はじめに
カーボンニュートラルは、地球温暖化対策の要であり、もはや一部の大企業だけでなく、あらゆる規模の企業が取り組むべき喫緊の課題となっています。中小企業にとっても、取引先や金融機関からの要請など、その影響は無視できません。
しかし、カーボンニュートラルへの移行は、設備投資や業務プロセスの変更など、中小企業にとって負担が大きいと感じるかもしれません。そこで、政府は様々な支援策を用意しています。補助金や助成金、税制優遇、低利融資、専門家による相談窓口など、これらの支援策は、中小企業がカーボンニュートラルに取り組むためのハードルを下げ、円滑な移行を後押しします。この記事では、現在政府が提供している【2024年版】中小企業必見!カーボンニュートラル補助金・助成金まとめ|申請方法・対象も解説を紹介します。2025年に向けての事業計画にお役立てください。
この記事のサマリー
- カーボンニュートラルは、コスト削減、競争力強化、企業イメージ向上など、中小企業にとって多くのメリットがある。
- 中小企業がカーボンニュートラルに取り組むには、「カーボンニュートラルについて知る」「排出量を把握する」「排出量を削減する」という3つのステップが重要である。
- 政府は、中小企業のカーボンニュートラルへの取り組みを支援するため、補助金、融資・税制、専門家サポートなど、様々な支援策を提供している。
- 補助金には、IT導入補助金、SHIFT事業、ものづくり補助金、省エネ補助金などがある。
- 融資・税制には、省エネルギー設備投資利子補給金、バリューチェーン脱炭素促進利子補給事業、脱炭素社会の構築に向けたESGリース促進事業などがある。
カーボンニュートラルに取り組むことは、中小企業にとって以下のようなメリットがあります。
- コスト削減:エネルギー効率の改善などにより、光熱費や燃料費を削減できます。
- 競争力強化:環境への意識の高まりから、脱炭素化に取り組む企業は取引先から高く評価されます。
- 企業イメージ向上:環境問題に積極的に取り組む姿勢を示すことで、企業イメージ向上に繋がり、人材獲得にも有利に働きます。
支援策を活用してカーボンニュートラルを実現する3ステップ
中小企業がカーボンニュートラルの取り組みを進めるには、以下の3つのステップで進めることが重要です。
- カーボンニュートラルについて知る
- 排出量を把握する
- 排出量を削減する
ステップ1:カーボンニュートラルについて知る
カーボンニュートラルに関する基礎知識や、関連する法規制、支援制度などを理解します。
環境省や経済産業省のウェブサイト、中小企業基盤整備機構などが提供する情報を参考にしましょう。
ステップ2:排出量を把握する
自社のCO2排出量を正確に把握します。
電気やガスなどのエネルギー使用量を計測し、排出量を計算します。
排出量の算定には、国や民間企業が提供するツールやチェックシートなどを活用しましょう。
ステップ3:排出量を削減する
CO2排出量を削減するための具体的な対策を検討し、実行します。
省エネルギー化、再生可能エネルギーの導入、燃料転換などが考えられます。
これらの対策には、政府が提供する補助金制度などを活用しましょう。
【重要】中小企業のためのカーボンニュートラル支援策
政府は、中小企業のカーボンニュートラルへの取り組みを支援するため、様々な支援策を提供しています。
代表的な支援策は以下のとおりです。
補助金
- IT導入補助金: 生産性向上に役立つITツール導入を支援する補助金です。
- 対象:排出量算定ツール、エネルギーマネジメントシステムなど
- 効果:排出量の見える化、エネルギー使用量の管理による効率化
- 詳細:IT導入補助金2024 (https://it-shien.smrj.go.jp/)
- SHIFT事業: 工場や事業場におけるCO2削減を支援する補助金です。
- 対象:CO2削減計画策定、省エネ設備導入、電化、燃料転換など
- 効果:エネルギー効率向上、CO2排出量削減
- 詳細:SHIFT事業 (https://shift.env.go.jp/)
- ものづくり補助金: 環境負荷を低減する製品・サービス開発のための設備投資を支援する補助金です。
- 対象:革新的な製品・サービス開発に必要な設備・システム投資
- 効果:競争力強化、環境負荷低減
- 詳細:ものづくり補助金総合サイト (https://portal.monodukuri-hojo.jp/index.html)
- 省エネ補助金: 省エネ設備への更新などを支援する補助金です。
- 対象:省エネ設備への更新、化石燃料から電気への転換など
- 効果:エネルギー消費量の削減、CO2排出量削減
