入を積極的に進めています 。デンマークは風力発電の導入に力を入れており、2020年には電力需要の約50%を風力発電で賄っています 。

アフリカ: ケニアでは、地熱発電の導入が積極的に進められており、再生可能エネルギーによる電力供給比率を高めています 。オルカリア地熱発電所は、アフリカ最大級の地熱発電所であり、出力約700MWを誇ります 。

水素エネルギーの活用:次世代エネルギーキャリアの可能性

水素は燃焼してもCO2を排出しないクリーンなエネルギー源であり、燃料電池自動車や発電など、様々な分野での活用が期待される次世代のエネルギーキャリアです 。

日本の取り組み:水素社会実現に向けたロードマップ

日本は、政府主導で「水素基本戦略」を策定し、水素社会の実現に向けたロードマップを着実に実行しています。

  • 燃料電池自動車(FCV)の開発・普及: FCVの販売促進に加え、水素ステーションの整備にも積極的に取り組んでいます 。トヨタ自動車の「MIRAI」は、世界で初めて量産された燃料電池自動車です 。
  • 水素発電: 水素を利用した火力発電の実証実験や、燃料電池を利用した家庭用コージェネレーションシステムの開発が進められています 。川崎重工業は、世界初の水素専焼ガスタービン発電の実証試験に成功しました 。
  • 水素製造技術の開発: 再生可能エネルギーを利用した「グリーン水素」製造や、CO2を排出しない水素製造技術の開発に力を入れています 。NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、太陽光発電を利用した水素製造技術の開発を進めています 。

 

各国の取り組み:グローバルな水素戦略

世界各国でも、それぞれの強みを活かした水素戦略が推進されています。

  • ドイツ: 国家水素戦略に基づき、水素技術開発、水素インフラの整備などを強力に推進しています 。ドイツ政府は、2030年までに水素ステーションを1,000カ所設置する目標を掲げています 。
  • オーストラリア: 豊富な再生可能エネルギー資源を背景に、再生可能エネルギー由来の水素輸出や、水素サプライチェーンの構築を推進しています 。日本への水素輸出を目指し、褐炭ガス化による水素製造プロジェクトを進めています 。
  • 韓国: 燃料電池自動車の普及促進や、水素ステーションの整備を積極的に推進しています 。現代自動車は、燃料電池SUV「NEXO」を販売しており、世界で初めて水素自動車の販売台数が1万台を突破しました 。

アメリカ: カリフォルニア州を中心に、水素ステーションの整備、燃料電池自動車の普及促進などに取り組んでいます 。カリフォルニア州は、2030年までに200カ所の水素ステーションを設置する目標を掲げています 。

CO2回収・利用・貯留(CCUS)技術:排出源からの直接的なCO2削減

工場や発電所などから排出されるCO2を回収し、地中や海底に貯留したり、燃料や化学製品の原料として利用するCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)技術は、既存の産業構造を活かしつつCO2排出量を削減する有効な手段として注目されています 。

日本の取り組み:実証試験と商用化への挑戦

日本は、CCUS技術の実用化に向けた大規模な実証試験を推進しています。

  • CO2回収技術の開発: 高効率かつ低コストなCO2回収技術の開発に取り組んでいます 。三菱重工業は、化学吸収法によるCO2回収技術を開発し、実証試験を進めています 。
  • CO2貯留技術の開発: 安全かつ安定的なCO2貯留技術の開発や、CO2貯留に適した地層の調査が進められています 。苫小牧CCS実証試験センターでは、CO2の地中貯留の実証試験が行われています 。
  • CO2利用技術の開発: 回収したCO2を燃料や化学製品の原料として再利用する「Carbon Capture and Utilization (CCU)」技術の開発も活発です 。東芝は、CO2と水素からメタンを合成する技術を開発し、実証試験を進めています 。

 

各国の取り組み:先行する商用CCSプロジェクト

世界各国では、すでに商用規模でのCCUSプロジェクトが稼働しています。

  • ノルウェー: 北海油田でのCO2貯留プロジェクトを長年実施しており、CCS技術の商用化に成功しています 。スレイプナーCCSプロジェクトは、1996年からCO2の海底貯留を行っており、世界で最も成功したCCSプロジェクトの一つです 。
  • アメリカ: 大規模なCO2貯留プロジェクトや、CO2回収・利用技術の開発を推進しています 。ペトラノヴァCCSプロジェクトは、年間140万トンのCO2を地中貯留する、世界最大級のCCSプロジェクトです 。
  • カナダ: CO2回収・貯留技術の開発、CO2排出削減政策などを推進しています 。アルバータ州では、CO2排出量を削減するため、大規模なCCSプロジェクトが進行中です 。
  • アイスランド: CarbFixプロジェクトでは、CO2を玄武岩に注入し、鉱物化することで、永久的にCO2を固定化する革新的な技術を開発しています 。

