レストランのメニューにCO2排出量が表示されると注文に影響する?研究結果を公開

   by Takumi Hisamatsu        
レストランのメニューにCO2排出量が表示されると注文に影響する?研究結果を公開
以前、「牛丼が1杯3000円に!?バーチャルウォーターから見る水資源問題」という記事を公開させていただきました。
世界的に水不足問題が進行しているため、生産過程で水の使用量が多い牛肉は今後高騰する可能性がある、という内容でした。
実際に昨年後半から牛肉の販売価格は上昇しており、「ミートショック」と呼ばれる状況が続いています。要因は水資源問題だけではなく、新型コロナの影響による生産国の労働者不足や、脱炭素の動きから輸送燃料の高騰など様々です。
そして、記事の中で「バーチャルウォーター(仮想水)」という指標を紹介しました。バーチャルウォーターは”その食料を生産する過程で使用した水の量”を数値化したもので、例えば牛丼一杯を作るのに使用する水は1889リットル=500gペットボトル3780本分という形で表現されます。
使用する水の量が可視化されると、商品を選ぶときの基準にも影響が出るかもしれない、と記事の中で話していたのですが、実際にこのような研究を行った結果が発表されていたので、今回ご紹介させていただきます。

レストランのメニューにCO2排出量を表示

ドイツのユリウス・マクシミリアン大学ヴュルツブルクが、ソーシャルメディアでの募集に応募した265人を対象に、以下のような研究を行いました。
  • 価格のみのメニュー、または価格とともにCO2排出量がラベル付けされたメニューを無作為に提示、選択するメニューに差が生じるか否かを調査。
  • 用意したメニューは合計9種類のカテゴリーからなり、そのうち6種類はメインディッシュを1つ選び、かつ、サイドメニューを加えることも可能。料理のジャンルは、ハンバーガー、中華、ドネルケバブ(トルコ料理)、インド料理、メキシカン、オリエンタル。他の3種類は単品メニューで、ジャンルはドイツ料理、ギリシャ料理、イタリア料理。
  • CO2排出量については、低排出量のメニューは緑、中排出量は黄色、高排出量は赤でラベル付け。例えば、CO2排出量が2〜3kgと見積もられるサラダが添えられた牛肉料理は赤、反対にCO2排出量がわずか130g程度と見込まれるビーガンスパゲッティーディッシュは緑。
イメージ写真(写真はカナダのエドモントンのレストランのメニュー)
出典:CTVニュース
調査の結果、価格とともにCO2排出量がラベル付けされたメニューが提示された場合、人々の選択するメニューのCO2排出量が310g減少することが明らかになったようです。また、1皿当たりのCO2排出量が平均200gほど少ないメニューが選択される傾向もありました。
この結果について研究者のBenedikt Seger(ベネディクト・シーガー)氏は、「実際のレストランでは、視覚や香り、同席する人などの影響を受ける可能性はある。しかし、得られた結果は明快であり、非常に有望」と述べています。

気候変動対策を持続可能にするには”明確なメリット”が必須

今回の研究報告に対して、米テキサス大学サウスウェスタン・メディカル・センターのLona Sandon(ロナ・サンドン)氏は、「このような取り組みは、さまざまな変化をもたらす可能性がある。一部のレストランにとっては、確かに素晴らしいマーケティングツールになり得る。ただし、レストラン利用客の中には、CO2排出量を参考にする人もいるだろうが、カロリー表示を気にしない人がいるように、全く無視する人もいるだろう」とコメントしています。
確かに、自分の体型や健康リスクに関わると分かった上でカロリーを気にしない人はいます。そしてそんな自分の健康も気にしない人が地球環境を気にするだろうか?というところは疑問です。
また、実際にCO2排出量が少ないメニューを選択したとしても、2回目、3回目も同じように毎回CO2の少ないものを選ぶか?料金は変わらないのに、CO2排出量が少ないというだけで本当に食べたいものを我慢できるか?
排出量が少ないメニューの方が、明らかに料金が安い、栄養価が高い、味が美味しい、ポイント還元率が高い、SNSで映える写真が取れる・・・、といった明確なメリットがあれば別ですが、排出量の多いメニューを選んでも少ないメニューを選んでも「地球にイイことしたな〜」”という気分以外に違いがなければ、いくら良い取り組みだったとしても継続は難しいと思います。
例えば、以前の記事(アグリテックがアツい!)でご紹介したアグリテック(農業テック)のユニコーン企業である「Indigo Agriculture(インディゴ・アグリカルチャー)」。ここは農地への炭素貯留を推進する「Indigo Carbon」を展開することで、CO2の削減と持続可能な農業の両立を目指しています。
そのための取り組みが、成長を促す微生物をコーティングした種を農家に提供し、収穫量を劇的に向上させるというものです。農家は、今までと同じやり方で種を代えるだけで収穫量が増えます。さらに土壌に炭素貯留を増やす農法の支援も行い、削減したCO2に対してカーボンクレジットをつけて売買できるようにしています。
農家にとっては、収穫量が増えることに加え、カーボンクレジットによる副収入まで得られるというメリットが大きいため、多くの農家がパートナーとして実践・継続し、持続可能な農業の実現に向けて世界中に広がっていっています。
Indigo Carbonの概要
出典:Indigo Carbon 概要説明 Youtube動画

環境への意識が高まっていることは事実

自分へのメリットがないと活動は続けにくい・・・とはいえ、今回の研究から分かるとおり、地球環境への意識が高くなっているのは間違いありません。
研究者のBenedikt Seger(ベネディクト・シーガー)氏「多くの人が、楽しい食事の時間を過ごすときにも、地球温暖化の危機に配慮する意思のあることが示された。」と言っているとおり、地球のために自分ができることを考える人は多くなってきています。
「1.地球に得がある」に加え「2.自分にも得がある」
この2つが揃ってこそ、持続可能な気候変動対策です。
さらにこれを事業として成り立たせるには、「3.売上があがる」も必要になり、より工夫が必要です。当然簡単ではないため企業としての腕の見せどころでもあります。
私たちKabbaraはこの3つが揃った事業により、社会に良いインパクトを与え続けられる企業を目指し活動しています。まだまだ、これから研究開発が必要な部分も多いですが、DeFi、メタバース、NFT、web3、地球環境再生、土壌改良、温室効果ガス吸収、不耕起栽培、小規模農家改革、カーボンクレジット創出活動などに少しでも興味を持たれましたら、これら実現のためみなさまの活動へのご参加、お待ちしています。
また、ご質問やご意見随時承っております。
下記の【お問い合わせ】よりお願い致します。

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