農地をCo2吸収源に!期待される不耕起栽培

   by Takumi Hisamatsu        
農地をCo2吸収源に!期待される不耕起栽培
Kabbaraの活動によって生まれる社会へのインパクトをロジックモデルから紐解く[土壌再生事業編]」の記事で、『不耕起栽培』について少し触れました。
不耕起栽培が広がることによるソーシャルインパクト(社会への影響)は、温室効果ガスの排出量減少、また農薬や水の使用量削減に繋がることで生物多様性喪失問題の改善などが挙げられます。
Kabbaraの土壌再生事業のロジックモデル丨不耕起栽培から様々な結果、成果に影響する
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今回は社会への好影響が色々と期待でき注目されている「不耕起栽培」について解説していきます。

不耕起栽培が注目される理由

不耕起栽培とは、読んで字の如く「耕さない農法」のことです。
普通、農業と聞くと耕すイメージがあると思いますが、不耕起栽培は土を耕すことなく自然のまま栽培する方法のことです。
不耕起栽培を採用した農地で育つ大豆
そしてこの農法が、ある理由から現在注目を集めています。
その理由は、従来の農法に比べて土壌に貯留できるCo2の量が増える点にあります。土壌に多くのCo2を貯留できると大気中に放出されるCo2が減り、温室効果ガスの削減に貢献できる。つまり環境改善に向けて有望視されているというわけです。
2015年にパリで行われた気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)でフランス政府が「4/1000(フォ ーパーミル)イニシアティブ」というものを提唱しました。このイニシアティブを簡単にいうと、「農地土壌中の炭素量を増やすことを目指そう」という取り組みです。
土壌中に存在する炭素の量が毎年0.4%ずつでも増えれば、毎年の人為的排出による大気中のCo2 増加量を相殺できる計算であることから、4/1000(フォーパーミル)と呼ばれています。
しかし、従来の農業のやり方では、農地土壌中の炭素の貯留量を増やすことは難しく、増やすどころかむしろ減らさないことさえ難しいのが現状でした。
そこで注目されたのが土壌の炭素貯留量を増やせる不耕起栽培です。

様々なメリットから欧米ではすでに普及

不耕起栽培は土壌の炭素貯留量を増やせるという環境面への効果の他にも、様々なメリットがあります。
例えば、土壌の侵食を防げることや土壌環境の改善による食料の増産。また、”耕す”という作業がないので、作業時間の短縮やトラクターなどの農機具が不要になることで省エネにも繋がります。
このような特徴から、欧米ではすでに不耕起栽培が普及しており、世界最大のトウモロコシ産地であるアメリカでは広く導入されています。世界的な小麦の一大産地であるEUでも、資源・エネルギー低投入型農業への転換を目指すなかで、不耕起栽培が推奨されています。

農地土壌の炭素貯留を買い取る動きも

欧米で不耕起栽培の普及が進んでいる背景の1つに、農地の炭素貯留に金銭的インセンティブを与えようとする農政の動きがあります。
いわゆる「カーボンクレジット」です。
※カーボンクレジット
取り組みによって削減・吸収した温室効果ガスを定量化(数値化)し、金銭などで取引可能にすること。
カーボンクレジットと言えばその対象はCo2を吸収する森林が最もイメージされると思いますが、Co2を貯留する土壌もカーボンクレジットの対象にしようとする動きが進んでいます。
農地の炭素貯留に取り組む農家がカーボンクレジットの取引によって新たに収入を得られる。そんな仕組みをEU、アメリカともに農政を中心に進めており、それが不耕起栽培を普及させる要因の1つともなっています。
すでに独自ルールで貯留量を評価・認定してカーボンクレジットを取引する事例がありますが、今後公的な評価・認定手法が確立されてくると、欧米だけに限らず世界中で炭素貯留に取り組む農家が増えることが期待できます。
農地土壌の炭素貯留量からカーボンクレジット取引ができるようになると、不耕起栽培のメリットである環境改善と食料の安定供給に加えて、農家の所得向上に貢献することが可能となります。
Kabbaraのミッションである「環境負荷ゼロ」と「貧困農業従事者ゼロ」。ここにさらに近づけるというわけです。

不耕起栽培のデメリットを日本の技術で解消

メリットの1つに食料増産がありましたが、それは土壌の状態が健康であることが前提です。農薬や化学肥料を過剰に使い疲弊してる土壌だと、不耕起栽培を導入した当初は収穫量が減ったり、生育の遅れが出たりすることがあります。
ただし、その問題を解消する日本の技術があり、それを使えば土壌の環境を4週間で整え、無農薬でも生産量・味・栄養価を向上することが可能です(実証実験によりエビデンスあり)。
長くなるのでこの技術に関しては別の記事で解説しますが、不耕起栽培をさらに普及拡大させる重要なピースになると期待されていますので、是非次の機会にご紹介させていただこうと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
また、以下の記事でも不耕起栽培についてまとめていますので、是非こちらも併せてご覧ください。
不耕起栽培は世界を救うか

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