「Floating House(フローティングハウス)」という水の上に浮かぶ住宅を知っていますか?
わたしたちが住む日本では水に浮かぶ住宅はあまり身近ではありませんが、ヨーロッパ、特にオランダでは実際に水上に浮かぶ家を購入し住み始めている人々が多くいます。
水害の多いオランダでは、古来より水に抵抗する水害への対策を行っていたそうですが、様々な技術が発展した昨今では「抵抗」ではない新たな手段を取り入れ成功。それが当たり前となっており、代表的な例がこのFloating Houseです。
オランダでは1995年の洪水災害で25万人が避難生活を余儀なくされた災害をはじめ、地球温暖化などの理由から、海水面の上昇、集中豪雨や冬の雨が増え、短時間で洪水が発生してしまうなど、19世紀に入ってから水の害を止められない状況が続いているそうです。
しかし相手は自然、どんなに科学技術が発展しても抵抗できないものはある。地震大国に住むわたしたちもその感覚は理解できるのではないでしょうか?
「対抗」する手段ではなく「共存」する手段
何世代にもわたり水害で家を失い続けてきたオランダの人々が、最善の方法として選択したのが水との「共存」です。害を与える原因そのものの上で生活を送る道を選択した今の現状を、オランダの先人たちが知ったら度肝を抜かすことでしょう。
わたしがFloating Houseを知って驚いたことは2つ。
1つ目は、ほぼ既存の技術で成り立っているということ。新たな取り組みには、新たな技術や方法が取り入れられることが多いですが、ほぼすでに使われている技術や製品で実現できていることはコストや安全面などにおいて良い面が多い。しかも、すでにオランダ全土で約1万世帯(2万人)以上が今この瞬間にも生活しているのですから、もはやテストケースではなく、もちろん夢物語であるはずもなく、オランダの人々にとっては当たり前となっているのです。既存の技術を使うということは、導入スピードが早くなるというメリットがありますね。
そしてさらに、このFloating Houseでは、陸上ではなく水上で生活を完結するために必要な設備として、太陽光発電や生活排水のバイオろ過システム、水上での移動手段の充実、など様々な設備がはじめから搭載完備されています。
では、2つ目にわたしが驚いたことは、新しい設備やテクノロジーが満載だからでしょうか?それとも、水上だけで生活する設備が完璧に整っているからでしょうか?
いいえ、違います。
実は、それらのFloating Houseで生活を完結するために必須な設備がほぼ全て、CO2削減や水のロス、節電などの様々な環境負荷を減らす大きな二次的効果を生んでいることです。この記事のタイトルの通り、元々の目的である水害への解決策として作られたこの計画は、結果的にものすごい大きな環境問題へ貢献しているのです。
最近では、オフィスビルやシアター、ホテルタワーなど様々な建物が計画され、すでにわたしたちが利用できるものも沢山あります。ぜひ興味のある方は調べてみてください。
この水上生活という水害に対する解決策は、国土の4分の1が海抜以下となっているオランダならではの斬新な発想から生まれたものですが、わたしたちがこれから意識していかなければいけない気候変動や環境問題に対する解決策は、このオランダの例のように意外な発想から見つかり、そして想像していなかった大きな効果を生むのかもしれません。
(出典元:Water Studio.NL)