
はじめに
今回は地球環境、特に地球温暖化に関する疑問に焦点を当ててみたいと思います。「本当に温暖化は起こっているのか?」「氷河期が来るという話は本当なのか?」といった疑問に対し、NASAをはじめとする信頼できる機関のデータや最新の科学的知見に基づいて深掘りしていきます。
サマリー
・地球温暖化:その主な原因がCO2の排出増加であることを明確に示しています。
・「氷河期が来る」という言説は現在の温暖化を否定する根拠にはなりません。
・地球温暖化は私たちの生活に多岐にわたる深刻なリスクをもたらしています。
・私たちにできること:持続可能な未来へのロードマップ
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地球温暖化は「人為的活動」によって進行しているのか?
まず、地球温暖化とは何かを再確認しましょう。地球温暖化とは、「人間の活動が活性化していくにつれて、地球全体の平均気温が上昇している現象」のことです 。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次評価報告書(2021年)によると、世界の平均地上気温は1850年から2020年の期間に1.09℃上昇しています 。このデータは、近年の気温上昇が顕著であることを示しています 。
この気温上昇の主要な原因とされているのが、温室効果ガスの増加です。特に、二酸化炭素(CO2)の排出量増加が大きく影響しています。産業革命以降、化石燃料の大量消費や森林破壊など、人間の経済活動が活発化することで、大気中のCO2濃度は劇的に上昇しました。産業革命前のCO2濃度は280ppmでしたが、現在は400ppmにまで増加しています 。これは、氷期と間氷期のCO2濃度の差(約100ppm)をも上回る変化であり、人間活動が天文学的な影響に匹敵するほどの大きな影響を地球に及ぼしていることを示しています 。
NASAのデータでも、地球が受ける太陽のエネルギー量(Total Solar Irradiance)は1950年代以降、純増していないにもかかわらず、地球の平均温度は上昇し続けていることが示されています 。NASAは「過去半世紀にわたって観測された地球の気温上昇傾向を、太陽が引き起こした可能性は極めて低い」とし 、20世紀半ばから観測されている地球温暖化の原因は、人間の活動にあると明確に表現しています 。これらの科学的なデータは、地球温暖化が単なる自然現象ではなく、人間活動に強く起因していることを明確に裏付けています。
「氷河期が来る」は誤解?地球の気候サイクルと現在の温暖化の違い
一部で「地球は氷河期に向かっている」という言説を耳にすることがあります 。これは、地球の気候が過去に何度も氷河期と間氷期を繰り返してきたことに起因する考えです。南極のボストーク氷床コアのデータを見ると、過去42万年間で4つの氷期と5つの間氷期があったことが分かります 。実際、過去の間氷期の中には、現在よりも1〜3℃暖かい時期もありました 。
しかし、現在の温暖化は、この自然のサイクルとは異なる様相を呈しています。現在の間氷期は約1万1千6百年続いており、間氷期の平均的な期間が約1万~1万5千年であることから、まだ数千年継続する可能性が高いとされています 。さらに、温暖化の影響で間氷期が長くなる可能性も指摘されています 。
「温暖化ではなく小氷期へと向かっている」という情報として、主に以下の3点が挙げられます 。
太陽の黒点運動が減少している!? : 太陽の黒点数が減少すると、地球に到達する太陽エネルギーも小さくなると言われています 。過去には、黒点がほとんど観測されない「マウンダー極小期」にロンドンのテムズ川が凍り付くなど、寒冷化を示唆する記録が残っています 。しかし、最近の太陽は非常に活発であり、2019年12月には第25活動周期に突入し、大型フレアの発生も続いています 。NASAのデータでも、太陽エネルギーの純増がない中で気温が上昇しているため、現在の温暖化を太陽活動で説明することは難しいとされています 。ただし、太陽活動の低下が偏西風の蛇行を引き起こし、異常気象につながるという見解もあります 。

太陽内部の2つの電磁波が鏡写しのように相殺し「マウンダー極小期」のようになる!? : 英ノーザンブリアン大学のヴァレンティナ・ジャルコヴァ教授による、太陽内部の磁場変化がミニ氷河期を引き起こす可能性に関する研究があります 。しかし、ジャルコヴァ教授自身が後に「気候変動には言及していない」と述べており 、この理論はあくまでシミュレーションに基づくもので、断言は難しいとされています 。仮に「マウンダー極小期」が来たとしても、その影響は産業革命前の平均気温より0.5℃、大きく見積もっても1℃未満とされており、温暖化が進んだ場合の影響を打ち消すほどではないという見解もあります 。
氷河期への最大の影響は火山活動? : 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のレポートは、火山噴火によって大気中に放出される微粒子(エアロゾル)が太陽光を反射・遮断し、地球を寒冷化させる効果を持つことを指摘しています 。実際に、1300年代の小氷期や1600年〜1850年のドルトン極少期には、火山活動が活発化していたことが分かっています 。大規模な火山噴火が連続して発生すると、氷河期へのトリガーとなる可能性も指摘されています 。他にも火山噴火と関連のある情報としては以下の通りです。

氷コアの硫酸塩濃度のピークは過去の火山噴火と関連している。硫酸同位体分析により、地球規模の気候影響を伴う成層圏噴火(赤)と、局所的な気候影響しか有さない対流圏噴火(青)とを区別することができる。過去2600年間に南極大陸ドームCで記録された噴火の大部分は成層圏噴火起源のものである。
(引用元 : 東京工業大学 地球規模の寒冷化を引き起こす大規模噴火記録)
しかし、現在のところ、地球北部の氷床は冬でも融解している状況であり、寒冷化への明確なシグナルは見えていません 。もし地球北部の氷床が発達することが確認されれば、そこから約1万年かかる氷河期が始まりますが 、現段階では氷河期が間近という懸念は置いておいてよいでしょう 。
つまり、「氷河期が来る」という話は、地球の長期的な気候サイクルの一部や、特定の自然現象の影響を指摘したものですが、現在の急激な温暖化を否定する根拠にはなりません。むしろ、現在の温暖化は、過去の自然な変動とは異なる、人間活動によって引き起こされた異常な現象として捉えるべきなのです。
氷河期到来の懸念は杞憂か?現時点での結論
地球が将来的に氷期へ向かう可能性については、氷床の動向が重要な指標となります。しかし、現状は「氷期が近づいている」というよりも、むしろ「温暖化が進行している」と考えるべき科学的根拠が多く存在します。
氷期到来の兆候は?
