肉の食べ過ぎが気候変動の原因?環境問題と肉の関係性

   by Takumi Hisamatsu        
肉の食べ過ぎが気候変動の原因?環境問題と肉の関係性
肉を食べることは当たり前であり、毎日食べている人は少なくないのではないでしょうか。
私たちの食生活に身近な肉。実は、そんな肉の食べ過ぎが気候変動の原因になっていることをご存じでしょうか?
気候変動の大きな原因の1つに温室効果ガスの排出があります。排出量が増えることで、地球温暖化などの気候変動が引き起こされていることは多くの人が知っていると思います。
その温室効果ガス排出の要因といえば、石炭や石油といった化石燃料によるエネルギー生産、また工場や乗り物から排出されるものが大きな割合を占めているイメージがあると思いますが、実は家畜からの排出もかなり多いことが分かっています。
家畜から排出される温室効果ガスは、世界の温室効果ガスの約14%を占めていて、これはすべての乗り物から排出される温室効果ガスの総量に匹敵しています。
その中でも肉の生産は特に温室効果ガスの排出量が多く、肉を消費する量が増えていくに伴って、温室効果ガスの排出量も増加しています。
世界の人々が陸と海から得られる動物性食品から摂取している1日1人当たりのカロリー数
出典:HUMAN IMPACTS DATABASE より
当たり前のように食べているので気づかないですが、実は今は肉の大量消費時代となっています。
実際肉は美味しいですし、好きな人が多いから仕方ないことですが、このまま肉の大量消費が続くと、環境問題が加速して、より気候変動に拍車がかかってしまう可能性があります。
今回はそんな肉と環境問題の関係性についてのお話です。

肉の大量消費が引き起こす10の環境問題

こちらの記事に、肉の大量消費によって引き起こされる環境問題が10個まとめられています。
簡単に要約すると、
    1.地球温暖化
  • 家畜から排出される温室効果ガスは、世界の温室効果ガスの約14%を占める
  • すべての乗り物から排出される温室効果ガスの総量に匹敵
  • 温室効果ガスの1/3は、「食」に関係している
    2.水質汚染
  • 人間の食糧のために飼育されている動物は、人口の何倍もの排泄物を生みだし、アメリカの工場畜産場の動物は、毎年約5億トンの糞尿を排泄
  • 動物の下水処理プラントがないため、ほとんどの場合、「ラグーン」と呼ばれるため池に保管されるか、畑に噴霧される
  • 工業型畜産では、動物を屋内過密飼育するため大量の抗生物質やホルモン剤などを投与しており、薬で汚染された動物の大量の糞尿が水路から川や海を汚染している
    3.森林伐採
  • 1980年から2000年にかけて約1億ヘクタールの熱帯雨林が失われ、その多くが牛の放牧や家畜の飼料などのためのプランテーションによるもの
    4.地球の陸地の1/4を土地利用
  • 地球上で、最も土地を使用しているのは工業型畜産であり、森林破壊の主要な原因である
  • 肉の生産は地球の陸地の26%、1/4を利用している
  • 2050年に98億人の食糧を確保するには、2010年比で56%多くの食糧を生産しなくてはならないため、さらなる森林破壊が懸念される
    5.穀物の大量使用
  • 大量の穀物を必要とする畜産は、広大な農地の使用が必要となるため森林破壊や生態系破壊などの原因となる
  • 大豆の生産量のうち、人が消費しているのは10%以下で、90%以上が家畜動物によって消費されている
    6.大気汚染
  • 米国では農業など食料生産で排出されるPM2.5による大気汚染で、年間約1万6000人が亡くなっている研究結果が米国科学アカデミー紀要に発表されている
  • そのうちの80%は、食肉、乳製品、卵など動物性食品の生産に関連
    7.土壌劣化
  • 家畜の飼育には大量の飼料が必要となるため、農薬や化学肥料を使用し単一栽培を行ってきた
  • 化学肥料に偏ったことで、ある特定の栄養分が過剰になる、または不足している土壌が増えている
  • 地球のバランスを保つ上で非常に重要となる窒素・リンの循環もすでに危険な臨界点を超えている
  • 化学肥料の使用は、土壌劣化だけではなく、酸素が乏しいために海洋生物が生息できないデッドゾーンを増やし、化学肥料からは気候変動を悪化させる亜酸化窒素などの温室効果ガスの排出、酸性雨、呼吸器系疾患、作物の収穫量減少の原因にもなる
    8.水の過剰使用
  • 食肉会社は、動物の飼料や生産から動物の屠殺や加工に至るまで、事業やサプライチェーン全体で水を使用
  • 1kgのステーキを作るために、約15,000リットルの水が必要
このあたりについては「牛丼が1杯3000円に!?バーチャルウォーターから見る水資源問題」で詳しく解説しています。
    9.人獣共通感染症
  • アメリカ疾病管理予防センター(CDC)は、新しく発生する感染症の3/4は動物からであるとしている
  • 動物性たんぱく質の需要増加はパンデミックを増加させる大きな危険と世界保健機関(WHO)国連食糧農業機関(FAO)国際獣疫事務局(OIE)は警告している
    10.生物多様性の喪失
  • 過去50年で、野生動物の個体数は68%も減少
  • その生物多様性の喪失の60%が「私たちの食」が原因で起こったと言われている
  • 地球の陸上の哺乳類の中で、野生動物の割合は、陸上の哺乳類のたった4%
  • 逆に人間が増やしすぎた家畜動物は60%も占めている
以上のように、私達の食事、特に肉を食べるという行為がこれだけの環境問題の原因になっています。