- 詳細:省エネ補助金特設サイト (https://syouenehojyokin.sii.or.jp/)
- ZEB補助事業: オフィスビルなどのZEB化(省エネ性能向上)のための改修費用を補助する制度です。
- 対象:ZEB化に資するシステム・設備機器等の導入、建築物ストックの改修効果の調査
- 効果:建物の省エネ化、快適性向上
- 詳細:ZEB補助事業 (https://siz-kankyou.com/2024correctionco2/)
- 脱炭素ビルリノベ事業: 既存のオフィスビルなどを省エネ化する改修費用を補助する事業です。
- 対象:外皮の高断熱化、高効率空調機等の導入
- 効果:建物の省エネ化、CO2排出量削減
- 詳細:脱炭素ビルリノベ事業 (https://bl-renos.jp)
- CEV補助金: 電気自動車、プラグインハイブリッド車、燃料電池自動車などの購入費用を補助する制度です。
- 対象:電気自動車、プラグインハイブリッド車、燃料電池自動車
- 効果:CO2排出量削減、環境負荷低減
- 詳細:CEV補助金 (http://www.cev-pc.or.jp/)
- 太陽光発電設備等導入補助金: 需要家主導による太陽光発電設備等の導入を支援する補助金です。
- 対象:地域で連携した太陽光発電設備等の導入
- 効果:再生可能エネルギー利用拡大、CO2排出量削減
- 詳細:太陽光発電設備等導入補助金 (https://saiene-support.jp/)
- 自家消費型太陽光発電・蓄電池導入補助金: 自社の敷地内に太陽光発電設備と蓄電池を設置する費用を補助する制度です。
- 対象:自家消費型の太陽光発電設備・蓄電池の導入
- 効果:再生可能エネルギー利用拡大、CO2排出量削減
- 詳細:自家消費型太陽光発電・蓄電池導入補助金 (https://www.eic.or.jp/eic/topics/2024/st_r05c/002/)
- 事業再構築補助金: 事業の業態転換や新規事業参入を支援する補助金です。
- 対象:脱炭素化に貢献する事業
- 効果:事業転換、新規事業参入による競争力強化
- 詳細:事業再構築補助金 (https://jigyou-saikouchiku.go.jp/)
融資・税制等
- 省エネルギー設備投資利子補給金: 省エネ設備導入のための融資の利子の一部を補助する制度です。
- 対象:省エネ設備の導入
- 効果:設備投資の促進、CO2排出量削減
- 詳細:省エネルギー設備投資利子補給金 (https://sii.or.jp/rishihokyu06/)
- バリューチェーン脱炭素促進利子補給事業: サプライチェーン全体で脱炭素化に取り組むための設備投資の融資の利子の一部を補助する事業です。
- 対象:サプライチェーン全体での脱炭素化
- 効果:サプライチェーン全体のCO2排出量削減
- 詳細:バリューチェーン脱炭素促進利子補給事業 (https://epc.or.jp/)
- 脱炭素社会の構築に向けたESGリース促進事業: 脱炭素化に役立つ設備をリースで導入する際に、リース料の一部を補助する事業です。
- 対象:脱炭素機器のリース導入
- 効果:設備投資の促進、CO2排出量削減
- 詳細:ESGリース促進事業 (https://www.ossf.or.jp/)
- CN投資促進税制: 脱炭素化と生産性向上を両立させる設備投資に対する税制優遇措置です。
- 対象:脱炭素化と生産性向上を両立させる設備投資
- 効果:設備投資の促進、CO2排出量削減
- 詳細:CN投資促進税制 (https://www.meti.go.jp/policy/economy/kyosoryoku_kyoka/cnpoint.pdf)
- J-クレジット: 省エネ設備導入などで削減できたCO2排出量をクレジットとして販売することを支援する制度です。
- 対象:省エネ・再エネ設備の導入、森林管理など
- 効果:CO2排出削減量の取引による収益化
- 詳細:J-クレジット制度 (https://japancredit.go.jp/data/pdf/credit_001.pdf)
- 日本公庫による環境・エネルギー対策資金(GX関連): 脱炭素化のための設備投資や運転資金を融資する制度です。
- 対象:GX推進計画に基づく設備投資、運転資金
- 効果:資金調達による脱炭素化の促進
- 詳細:日本公庫 環境・エネルギー対策資金 (https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/15_kankyoutaisaku_t.html#c09)
専門家サポート
- カーボンニュートラル相談窓口: 脱炭素化に関する相談窓口です。専門家が無料で相談に乗ります。