一般的に氷期が訪れるきっかけは、北半球の氷床が拡大し続けることです。しかし、残念ながら、現在の地球ではその兆候は見られません。むしろ、当ブログの以前の記事「元マイクロソフト社長の記事「環境破壊を「甘く見る人」が2040年直面する苦難」から今を考えてみる」でも述べたように、北極圏の氷床は冬でも融解が進んでいます。氷床の下を流れる水は凍結せず、氷床自体の動きも止まっていないのが現状です。
地球の氷期は平均約10万年の周期で訪れ、現在の間氷期から氷期への移行には数万年を要します。現在の間氷期は約1万1,600年続いており、一般的な間氷期の期間(約1万~1万5千年)を考慮すると、まだ数千年継続する可能性が高いとされています。さらに、地球温暖化の影響でこの間氷期がさらに長期化する可能性も指摘されています。
一方で、突発的な大規模な火山噴火が、地球を寒冷化させる「氷河期へのトリガー」となる可能性も指摘されています。火山灰が大気中に広がり太陽光を遮断することで、一時的ながら地球全体の気温を下げる効果があるためです。
太陽活動と地球温暖化:最新の科学的知見
「太陽の活動が低ければ地球は寒冷化するはずでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、現在の地球の状況はこれまでの常識とは異なる様相を呈しています。
- 太陽活動と平均気温の乖離: 太陽の黒点活動が比較的低調であった時期にもかかわらず、地球の平均気温は上昇を続けています。これは、地球温暖化の主要な原因が太陽活動ではなく、人間活動による温室効果ガスの排出であることを示唆しています。
- 太陽活動の活発化: 近年、太陽活動は再び活発化の兆しを見せています。もし太陽が活発な活動を継続するなら、これまでシミュレーションされてきたよりも早く、温暖化の影響が拡大する可能性も否定できません。
現在のところ、大規模な氷床の発達など、明確な寒冷化の兆候は観測されていません。そのため、短期的には「氷河期が間近に迫っている」という懸念を抱く必要はないと考えられます。
もし将来的に地球北部の氷床が顕著に発達するなどの明確なシグナルが確認されれば、そこから約1万年をかけて本格的な氷河期が到来するでしょう。その際には、地球全体で長期的な視点に立った戦略が必要となります。
しかし、今はまだ寒冷化の兆候が現れていない状況で、「温暖化対策は無意味である」と結論づけるのは非常に危険です。寒冷化を待つには時間がかかりすぎる上、むしろ温暖化の影響が加速する可能性も考慮すべきです。
まとめ:私たちが今、温暖化対策を行うべき理由
私たちが地球温暖化対策を今すぐ実行すべき理由は、「今、できることを最大限に行うこと」に集約されます。未来の不確実な状況を待つのではなく、現在進行形で進む気候変動の影響を軽減し、より良い未来を築くために行動することが不可欠です。
具体的には、以下のような行動が求められます。
- 環境に貢献している企業を応援する: 例えば、科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標を掲げる「SBT認定」を受けている企業などをチェックし、そうした企業の製品やサービスを積極的に利用することで、間接的に温暖化対策に貢献できます。
- 環境保護活動に参加する: 地域や国際的な環境保護団体が実施する運動に参加したり、ボランティアとして活動したりすることも、大きな力になります。
- 主体的に情報を収集する: 環境省などの公的機関が発表する最新のデータや資料を確認し、地球温暖化に関する正確な知識を身につけることが重要です。
地球温暖化は、私たちが直面する最も重要な課題の一つです。未来の世代に持続可能な地球を残すためにも、私たち一人ひとりが科学的根拠に基づき、今できる最善の行動を起こすことが求められています。