昨今、DX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉を頻繁に耳にするようになりました。DXとは「デジタル技術を活用した変革」を意味し、企業にとってこれから欠かせない戦略のひとつといえます。
DXに加えて、いま注目されているのが「SX」という言葉です。カーボンニュートラルの実現をはじめとする環境に対する意識変革を受け、企業は持続可能性を重視した経営への転換が求められています。そうした中で、社会と企業のサステナビリティを実現する「SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)」が注目されています。
SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)とは?
SXとは、企業が短期的な売上を追求せずに社会全体の課題を踏まえ、中長期的な価値創造を高めていく持続可能性を重視した経営を指します。SXは、2019年から経済産業省が主体で始まった「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会」のなかで初出した言葉で、そこでは下記のように定義されています。
不確実性が高まる環境下で、企業が「持続可能性」を重視し、企業の稼ぐ力とESG(環境・社会・ガバナンス)の両立を図り、経営の在り方や投資家との対話の在り方を変革するための戦略指針
日本においてSXが認知されるようになった背景として、経済産業省経済産業政策局の「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会」が2020年8月に発表した中間取りまとめにおいて、「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)の実現に向けて」と題するレポートを発行したことがあげられます。具体的な取り組みとしては、以下の3点です。
- 企業としての稼ぐ力(強み・競争優位性・ビジネスモデル)を中長期で持続化・強化する、事業ポートフォリオ・マネジメントやイノベーション等に対する種植え等の取り組みを通じて、企業のサステナビリティを高めていくこと
- 不確実性に備え、社会のサステナビリティをバックキャストして、企業としての稼ぐ力の持続性・成長性に対する中長期的な「リスク」と「オポチュニティ」双方を把握し、それを具体的な経営に反映させていくこと
- 不確実性が高まる中で企業のサステナビリティを高めていくために、将来に対してのシナリオ変更があり得ることを念頭に置き、企業と投資家が、①②の観点を踏まえた対話やエンゲージメントを何度も繰り返すことにより、企業の中長期的な価値創造ストーリーを磨き上げ、企業経営のレジリエンスを高めていくこと
企業の稼ぐ力を強化する
稼ぐ力とは、企業の強み、競争優位性、ビジネスモデルを中長期的に強化し続けることです。たとえ、会社が価値のある取り組みをしていても、存続ができなければ意味がありません。日本企業は、世界的に最高峰の技術がありながら低収益といわれています。 このような状況を打破するためには、デジタル技術を駆使し、ビジネスモデルの転換や生産性向上を高め、企業価値を高めることが重要です。
稼ぐ力とは、企業の強み、競争優位性、ビジネスモデルを中長期的に強化し続けることです。たとえ、会社が価値のある取り組みをしていても、存続ができなければ意味がありません。日本企業は、世界的に最高峰の技術がありながら低収益といわれています。 このような状況を打破するためには、デジタル技術を駆使し、ビジネスモデルの転換や生産性向上を高め、企業価値を高めることが重要です。
社会のサステナビリティを経営に反映させる
ここ半世紀で、パソコン、スマートフォン、SNSが登場し、今では電気、水道、ガスと同様のインフラとしての地位を確立しています。今後は、ここまでの半世紀での進化スピードを凌駕する勢いで技術発展をするでしょう。このように、VUCA(※)と呼ばれる先の読めない不確実なビジネス環境では、常に想定外の変化(良い変化・悪い変化)が起こることを念頭に置きながら、投資家と対話を重ねていき、事業経営を実施する必要があります。
ここ半世紀で、パソコン、スマートフォン、SNSが登場し、今では電気、水道、ガスと同様のインフラとしての地位を確立しています。今後は、ここまでの半世紀での進化スピードを凌駕する勢いで技術発展をするでしょう。このように、VUCA(※)と呼ばれる先の読めない不確実なビジネス環境では、常に想定外の変化(良い変化・悪い変化)が起こることを念頭に置きながら、投資家と対話を重ねていき、事業経営を実施する必要があります。
企業経営のレジリエンスを高める
