サプライチェーンCO2排出量削減への5つのアプローチ

   by Tsuyoshi Mizushima        
サプライチェーンCO2排出量削減への5つのアプローチ
大手企業を中心にカーボンニュートラル実現へ向けての取り組みがますます加速してきています。先日(10月26日)、日経電子版の記事においても、2030年までにカーボンニュートラルの実現を公約としてかかげている米Apple社が、
「世界各地のサプライヤーに脱炭素の取り組みを早めるよう要請したと発表した。主要取引先について年ごとの進捗状況を追跡・評価する。温暖化ガスの排出削減に積極的なサプライヤーとの協力関係を強める考えも示した。」
という記事が紹介されていました。
現実問題として、サプライチェーンとしての一部を担っている中小企業にとって、目をそらすことができない脱炭素への取り組みです。本日は、環境省の依頼を受けボストンコンサルティンググループが作成したSBT等の達成に向けたGHG排出削減計画策定ガイドブックより
Scope3の取り組みにフォーカスし
サプライチェーンCO2排出削減への5つのアプローチをご紹介します。
特にScope3の取り組みには、他社の排出量を削減する必要があります。そのため、サプライヤー等の外部のステークホルダーとの協力が発生する領域です。中小企業にとっても大きな影響が生まれる分野ですので参考にしていただけると嬉しく思います。
上記のようにScope3の排出カテゴリは15個あります。その15のカテゴリの削減を進めていくのですが、各企業において自社に適したScope3削減対策が検討できるように、削減対策を5つに分類して削減計画をすすめていきます。
削減への5つの主要アプローチ
① サプライヤーとの協働
② 調達改革
③ 製品・サービスのデザイン変更
④ オペレーションの改革
⑤ 顧客との協働
それぞれのアプローチの考え方について解説します。
サプライヤーと協力することにより、当該サプライヤーによる製造や輸送などの企業活動の排出を削減する取り組みです。例えば、以下のような取り組みがあります。
  • サプライヤー各社の排出削減目標を設定してもらうよう働きかける
  • 主要サプライヤーと排出削減のための共同プロジェクトを実施する(再エネ導入等)
  • サプライヤーの削減対策のための資金調達支援を行う
  • サプライヤーに対して、削減のノウハウ・情報を提供する
  • サプライヤーに、さらに上流のサプライヤーに対して排出削減の働きかけを行うことを求める
  • 同業他社も巻き込み、業界全体の排出削減のためのサプライヤーへの働きかけを実施する
なお、自社にとってのScope3排出は、サプライヤー(あるいはサプライチェーンの更に上流の生産者/サプライヤー)にとってのScope1、2排出となります。つまり、対策の内容自体はScope1、2と同一ですが、その対策を社外のプレイヤーに実施してもらうことがこのアプローチの肝になります。

② 調達改革

調達を変えることにより、排出削減を目指します。サプライチェーンの上流プレイヤーに対して影響力を及ぼすために、調達は有力なアプローチです。自社の調達方針を変更することにより、より排出削減に成功したサプライヤーから調達したり、温室効果ガス排出量の少ない物資の調達が可能になります。具体的には、下記のような対策が考えられます。
  • より温室効果ガス排出量の少ない商品を提供するサプライヤーから調達する
  • 調達する物資をより温室効果ガス排出量の少ない代替品に切り替える
  • サプライヤーとの調達方法・ネットワークを最適化する
  • 排出削減を調達の要件にし、サプライヤーの排出削減を促す
  • サプライヤーとして参加するための排出削減関連の要件を定める

③ 製品・サービスのデザイン変更

自社の提供する製品やサービス自体を変更することにより、排出削減を行います。このアプローチは、バリューチェーンの上流、下流双方の排出に対して有効です。例えば、より温室効果ガス排出量の少ない素材で同等の製品を製造するようにすれば上流の排出削減ができるし、より省エネ性能が高い製品を開発すれば、下流の顧客の使用段階での排出を減らすことができます。対策の例としては、以下のものがあります。
(上流/下流両方に有効)
  • ものづくりからサービスへのビジネス転換
  • ライフサイクル排出量が少ない商品設計ポリシーの策定
    (上流に有効)
  • リサイクル可能な商品の設計
  • 製品寿命の延長
    (下流に有効)
  • 省エネ性能が高い製品の開発

④オペレーションの改革

自社のオペレーションを改革することにより、Scope3の排出につながる活動を軽減します。
  • 温室効果ガスの排出量が少ない活動を促す業務プロトコールの策定
  • 通勤や出張の削減
  • フランチャイズ先との契約の見直し

⑤ 顧客との協働

顧客側の行動変容を促すことにより、バリューチェーンの下流の排出を削減します。顧客とは、BtoBとBtoCの顧客の双方があり得ます。
  • カーボンフットプリントの見える化により、顧客の削減行動を支援
  • 自社製品の温室効果ガス排出量のより少ない使用を支援
  • 温室効果ガス排出量の少ない代替品の提案・提供
  • 消費者に対して温室効果ガス排出量の少ないライフスタイルの提案
  • ナッジ的手法により、消費者の脱炭素行動を促進
①〜⑤すべての工程で共通している具体策は「排出量削減に取り組む企業との連携を強化する」ということです。まずは、自社のScope1、Scope2の削減計画から始めてみませんか?
私達は、中小企業の脱炭素への取り組みへのスタートとしてSBTへの参加を推奨しております。
どうぞ、お気軽にお問合せ下さい。
最後まで、お読みいただきありがとうございました。

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