サプライチェーンにおけるCO2排出量「スコープ3」上流は自社の企業活動に伴う排出量「スコープ1・2」の26倍

   by kabbara        
サプライチェーンにおけるCO2排出量「スコープ3」上流は自社の企業活動に伴う排出量「スコープ1・2」の26倍

近年、企業の環境への取り組みがますます重要視されています。ESG投資が注目を集め、消費者も環境意識の高い企業の製品を選ぶ傾向が強まっている中、企業はCO2排出量削減に積極的に取り組む必要に迫られています。
ボストン コンサルティング グループ(BCG)とCDPの最新のレポートによると、スコープ3上流の排出量は、スコープ1とスコープ2の合計のなんと約26倍にも及ぶことが明らかになりました。これは、多くの企業が自社の排出量を過小評価している可能性を示唆しており、見過ごせない事実です。本日は、レポートの要点を紹介させていただきます。

<サマリー>

  • 2023年時点の世界の全産業におけるスコープ3上流の排出量は、スコープ1・スコープ2の合計のおよそ26倍
  • スコープ3排出量は、重大な規模にも関わらず依然として見落とされており、サプライチェーン排出量の目標を設定している企業はわずか15%
  • サプライチェーン排出量の削減における重要な推進力は、気候関連課題に責任を持つ取締役会、サプライヤーエンゲージメント、社内カーボンプライシングの3点
  • 製造、小売、材料部門からの公開された上流排出量だけでも、炭素負債が3,350億米ドルを超える見込み
  • スコープ3排出量は、投資家と企業の双方に報告されていない重大なリスク
  • 行動と説明責任は、企業(経営陣と取締役会の両方)と投資家の双方に課せられる

スコープ3排出量削減の遅れ

CO2排出量には、スコープ1(自社の直接排出)、スコープ2(自社の電気・熱・蒸気の使用に伴う排出)、スコープ3(サプライチェーンにおける排出)の3種類があります。スコープ1とスコープ2は比較的把握しやすいのに対し、スコープ3はサプライヤーや顧客など、自社以外の活動に伴う排出量であるため、算定が難しいという課題があります。

  1. スコープ3排出量を算定している企業は、スコープ1・2を算定している企業の約半分にとどまっている
  2. CDPに開示を行っている企業のうち、スコープ3の削減目標を設定している企業はわずか15%

これらのデータは、多くの企業がスコープ3排出量削減に十分に取り組めていない現状を明確に示しています。

なぜスコープ3排出量削減が重要なのか?

スコープ3排出量削減の重要性は、以下の3点に集約されます。

  1. 地球温暖化防止:スコープ3排出量は、地球温暖化の大きな要因となっています。1.5℃目標の達成には、スコープ3排出量の大幅な削減が不可欠です。
  2. 企業の競争力強化:環境意識の高まりとともに、消費者は環境に配慮した製品やサービスを選ぶようになっています。スコープ3排出量削減に取り組むことは、企業のブランドイメージ向上に繋がり、競争力を強化する上で重要な要素となります。
  3. リスクマネジメント:スコープ3排出量を適切に管理しなければ、企業は規制、レピュテーション、オペレーションなどのリスクにさらされる可能性があります。

スコープ3排出量削減を成功させるための3つの鍵

レポートでは、スコープ3排出量削減を成功させるための重要な要素として、以下の3点を挙げています。

  1. 気候変動対応に責任を持つ取締役会:取締役会が気候変動対応を積極的に推進することで、スコープ3削減目標を含む1.5℃目標に整合した移行計画を策定できる可能性が高まります。
  2. サプライヤーエンゲージメントプログラム:サプライヤーと協力して気候変動対策に取り組むことで、スコープ3排出量削減を効果的に進めることができます。
  3. インターナルカーボンプライシングの導入:社内炭素価格を設定することで、排出量削減に向けた投資を促進し、スコープ3排出量削減を加速させることができます。

企業と投資家の連携が不可欠

スコープ3排出量削減は、企業だけの課題ではありません。投資家も、企業のスコープ3排出量情報開示を促し、そのリスクを適切に評価する必要があります。企業と投資家が協力してスコープ3排出量削減に取り組むことで、持続可能な社会の実現に貢献できるでしょう。レポートでは、2023年の製造、小売、素材産業からのスコープ3上流排出量だけでも、炭素負債が3,350億ドルを超える可能性があると指摘しています。この負債を企業・投資家の双方が把握し、適切な対策を講じる必要があります。

最後に、BCGのマネージング・ディレクター&パートナーであるダイアナ・ディミトロバ氏の言葉を紹介します。

「企業と投資家がスコープ3排出量削減に取り組むべき理由はリスクマネジメントに集約されます。取締役会はリスクの定量化と管理を推進しなければなりません。スコープ3の管理が不十分であれば、取締役会は規制、レピュテーション、およびオペレーションのリスクにさらされます。取締役会が気候変動関連リスクに対する責任を持つと同時に、投資家は透明性を求め、リスクを価格に反映させる必要があります。スコープ3排出量削減は企業と投資家、双方の責任です」

この言葉は、スコープ3排出量削減が、企業と投資家の双方にとって喫緊の課題であることを改めて示しています。

この記事が、企業の皆様がスコープ3排出量削減の重要性を認識し、具体的な行動を起こすきっかけになれば幸いです。

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