レジリエンスとは、急激な変化や逆境に見舞われても自律的に立ち直る能力を指します。新型コロナウイルスの感染拡大を契機に注目されている言葉です。ここでいうレジリエンスとは、想定外の事態におけるリスク対応を指しています。例えばBCP対策を講じたり、デジタル技術を活用した柔軟な働き方や採用など、変化に適応するために柔軟性のある組織経営がSXでは必要不可欠です。
レジリエンスとは、急激な変化や逆境に見舞われても自律的に立ち直る能力を指します。新型コロナウイルスの感染拡大を契機に注目されている言葉です。ここでいうレジリエンスとは、想定外の事態におけるリスク対応を指しています。例えばBCP対策を講じたり、デジタル技術を活用した柔軟な働き方や採用など、変化に適応するために柔軟性のある組織経営がSXでは必要不可欠です。
SXの成功に欠かせない「ダイナミック・ケイパビリティ」(企業変革力)
「ダイナミック・ケイパビリティ」は、2020年5月に経済産業省・厚生労働省・文部科学省が共同で発表した「ものづくり白書2020」の中で取り上げられ、製造業界を中心に注目を集めている概念です。同白書では、ダイナミック・ケイパビリティを「日本の製造業の課題を考えるにあたって注目すべき戦略経営論」と位置付け、その重要性を強く訴えています(2020年版ものづくり白書 第1章 第2節「不確実性の高まる世界の現状と競争力強化」より)。
ダイナミック・ケイパビリティとは、カリフォルニア大学バークレー校のデイヴィッド・J・ティース氏によって提唱された戦略経営論で、「環境や状況が激しく変化する中で、企業がその変化に対応して自己を変革する能力」と説明されています。つまり、「環境に適応して、組織を柔軟に変化させる力」のことです。さらに、デイヴィッド・J・ティース氏は、ダイナミック・ケイパビリティは、以下の3つの能力に分類できるとしています。
- 感知(センシング):脅威や危機を感知する能力
- 捕捉(シージング):機会を捉え、既存の資産・知識・技術を再構成して競争力を獲得する能力
- 変容(トランスフォーミング):競争力を持続的なものにするために、組織全体を刷新し変容させる能力
具体例として、「ものづくり白書2020」では、大手化学メーカーのA社を挙げています。A社は、もともと写真フィルムの製造販売を主力事業としていましたが、2000年以降のデジタルカメラの普及により写真フィルム市場が激減すると、自社のコア技術を化粧品製造に応用するなどして、業態を転換しました。現在は化粧品、医療品、再生医療などヘルスケア領域を主力事業とする企業に生まれ変わっています。
なぜ、ダイナミック・ケイパビリティが企業に求められるいるのか
近年、英国のEU離脱や米中貿易摩擦に代表される地政学的リスクや、頻発する自然災害、急速な技術革新などの影響を受けて、私たちのビジネス環境は不安定な状況が続いています。さらに、2020年には、新型コロナウイルスの感染拡大が発生し、ますます世界は不確実性に満ち、まさに「何が起こるかわからない時代」に突入しつつあります。
そうした時代において、企業は先行きが読めないことを前提として、経営戦略を練らなければなりません。「何が起こるかわからない時代」には、「何が起こっても対応できる戦略」が求められるのです。
そこで、このダイナミック・ケイパビリティが重要になります。危機に柔軟に対応し、自己変革により窮地を乗り切るダイナミック・ケイパビリティは、「VUCA」(※)とも称される、現代のビジネス環境に非常に適合した経営戦略なのです。
※VUCA(ブーカ)
VUCAとは、Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguityの頭文字を取った造語で、社会やビジネスにとって、未来の予測が難しくなる状況のことを意味します。
この、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)は、時代の特性を表しています。
VUCAとは、Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguityの頭文字を取った造語で、社会やビジネスにとって、未来の予測が難しくなる状況のことを意味します。
この、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)は、時代の特性を表しています。
SXの推進は、急激に変わりゆく世界のなかで、これからの新たな経済指標ととらえ、ESG・SDGsなどの社会的価値と企業の稼ぐ力と、競争優位性に基づく経済的価値の両立に向けた取り組みであり、企業経営のレジリエンスを高めて企業価値を向上させ、従業員、従業員の家族、地域、地球環境など、あらゆるステークホルダーが幸せになれるように努めることが求められます。いま多くの企業が向き合っているであろうDXにSXの視点を加え、それぞれの取り組みを同時に進めていく必要があるのではないでしょうか。
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