省エネルギー化の推進:身近なところから始めるCO2削減

エネルギー消費量を削減することは、CO2排出量削減に直結する最も基本的な対策です 。家電製品や自動車、建物など、あらゆる分野で省エネルギー化が進められています 。

日本の取り組み:トップランナー制度とZEHの普及

日本は、省エネルギー化を推進するための様々な制度と技術開発を行っています。

  • 省エネ家電の普及促進: 「トップランナー制度」により省エネ基準を強化し、省エネ家電への買い替えを促進しています 。経済産業省は、省エネ性能の高い家電製品に「省エネラベル」を表示し、消費者の省エネ意識向上を図っています 。
  • 自動車の燃費向上: 電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)の普及促進に加え、燃料効率の高いエンジンの開発も進められています 。トヨタ自動車のプリウスは、世界で初めて量産されたハイブリッド車です 。
  • 建物の省エネ化: 断熱性能の向上や、高効率な空調システムの導入が進められています 。ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)は、年間の一次エネルギー消費量が正味ゼロになる住宅として、普及が推進されています 。

 

各国の取り組み:規制強化とグリーンビルディング

世界各国でも、省エネルギー化に向けた取り組みが活発です。

  • EU: 家電製品のエネルギー効率基準を強化し、省エネラベル制度を導入しています 。EUでは、家電製品のエネルギー効率をA+++からGまでの7段階で表示しています 。
  • アメリカ: 自動車の燃費規制を強化し、電気自動車の普及促進に取り組んでいます 。カリフォルニア州では、2035年までにガソリン車の新車販売を禁止する予定です 。
  • 中国: 省エネ目標を設定し、省エネ技術の開発、省エネ家電の普及促進などに取り組んでいます 。中国政府は、2025年までにエネルギー消費量を2020年比で13.5%削減する目標を掲げています 。
  • シンガポール: グリーンビルディング政策を推進し、建物の省エネルギー化、緑化などを促進しています 。

カーボンリサイクル:CO2を「資源」に変える新たな潮流

カーボンリサイクルは、CO2を資源として捉え、燃料や化学製品の原料として再利用する画期的な技術です 。これにより、CO2排出量を削減するだけでなく、新たな価値を生み出し、循環型社会の実現に貢献すると期待されています 。

日本の取り組み:多様な用途への展開

日本は、CO2を様々な有用物質へ変換する技術開発に注力しています。

  • CO2を原料としたプラスチック製造技術の開発: 三菱ケミカルは、CO2を原料としたポリカーボネート樹脂を開発しました 。
  • CO2を原料とした燃料製造技術の開発: ENEOSは、CO2と水素から合成燃料を製造する技術を開発しています 。
  • CO2を原料としたコンクリート製造技術の開発: 鹿島建設は、CO2を吸収するコンクリートを開発しました 。

各国の取り組み:CO2の商業利用への挑戦

世界各国でも、CO2を有効活用する技術開発が進められています。

  • ドイツ: CO2を原料とした化学製品製造技術の開発を推進しています 。コベストロは、CO2を原料としたポリウレタンを開発しました 。
  • アメリカ: CO2を原料とした燃料製造技術の開発を推進しています 。カーボン・エンジニアリングは、大気中のCO2を直接回収し、燃料を製造する技術を開発しています 。
  • 中国: CO2を原料とした建材製造技術の開発を推進しています 。中国建材集団は、CO2を原料としたセメントを開発しました 。
  • アイスランド: Climeworks社は、大気中からCO2を直接回収する技術を開発し、回収したCO2を地下に貯留したり、燃料や化学製品の原料として利用する取り組みを進めています 。

まとめ:CO2削減技術の未来と私たちの役割

地球温暖化を防ぐためには、CO2排出量を大幅に削減することが不可欠であり、そのためには世界中で開発されている多様なCO2削減技術の導入が不可欠です 。再生可能エネルギーの利用拡大、水素エネルギーの活用、CCUS技術、省エネルギー化、カーボンリサイクルなど、それぞれの技術が持つ可能性を最大限に引き出し、CO2排出量削減に貢献していくことが重要です 。

これらの技術開発と並行して、私たち一人ひとりが省エネルギーを意識したライフスタイルを送ることも非常に大切です 。日常生活での小さな工夫が、CO2排出量削減に繋がり、地球全体の課題解決に貢献します。企業や政府に身を委ねるだけでなく、私たち個人としても積極的に行動を起こし、持続可能な未来を築いていきましょう 。

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