政府は、脱炭素社会の実現とエネルギーの安定供給などへの対応を加速させるため、企業に「排出量取引」への参加を義務づけるなど、2040年に向けた新たな国家戦略を取りまとめることになりました。13日、総理大臣官邸で開かれた「GX=グリーントランスフォーメーション実行会議」には、岸田総理大臣をはじめ、齋藤経済産業大臣や経団連の十倉会長などが出席しました。
以下、一部抜粋。
脱炭素社会とエネルギー安定供給の課題
日本はエネルギーの8割以上を海外からの輸入に頼っており、特に原油は中東からの輸入が中心です。近年の中東情勢の不安定化や円安の影響を受け、エネルギー価格は高騰し、国民生活に大きな負担となっています。さらに、地球温暖化対策として、2050年に温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を目指す必要があります。そのためには、化石燃料への依存度を低減し、再生可能エネルギーや原子力などの脱炭素エネルギーの導入を拡大する必要があります。しかし、脱炭素エネルギーへの投資は長期にわたり、企業にとってリスクが見通しにくいという課題があります。
新たな国家戦略の概要
新たな国家戦略は、以下の三つの柱に基づいて策定されます。
- 脱炭素:2040年までに温室効果ガスの排出量を大幅に削減し、カーボンニュートラルを目指す。
- エネルギー安定供給:再生可能エネルギーや原子力などの脱炭素エネルギーの導入を拡大し、エネルギーの安定供給を確保する。
- 経済成長:脱炭素化と経済成長を両立させ、新たな産業の創出や雇用の拡大を目指す。
具体的な施策としては、以下のようなものが検討されています。
- 排出量取引:二酸化炭素の排出量に応じて企業などにコストを負担する排出量取引を2026年度から本格的に開始し、排出量の多い企業の参加を義務化する。
- GX経済移行債:総額20兆円規模の新たな国債、GX経済移行債を発行し、民間の投資を後押しする。
- データセンターなどの産業集積:データセンターなど電力を大量に使用する産業を脱炭素エネルギーが充実している地域に集積する。
- 水素、アンモニア供給拠点の整備::水素やアンモニアの供給拠点を輸入拠点の港湾などを中心に整備する。
- 次世代技術への支援:次世代太陽光発電や蓄電池などの次世代技術への集中的な支援を行う。
岸田文雄総理大臣は、「産業構造、産業立地、技術革新などといった経済社会全体の大変革と脱炭素への取り組みを一体的に検討し、2040年を見据えたGX国家戦略として統合していく中で、官民が共有する脱炭素への現実的なルートを示したい」と述べています。経団連の十倉会長は、「排出量取引 義務化自体は必要」と述べ、排出量取引への企業などの参加義務化への理解を示しています。政府は、新たな国家戦略を年内に取りまとめ、2025年度から具体的な実行に移していく予定。この戦略が、脱炭素社会の実現とエネルギーの安定供給、そして経済成長に貢献できるかどうか、今後の動向に注目する必要があります。
内閣官房 GX実行会議: https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gx_jikkou_kaigi/index.html
経済産業省 GX実行計画: https://www.meti.go.jp/press/2024/04/20240419005/20240419005.html
環境省 温室効果ガス排出量取引制度: https://www.env.go.jp/earth/ondanka/det/
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