脱炭素経営で企業価値向上!SBT認定企業の成功事例と未取得企業への警鐘

   by kabbara        
脱炭素経営で企業価値向上!SBT認定企業の成功事例と未取得企業への警鐘

本日は、WWFジャパンより、紹介されたSBTに関する考察をご紹介いたします。
日本企業が2024年8月時点で温室効果ガス削減の科学的目標であるSBT(Science-Based Targets)の認定、およびコミット数で世界1位となったことが紹介されています。SBTは、企業の気候目標がパリ協定に基づき、1.5度の気温上昇抑制に適合しているかどうかを評価する国際基準で、WWFなどが設立したSBTi(Science Based Targets Initiative)によって認定されます。

WWFジャパンは、世界約100カ国で活動する環境保全団体WWFの日本支部です。地球上の生物多様性を守るため、気候変動対策、森林保全、海洋保全、野生生物保護など、幅広い分野で活動しています。企業や政府への働きかけ、環境教育、調査研究などを通して、人と自然が調和して生きられる未来を目指しています。

SBTの意義と役割

SBTは企業が中長期的な視点で温室効果ガスの削減目標を掲げ、それを実行し進捗を評価するための重要なガイドラインです。SBT認定を受けた企業は、気候変動に対して科学的根拠に基づいた対策を講じることを約束し、これにより投資家やサプライチェーン上の取引先からの信頼を得られます。さらにSBTは、世界中の企業が参加するデファクトスタンダード(事実上の国際標準)となっており、企業の脱炭素化に向けた基本指針となっています。

SBT認定の増加は、特に気候変動対策が急務となる国際的な枠組みの中で、企業が持続可能な成長を目指すための重要なステップです。特に日本では、ここ数年でSBT認定を取得した企業が急増しており、2024年8月には認定およびコミット数で日本が世界1位となりました。これまではイギリスが1位でしたが、日本企業の積極的な取り組みによってこの順位が逆転しました。

日本企業の取り組みと課題

2024年8月時点でSBT認定を受けた日本企業のうち、約320社が大企業に該当し、そのうち約250社は東証プライム市場に上場しています。また、日経平均株価の構成銘柄225社のうち、51%にあたる115社がSBT認定を取得、またはコミットしています。特に電子機器、機械、建設・エンジニアリング、医薬品・バイオテクノロジーといったセクターでの認定が多く、中小企業のSBT認定も急速に増加しています。2023年1月には214社だった中小企業の認定が、2024年8月には962社にまで増えました。

一方で、GHG(温室効果ガス)排出量が多い大企業の取り組みは遅れています。例えば、日経平均構成銘柄のうちGHG排出量が多い上位20社のうち、SBT認定を受けているのはわずか5社(25%)です。さらに、最新の1.5度基準での認定を受けた企業はなく、多排出企業の取り組みの遅れが課題となっています。このような企業のGHG排出量は、一部の小国に匹敵する規模であり、これらの企業がより科学的かつ野心的な削減目標を設定することが重要視されています。

金融機関の対応状況

日本の金融機関のSBT取得・コミット状況もまだ少なく、日経平均に構成される金融機関20社のうち、コミットしているのはSOMPOホールディングスのみであり、1.5度基準で認定を受けているのはクレディセゾンのみです。これに対し、隣国韓国では主要金融機関がすでにSBT認定を受けており、台湾でも18社が認定を取得しています。この差は、日本の金融業界が脱炭素に向けて遅れを取っている現状を示しています。。

今後の見通しと企業への影響

今後、SBT未取得の企業に対しては、さまざまな方面からプレッシャーが高まると予想されます。多くの企業が2030年を削減目標達成の期限として設定しており、SBT認定済みの企業は自社のバリューチェーン全体での脱炭素化を求めるようになります。したがって、SBT未取得の企業は取引先や金融機関からも、気候目標の説明を求められる可能性が高まります。これに早期に対応することで、企業は将来的な経営リスクを回避できるでしょう。

SBTの価値と今後の方向性

SBTは企業の気候アクションにおいて必須の要素となっており、グリーンウォッシュ対策にも有効です。SBT取得は、1.5度目標の達成に向けた具体的な行動を企業が示すための証明であり、これにより企業は投資家や取引先からの信頼を得ることができます。また、欧州ではSBTを基準とした法的規制も進展しており、今後ますますその重要性が増していくと考えられます。

企業が持続可能な未来を築くためには、SBT認定を取得し、気候変動対策を科学的かつ戦略的に進めることが重要です。特に日本企業は、すでに世界をリードする立場にあり、その動向は他国にとっても大きな参考となるでしょう。

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