問題の解決に動き出しているテック企業

上記の問題はどれも気候変動に大きな影響を与えている重要な問題なので、これらを解決するために動き出しているテック企業がすでに存在しています。

海藻を使ったメタンガス(牛のゲップ)排出削減「Symbrosia(シンブロシア)」

温室効果ガスの1つであるメタンガス。メタンガスの温室効果の大きさは二酸化炭素の25倍です。
そしてそのメタンガスの主な排出源となっているのが牛のゲップです。
以下は、生物学および環境科学をカバーする定量科学者の研究チームが公開した地球上に生息する牛の数を表すグラフですが、このデータによると、今地球上には肉牛と乳牛を合わせて16億頭もの畜牛がいるようです。
地球上に生息するウシの数(単位:十億)
出典:HUMAN IMPACTS DATABASE より
グラフを見ると分かるとおり、右肩上がりで増え続けていて、それに比例してメタンガスの排出量も増え続けているということになります。
そして、そんな牛のゲップを減らすために動いてるのが「Symbrosia(シンブロシア)」という、ハワイを拠点とするスタートアップ企業です。
この企業は、牛のメタン排出を80%以上削減する海藻飼料添加物を開発しており、シリーズA資金調達ラウンドで700万ドル(約9億円)の調達に成功するなど注目されています。
牛のメタン排出を80%以上削減する海藻飼料添加物「シーグレイズ」
出典:Symbrosia HP より

培養肉と植物性の卵で環境負荷を大幅に低減「「Eat Just(イートジャスト)」

Eat Just(イート・ジャスト)」は健康的で栄養価の高い食品を提供することを目的としたスタートアップです。培養肉と植物性の卵を作っており、従来の肉と卵の生産方法より大幅に環境負荷を低減することに成功しています。
Eat Justの培養肉
出典:Eat Just HP より
培養肉は生きた動物から幹細胞を採取し、細胞を成長させてつくるため、家畜そのものの飼育が不要になります。そのため家畜を飼育するための広大な土地や飼育施設、それに伴う水、飼料などが必要なくなるというメリットがあります。
培養肉が商品化されると、これまでの食肉生産に不可欠であった広大な土地、大量の水、抗生物質が必要でなくなり、温室効果ガスの排出量を減らせるほか、動物に由来する感染症の発生を防ぐことが可能になります。
2020年12月には、ラボ培養としては初めてシンガポール当局の認可を得てレストランで提供されており、今後さらに世界中に拡大することが期待されています。
植物性の卵を作ることで、生産過程の水の使用量を98%、土地の利用を83%削減
出典:Eat Just HPより

食事は1日3回の未来への投票

買い物は未来への投票とよく言われますが、食事も同様です。
自分の買い物や食事での選択によって未来へどんな影響を及ぼすのか?
「肉を食べる」という行動が、実はいろんな環境問題の原因に繋がっている。そう考えると、未来のために肉を食べるのを減らすという選択をするのは重要かもしれないですね。
とはいえ、肉は美味しいので好きな人は多いですし、僕もそのひとりです。焼肉はテンションが上がりますし、友達とバーベキューもたまにやっています。
毎日肉を食べてる人からすると、「環境に負荷をかけているからって簡単にやめられないよ」、というのが本音だと思います。
いつも記事の中で言っていますが、環境だけじゃなく肉を減らすことで自分にもメリットがないと・・・ですね。

食に対する価値観が変わる?栄養学に関するドキュメンタリー映画

先日、あるドキュメンタリー映画を知りました。
映画「ゲームチェンジャー:スポーツ栄養学の真実」予告編日本語字幕付き
この映画は、ジェイムズ・ウィルクルスというUFCの格闘家が自身の怪我をきっかけに、食事が運動のパフォーマンスや健康に与える影響について追及していく内容です。
制作総指揮には、アーノルド・シュワルツェネッガーやジャッキー・チェン、ジェームズ・キャメロンといった著名人が名を連ねています。
そして、追及の結果、アスリートが高パフォーマンスを発揮し、健康な体を手に入れるためには、菜食主義の食事をすべきという結論にいたります。
詳しくは是非映画を見ていただきたいですが、肉などの動物性タンパク質が多いと、「早死する可能性が75%も高い」「動物性タンパク質に含まれるヘム鉄により心疾患リスクが27%高くなる」「がんや糖尿病での死亡率は4〜5倍高くなる」といった悪影響が紹介されています。
また、肉食から菜食に変えたアスリートはスタミナが向上したり、記録を塗り替えたりなど、様々な事例が紹介されています。アスリートだけではなく、個人の健康についての影響も色々と知ることができるので、是非見ていただければと思います。
ちなみに僕はこの映画を知ってから、タンパク質の摂取が肉から豆中心になりました。鶏肉から豆腐にチェンジしています。
以上、肉と環境問題の関係性についてのお話でした。
未来の人類に誇れるための行動。その1つとして肉を少しずつ減らしてみるという選択を始めてみませんか?
未来のための行動の1つにSBT認定を取得しませんか?
SBT認定に関してはこちらの記事にてメリットや解説がありますので、ご興味がある場合は是非確認して見て下さい。
※「SBT認定を取得するとどんなメリットがあるの?
一緒に活動したい!もっと情報を知りたい!という仲間も随時募集中です!
まだまだ、これから研究開発が必要な部分も多いですが、DeFi、メタバース、NFT、web3、地球環境再生、土壌改良、温室効果ガス吸収、不耕起栽培、小規模農家改革、カーボンクレジット創出活動などに少しでも興味を持たれましたら、これら実現のためみなさまの活動へのご参加、お待ちしています。
また、ご質問やご意見随時承っております。
下記の【お問い合わせ】よりお願い致します。

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