- 対象:カーボンニュートラルに取り組む中小企業
- 効果:専門家によるアドバイス、情報提供
- 詳細:カーボンニュートラル相談窓口 (https://www.smrj.go.jp/sme/consulting/sdgs/favgos000001to2v.html)
- 省エネお助け隊: 地域の専門家が省エネ診断や改善提案を行う制度です。
- 対象:省エネに取り組む中小企業
- 効果:省エネ診断、改善提案、補助金申請サポート
- 詳細:省エネお助け隊 (https://www.shoene-portal.jp/)
- CASE対応に向けた自動車部品サプライヤー事業転換支援事業: 自動車部品サプライヤーの事業転換を専門家が支援する事業です。
- 対象:中堅・中小自動車部品サプライヤー
- 効果:事業転換、技術高度化
- 詳細:CASE対応に向けた自動車部品サプライヤー事業転換支援事業 (https://www.meti.go.jp//policy/mono_info_service/mono/automobile/mikata_project.html)
まとめ
中小企業の皆様、カーボンニュートラルは、地球温暖化対策として待ったなしの課題であり、もはや取り組むか否かを選択できる状況にはありません。規模の大小を問わず、すべての企業が主体的に関与すべき重要な施策です。
しかし、その道のりは決して平坦ではありません。特に中小企業にとっては、取り組みの負担が大きくなりすぎないか、という懸念も当然あるでしょう。そこで、政府は様々な支援策を用意しています。補助金、助成金、専門家によるサポート体制など、これらの支援策は、カーボンニュートラルへの第一歩を踏み出すための心強い味方となります。
まずは自社のCO2排出量を把握し、具体的な削減目標を設定することがスタートラインです。そして、政府の支援策を積極的に活用しながら、一歩ずつ着実に歩みを進めていきましょう。
カーボンニュートラルへの取り組みは、環境保全だけでなく、コスト削減、競争力強化、企業イメージ向上など、多くのメリットをもたらします。持続可能な社会の実現に向けて、今こそ行動を起こしましょう。国の支援を最大限に活用し、脱炭素化をビジネスチャンスに変えていきましょう。
参考資料
経済産業省:中小企業のためのカーボンニュートラル支援策
SBT(Science Based Targets)とは?
SBTとは、Science Based Targetsの略で、科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標のことです。パリ協定で合意された「世界の平均気温上昇を産業革命前比で2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」という目標を達成するために、企業が設定する排出削減目標を指します。Science Based Targets initiative(SBTi)が認定する、科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標のことです。SBTiは、CDP、国連グローバル・コンパクト、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)の4団体によって設立された国際的なイニシアチブです。
SBTが重要視されている理由は、企業の脱炭素化への取り組みを客観的に評価できる指標となるからです。SBTを取得することで、企業は以下のようなメリットを得られます。
- ブランドイメージの向上
環境意識の高まりとともに、消費者は企業の環境への取り組みを重視するようになっています。SBT導入は、企業の持続可能性に対するコミットメントを示すことで、消費者の共感を呼び、ブランドイメージ向上に繋がります。 - 投資家からの評価向上
ESG投資が主流となる中、SBTは企業の長期的な成長性を評価する上で重要な指標となっています。SBT導入は、投資家からの信頼獲得、資金調達、企業価値向上に貢献します。 - 競争力強化
SBT達成に向けた取り組みは、省エネルギー化、資源効率の向上、イノベーション促進など、企業の競争力強化に繋がる効果も期待できます。 - リスク管理
気候変動による事業リスクは、今後ますます高まることが予想されます。SBT導入は、気候変動リスクを早期に特定し、対策を講じることで、事業の安定化に貢献します。 - 従業員のエンゲージメント向上
環境問題への意識が高い従業員にとって、SBT導入は企業への愛着や誇りを高め、モチベーション向上に繋がります。
SBTは、企業規模や業種を問わず、あらゆる企業にとって有益な取り組みです。