ここ最近「サステナブル」や「SDGs」というワードが色んなところで聞かれるようになってきています。テレビCMやテレビ番組の特集でも扱われることが増えてきているので、世間にもかなり浸透してきている感じがしますね。
年末年始、長崎県の実家に帰省したときのことです。
両親と一緒にテレビで流れていたウーバーイーツを題材にしたお笑いコントを見ていると、母親から「ウーバーイーツって何ね?」と真顔で聞かれました。坂道が多く自転車に乗らない長崎ではウーバーイーツは浸透していないんだ!と驚いたのですが、それと同じくらい驚いたのが、そんなうちの家族でもSDGsは知っていたことです。
親戚の家にお邪魔したときも「これが我が家のSDGs」といって、生ゴミを裏の畑の堆肥として活用していて、「ウーバーイーツは知らないけどSDGsは知ってるんだ」と改めてSDGsが浸透していることを実感しました。
そんな中、雑誌「Forbes JAPAN(フォーブス・ジャパン)2021年11月号」で「AIが厳選!最強のサステナブル企業100社」という特集を見て、サステナブルやSDGsの重要性を再認識したので、今回はその内容について触れていきます。
サステナブル企業ランキング1位は「セイコー・エプソン」
今回のランキングは、東証一部上場の全2189社が対象となっており、算出に使用されているのは財務データと、非財務データ、ESG/SDGsのグローバル指標です。
例えば、CO2排出量、エネルギー消費量、女性従業員・役員の比率、労災事故検出、残業、従業員満足度、労働分配率、廃棄物排出量、水消費量、研究開発費、取締役の任期、取締役の出席率などなど、いろんなデータをもとに算出されています。
いままでの企業の格付けは収益力が軸となっている場合が多かったですが、今は収益だけでなく社会インパクトも重視されてきています。
そのためこのランキングは、収益力部分の財務データと、社会インパクト部分の非財務データをあわせたランキングになっており、お金を稼げるだけでなく、長期で社会を良くして多くのステークホルダーとともに共存共栄をはかる試みをしているか、をスコア化したものとなっています。
そしてそのランキングで1位になったのが時計やプリンターで有名な「セイコーエプソン」です。
セイコーエプソンは時価総額ランキングで2189社中175位と上位に位置し、社会インパクトの面でも高いスコアを記録していることから、総合ランキング1位となっています。
社会インパクト面で具体例を挙げると、主力商品のプリンターで去年発売したものでは、A4から文書3万ページの印刷時の消耗品のCO2排出量を73%削減。また、個包装でも商品名をラベル化して貼り付ける仕様にして、紙の使用量を大幅に削減。CO2排出量を約10%削減。さらに新技術を使って大容量のインクボトルで交換の手間を軽減し資源の消費量を削減したプリンターでは、カートリッジ方式と比べてCO2排出量を84%削減など、自分たちが持つ技術を活かし、多くの面で環境への貢献を実現しています。
また、そういった実績に加え、商品やサービスがすべて環境に貢献できるようにしようという考え方を社内全体に浸透できている点がランキングトップの要因となっています。
環境を汚さないために、資源を循環させるために、こういうことをやっていこうと社内に呼びかけると、社員から次々に手が挙がる。それが現在のセイコーエプソンの社風となっているようです。本社が諏訪湖のほとりにあり「諏訪湖を汚してはならない」という創業当時からのポリシーがしっかりと受け継がれていると感じますね。
SDGsへの取り組みが企業価値向上へ連鎖
今回のランキングでは、ESG/SDGs国際指標に加えて、Forbes JPANA独自のスコアが加えられています。それが次のランキングです。
- 発言一貫度ランキング
- 女性活躍ランキング
- 長期コミットメントランキング
- ポテンシャルランキング
- サプライヤー配慮ランキング
- CFO・財務視点ランキング
そしてこの中のポテンシャルランキングでは、「統計的因果探索」という手法で「原因と結果」の因果関係を明らかにしているのですが、これにより収益に直結しないと思われていたESG/SDGsの三要素に面白い結果が出ています。
- 一人あたりの人件費を向上させると、2〜4年後に営業利益率が向上。1年後に資産回転率が上がる。
- 女性役員・管理職の比率を上げると、3〜4年後にPBR(株価純資産倍率)が高くなり、4〜5年後に資産回転率が上がる。
- 売上高あたりのCO2排出量を減らすと、4〜5年後にPBRが高まり、0〜1年後に資産回転率が上がる。
つまり、人件費の向上や女性管理職比率の向上、CO2削減に取り組むと、将来的に企業の収益性向上に繋がる。ESG/SDGsを意識した取り組みがドミノ倒しの連鎖を起こし好循環を生む、というデータが今回の結果によって明らかになったということです。
サステナブル・SDGsが重要な経営戦略へ
テレビCMなどでも「サステナブル」や「SDGs」という言葉が頻繁に出てくるようになっており、持続可能な社会への関心はますます高くなっています。
「サステナブルとかSDGsは余裕のある大手企業だけがやっていればいい」と考える人も、今はまだ多いのではないかと思います。しかしこれからの時代に企業が生き残っていくためにはサステナブルか、否かという視点がかなり重要視されることは確実です。
実際、「ESG投資はコストがかかり、もうからない」という議論が投資側の中でされていましたが、この数年のESG投資のパフォーマンスがよかったためその懸念が払拭され、ESG投資の市場規模は好調な伸びを見せています。2020年度の世界のESG投資額は総額35.3兆ドル(約4,050兆円)とかなり大きな市場となっています。
今後投資対象として選ばれるかどうかの基準にサステナブルか否かは、大きく関係してくるということになります。
ESG投資とは
従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)に配慮している企業を重視・選別して行なう投資のこと
従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)に配慮している企業を重視・選別して行なう投資のこと
また、過去にアメリカのスポーツメーカー「ナイキ」で問題となった児童労働問題。この時は製品の製造を委託する東南アジアの工場で、児童労働や劣悪な環境での長時間労働が発覚し、世界的な不買運動につながりました。
今後サステナブルへの関心がさらに高まると、SDGsに無関心な企業の商品は消費者に選ばれなくなる、といった社会になることが十分に考えられます。
投資選定、消費者の購買、また就活で、選ばれる企業となりこれからの時代を生き残るためには持続可能性への戦略が欠かすことのできない経営の軸となりそうです。
課題は透明性のある情報開示
サステナブルやSDGs経営が重視され、ESG投資やインパクト投資の市場規模が年々成長している中で、次の課題としてあがっているのが「SDGsウォッシュ対策」です。
SDGsウォッシュとは、SDGsに取り組んでいるように見せて、実態が伴っていないことを指す言葉です。「実態以上にSDGsに取り組んでいるように見せること」ですね。
このようなSDGsウォッシュを阻止するため、世界共通の評価基準や規制の整備が進んでいます。
私たちKabbaraでは、SDGsウォッシュ対策の1つにブロックチェーンの活用を計画しています。ブロックチェーンに記録されたデータは改ざんができませんので、自分たちの活動を通してどれだけのCO2を排出したか、また吸収したか、といった社会インパクトの数値をブロックチェーンに記録し管理するといった活用方法です。
例えば、「農地をCo2吸収源に!期待される不耕起栽培」の記事で話した、「温室効果ガス削減のために土壌に炭素を貯留する」という方法。
そのために土壌の炭素貯留量を増やすための取り組みを行い自分たちのSDGs活動として発信する場合、どれだけ炭素貯留量が増えたか?を計測し公開することが必要になります。
土壌への炭素貯留の動きが進んでいるヨーロッパでは、下の写真のように、地面に専用の機械を埋め込み、土壌の炭素量を計測しGPSで管理する方法があります。
このデータを、人を介さずに自動で計測しブロックチェーンに記録できれば、その内容の信頼性を担保することができます。さらにブロックチェーンですので暗号資産とも相性が良く、農家の方が土壌貯留量を増やす活動に取り組み、その影響で土壌の炭素貯留量が増えた場合、その分をそのままカーボンクレジット化し、購入者と繋ぐことができれば、環境に貢献した農家は直接報酬を受け取ることが可能になります。
地球に良いことをすればするほど報酬が得られる仕組みですね。
その実現のためには、世界共通の評価基準に加え、それを証明する透明性のある情報開示が必要になるので、その課題の解決に向けて私たちも研究を続け実装に向けて尽力していきます。少しでも興味を持たれましたら、これら実現のための活動へのご参加、お待ちしています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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